・再開された専門家会議の問題点
2016年10月から専門家会議が再開されたが、委員は1人減り、わずか3人となった。
前回2007年5月から2008年7月までの専門家会議は都庁で行われたが、今回の専門家会議は築地市場で行われ、月1回のペースだった。
2017年3月までの5回の専門家会議の問題点を検討する。
(1) 前回の専門家会議が提案した対策の「盛り土と地下水管理」ができていないことへの評価は全くなされず、地下空洞ありきの議論に終始した。
また、地下空洞の地下水や地下空気がベンゼン、シアン、ヒ素、水銀、六価クロムなどで汚染されているのに、その原因が東京ガス豊洲工場による土壌・地下水汚染にあることを求めようとしなかった。
(2) 地下水の強アルカリ性と六価クロムやアンモニア検出の原因を工事用コンクリートに起因するとした。
生コンクリート打設時は強アルカリ性で六価クロムも検出されるが、コンクリートが固まると弱アルカリ性となり、六価クロムも検出されなくなる。
やはり、豊洲工場敷地内への石炭灰投棄や土壌汚染が原因であり、アンモニアも海底ヘドロを埋め立てたためと考える。
写真│水産卸売場棟の地下空間に溜まった地下水
出所:2016年9月7日、日本共産党都議団撮影
(3) 地下空洞から国の指針値を超える水銀が検出された原因についても、自然界の地下水にも水銀が微量に含まれるとして、地下水起因をすぐに認めようとしなかったが、地下水から自然界の10倍以上の水銀が検出されて初めて認めた。
(4) 地下水を揚水処理する地下水管理システムは、地下水位を海抜2m 以下に管理するとしていたが、盛り土工事完了後も揚水処理されず、専門家会議が再開された2016年10月以降にやっと揚水処理を開始した。
当初、地下水位は海抜3~4mもあり、12月でも3~3.5m レベルとあまり下がらなかった。12月以降、海抜2.5m 以上の地下空洞の地下水を強制排水したので、2017年3月には2.5~3mとなったが、当初の目標である2m 以下にはなっていない。
(5) 2017年1月の専門家会議で発表された第9回地下水モニタリングは、衝撃的なものだった。ベンゼンの最高値が環境基準の79倍、基準超過のシアンやヒ素も多数検出され、基準超過の観測井戸は72か所と、観測井戸201か所の約3分の1に及んだ。
第1~7回はすべて基準以下、第8回でベンゼンとヒ素の基準超過井戸が3か所と比べて異常であった。
驚いた専門家会議は第9回調査結果を暫定値とし、2~3月に高濃度地点29か所の再調査を4者で実施したが、ベンゼン最高100倍、26か所で基準超過した。
3月の専門家会議で報告され、第9回調査結果を確定値とした。
その後、第1~8回調査は、施設建設と土壌汚染対策工事を担当した各ゼネコンが随意契約で実施し、再採水などを行なっていたことが判明し、データ改ざんの疑いがある。
第9回調査は一般競争入札で選ばれた分析会社が行い、公正さが証明された。
(6) 専門家会議は、「地下の汚染は残るが、地上は安全」として、安全宣言を出そうとしているが、地下の汚染物質であるベンゼン、シアン、水銀などは揮発して地上や建物内を空気汚染する可能性があり、地下と地上は分離できないので、地上の安全も保証されない。
また、専門家会議設置要綱は、「食の安全・安心を確保する観点から土壌汚染対策を検討する」となっているが、「安全は言及できるが、安心は政治的な判断だ」と逃げている。
なお、小池知事は「地上と地下は分離できない。たとえ地上の安全が証明されても、安心は保証されない」と発言している。