・活動報告
「今後の化学物質対策の在り方について」パブコメに意見を提出しました!
事務局長 中下裕子
改正「化審法」が施行されてから見直し期間の5年が経過しました。
環境省と経産省は、平成27年から、「化審法施行状況検討会」を設置して検討を進め、平成28年3月に報告書を取りまとめました。
その中で指摘された課題のうち、法改正を伴う政策的事項でかつ緊急性の高い項目である、①少量新規化学物質制度及び低生産量新規化学物質制度における全国単位の製造・輸入数量の上限見直しと、②毒性が非常に強い新規化学物質の管理の2つの点について、経産省、環境省の審議会でさらに検討され、昨年12月27日「今後の化学物質対策の在り方について(案)」がまとめられ、パブリックコメントが実施されました。
これに対して、国民会議では、去る2月3日に以下のような意見を提出しました*。
少量新規化学物質制度及び低生産量新規化学物質制度における全国単位の製造・輸入数量の上限見直しについて 「化審法」では、新しい化学物質を製造・輸入しようとするときは、事業者は、分解性、蓄積性、人の健康、生態影響について試験を実施し、そのデータを届け出て事前審査を受けなければならないとされています(通常新規審査)。
しかし、製造・輸入予定数量が全国で年1トン以下の化学物質については、これらの試験データの届出が免除され(少量新規制度)、全国で年10トン以下の化学物質については、分解性と蓄積性のデータの届出のみに軽減される(低生産量新規制度)という特例制度が設けられています。
このような全国上限制度は日本独自の制度で、複数の事業者が同一の化学物質について少量又は低生産量新規の申請があった場合には、国が数量調整を行うことになっています。
一方、欧米では1社単位の上限が定められるにとどまっています。
平成25年6月14日に閣議決定された規制改革実施計画では、上記のような少量新規の全国上限枠の見直しが指摘され、これを受けて今回の「案」では、全国上限枠を維持しつつも、それを「製造・輸入の予定数量」ではなく、一定の用途別係数を乗じて算出する「環境排出量」に変更するという合理化(実際は規制緩和)を提案しています。
これに対して、国民会議では、このような規制緩和に反対する意見を述べました。
そもそも、化審法の趣旨は、本来、新規物質について全て試験データに基づく事前審査を行うことにあり、少量新規等は、製造・輸入量が全国年1トン(低生産量新規については10トン)以下という少量で、人や生態系に悪影響を与える可能性は少ないと考えられるため、「特例」として免除・軽減を認めるものです。
ところが、最近は、この「特例」件数が通常新規をはるかに上回っています。
例えば、平成27年度の新規化学物質の届出件数は、通常新規約400件に対し、少量新規は約36,000件に及んでいます。
つまり、1物質につき全国年1トンの枠内でも、全体的には、年間30,000トンを超える未試験の物質が市場に出回ることになり、これは環境リスクとして看過できない状況です。
原則に対し例外が90倍という状況は異常です。
「特例」の緩和ではなく、「特例」制度そのものを抜本的に見直すべきではないでしょうか。
仮に、「環境排出量」に変更する場合には、用途ごとの係数を正しく選定しないと、実際の排出量が過大になりかねないので、用途情報を国が正確に把握するため制度の整備が不可欠です。
毒性が非常に強い新規化学物質の管理について
改正化審法では、ハザード管理からリスク管理へと政策転換が進められました。
しかし、化学物質管理はリスクだけで十分という訳ではありません。
毒性の強い物質については、製造・輸入量が少なくても、特別の厳重管理が必要であることは当然です。
今回の案では、そのような物質を「特定新規化学物質」として事業者に適切な取扱いを求めることが提案されています。
国民会議では、このような方向性には賛成意見を述べるとともに、このような毒性の強い物質については、事業者の情報伝達を末端消費者にまで義務づける必要があると指摘しました。