4:有機燐:フェンチオン MPP、バイジット | 化学物質過敏症 runのブログ

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視覚系に対する影響
 
幾つかの研究が有機燐被ばくが視覚系に害を与えることを示している。

ノースカロリナ大学のタンドンらの研究グループは、100 mg/kgのフェンチオンを皮下投与して、ラット網膜のコリン作動系に対する影響を調べた。

投与後4、14、56日後にコリンエステラーゼ活性とムスカリン受容体*機能を、網膜と前頭皮質で調べた。

4日でフェンチオンは網膜と大脳で89%のコリンエステラーゼ活性の阻害を起こしたが、56日でわずかな(15%9)活性の阻害を起こしている。

カルバコール*刺激イノシトール燐酸(細胞内の信号伝達に関与する)の放出の長期的低下がフェンチオン投与後網膜で認められた。

イノシトール燐酸放出抑制は4日で見られ、56日後も継続していた。

網膜と大脳皮質のムスカリン型コリンエステラーゼ受容体密度は4日で14-20%低下し、56日には対照レベルに戻った。

フェンチオンは網膜や皮質で明白な形態的変化を生じないが、グリア線維酸性蛋白の免疫反応は増加した。

この増加は14日で見られ、56日も続いていたが、大脳皮質では見られない。

この網膜のフェンチオンによるコリン作動性第二メッセンジャー系の長期的混乱は、コリンエステラーゼ活性やムスカリン性アセチルコリン受容体の下方制御と独立して起こる。[11]
 
このことはフェンチオンは眼の機能に影響を与えることを示している。
 
 
他の物質との相互作用

カーバメート系殺虫剤の毒性増強
 
フェンチオンがBPMC (カーバメート系殺虫剤、バッサ)の毒性を強めることが知られている。BPMCと致死量の40分の1のフェンチオンをマウスに同時に投与するとBPMCの毒性が2-3倍に増加する。

またフェンチオンを1時間前に投与すると、BPMCの毒性が7-9倍増加する。

これはBPMCの代謝がフェンチオンの代謝産物により抑制されたためと考えられる。[12]
 
医薬品との相互作用
 
H2ブロッカーであるシメチジン(胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬)は、多くの医薬品や嗜好品・食品と相互作用を持ち、医薬品の効果を強めあるいは持続させ又は副作用を及ぼすことが知られているので、シメチジンとフェンチオンを組み合わせた場合の影響をラットで調べた。

致死量の1/10から1/20のフェンチオンを14日間あるいは致死量の1/5を4日間投与し、シメチジンは7-13日に1,500 mg/kg投与した。

シメチジンはコリンエステラーゼに影響を与えなかったが、フェンチオンは臨床症状を生じさずに、コリンエステラーゼの活性を低下させた。

12.5 mg/kgとシメチジンを投与したラットで1匹のラットが死んだが、シメチジンと24.5 mg/kgあるいは49 mg/kgのフェンチオンを投与したラットは8-10日に全て死んだ。[13]
 
このように、H2ブロッカーを使用している場合、フェンチオンの影響が強く現れる。

他の有機燐剤でも注意すべきである。
 
人間と動物内での運命
 
○ フェンチオンは消化器や肺・皮膚から血中に急速に吸収され、全身に分布する。[1]
 
○ 尿と糞から排出される。[1]
 
○ 1回投与すると作用が長引く。このことはフェンチオンの多くが体脂肪に蓄えられ、後に放出されることが知られている。

皮膚投与3日後に殺した子牛の脂肪中でフェンチオンとその代謝物が検出されている。[1]
 
○ ウシに9 mg/kgのフェンチオンを皮膚に投与すると、投与量の45-55%が尿中に排出され、2.0-2.5%が糞に、1.5-2.0%が牛乳で回収された。[1]
 
 
生態影響
 
鳥類への影響
 
○ フェンチオンは鳥類に毒性が非常に強く、コリンウズラで4 mg/kgより低く、アヒルで26 mg/kgである。[1]
 
○ 鳥類でのフェンチオン中毒の急性症状は、流涙・泡状のよだれ・運動低下・振戦・気管の充血・歩行の場合の協同欠乏・呼吸が異常に急速・呼吸困難である。[1]
 
○ ニワトリはフェンチオンを25 mg/kg投与した場合、足が弱まる。家禽類の急性経口LD50は15-30 mg/kgである。[1]
 
○ 30日間0.5 mg/kg/日のフェンチオンを投与すると、生き残ったマガモの産んだ卵は出生率が低下した。[1]
 
水生生物への影響
 
○ フェンチオンは魚に中程度に毒性があり、ニジマスの96時間LC50値は9.3 mg/L、金魚で3.40 mg/Lである。[1]
 
○ 淡水無脊椎動物に非常に有毒である。[1]
 
その他の生物への影響
 
○ ハチに非常に有毒である。[1]
 
 
環境中運命
 
土壌と地下水中での分解
○ フェンチオンは土壌に中程度に残留し、野外の平均半減期はほとんどの条件で34日である。[1]
 
○ 土壌中で、フェンチオンは約4-6週間残留する。[1]
 
○土壌粒子にかなり強く吸着し、土壌を通って動かないと思われる。[1]
 
 
水中での分解
 
○ フェンチオン使用の2週間後、河川水中に50%が残っていたが、4週間後には10%であった。[1]
 
○ アルカリ条件下ではより速く分解する。[1]
 
 
植物内での分解
 
○ 薬害が起こることが報告されている。[1]
 
○ イネに散布したフェンチオンの10%が6時間後に葉に残っていた。

半分は米ぬかに、6.5%が精米にあった。[1]
 最終更新 2005年 1月 31日
更新 2001年8月11日
掲示 2001年7月14日 渡部和男