ULの住宅向けグリーンガード認証は各国の規制よりも広範囲な300種類以上の揮発性有機化合物を対象とした
ULの住宅向けグリーンガード認証は各国の規制よりも広範囲な300種類以上の揮発性有機化合物を対象とした 出典:UL
これらの規制対象の揮発性有機化合物を含む建材や接着剤は減少傾向にあるものの、代替品で規制対象外の揮発性有機化合物が発生してしまうため、シックハウス症候群の根本的な解決には至っていない。
また、日本には揮発性有機化合物の総量を対象とした規制はないのが現状だ。
海外は揮発性有機化合物の総量規制があるが、揮発性有機化合物の濃度に関する規制で対象とする物質の種類が日本同様に少ない。
フランスで8種類、韓国で11種類にとどまる。
例外なのが米国の第三者安全科学機関、ULが定めるグリーンガード認証だ。
グリーンガード認証は、室内の空気の質を認証するプログラムとして2001年にスタートした。
揮発性有機化合物300種類以上に対して基準値を設定しており、総量も500μg/m3に制限している。
揮発性有機化合物は、一定以上の面積の建材や接着剤を密閉空間に設置して測定する。
また、室内に1日測定器を設置する形で、部屋全体の揮発性有機化合物の濃度についても調査を行う。
グリーンガード認証のような厳しい基準が米国で浸透した背景には、空気を含めた室内環境に対する要求の高さがある。
また、政府が規制を主導せず民間企業に自立した行動を促しているため、民間企業は消費者に選ばれるために積極的により厳しい認証の取得に取り組むという。
住宅では初のグリーンガード認証
グリーンガード認証取得のために実施した測定試験
これまで、海外のオフィスビルや学校などでグリーンガード認証を取得した例はあったが、ULが住宅向けにグリーンガード認証を発行するのはパナホームが2016年4月5日から発売する戸建て住宅のカサートが初めて。
今後施工する全ての住宅でグリーン認証に対応した測定を行うのは困難なため、グリーン認証に準拠した標準仕様となる建材や設計を定めた。
「この標準仕様から大きく逸脱しない限りは、グリーンガード認証に対応したと見なして提供する」(パナホーム 戸建て事業企画部長 詫間伸氏)。
今後はカサート以外の全ての戸建て住宅製品ラインアップにもグリーンガード認証に対応した標準仕様を応用していく。
カサートは、グリーンガード認証が定める揮発性有機化合物の総量が500μg/m3なのに対し「この半分程度まで総量を抑制することができた」(同氏)という。
パナホームでは、グリーンガード認証に対応するため数十種類の建材や接着剤を選定した。期間にして2年半を要したという。
「濃度の高い有害物質を特定し、原因となる建材や接着剤を変更する形で室内全体の空気の質を追求した。何かの有害物質が減っても代替として使われている揮発性有機化合物が増えてしまうことがあり、時間がかかった」(パナホームの説明員)。
グリーンガード認証を住宅としては初めて取得した
住宅向けの建築部材メーカーも揮発性有機化合物の放出が少ない製品開発に取り組んでいることもあり、グリーンガード認証に対応するコストは価格に影響しない範囲に抑えられた。
カサートの税込み価格は、延べ床面積127.86m2で2階建て、太陽光発電と蓄電システムを含めた参考プランで2934万円。
初年度の販売目標は4800棟を計画している。