14:平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・2)B(AG)群(OVA+) 2-1) 体重、副腎重量、下垂体前葉体積 80ppb ホルムアルデヒド曝露群の体重は対照群のものより減少し、副腎の相対重量は増加 していた。
400ppb と 2000ppb の体重と副腎重量は対照群のものと差はなかった。
下垂体前葉 の体積は、曝露群と対照群で差がなかった(Table 1 の AG (OVA+)群)。 
2-2)視床下部室旁核の CRH-ir ニューロン数 B (AG) 群の対照 (0) 群マウスの CRH-ir ニューロン数は、A (NAG) 群マウス対照 (0) 群 のものより有意に増加していた。
80ppb 曝露マウスの CRH-ir ニューロン数は、A (NAG) 群の 2000ppb 曝露マウスの値まで増加した。
400ppb と 2000ppb では減少した(Fig. 1)。 
2-3)ACTH-ir 細胞の出現率、数 B (AG) 群の対照 (0) 群マウスの ACTH-ir ニューロンの出現率(Fig. 2)と数(Fig. 3)は、A (NAG) 群マウス対照 (0) 群のものより有意に増加していた。
80ppb 曝露マウスの ACTH-ir ニ ューロン数は、さらに増加し、A (NAG) 群の 2000ppb 曝露マウスの値と差はない。
400ppb と 2000ppb では減少した。
 2-4)半定量的 RT-PCR による下垂体内 ACTH-mRNA B (AG) 群の対照 (0) 群マウスの ACTH-mRNA の発現量は、A (NAG) 群マウス対照 (0) 群の ものより有意に増加していた。80ppb 曝露マウスの ACTH-mRNA の発現量は、さらに増加し、A (NAG) 群の 2000ppb 曝露マウスの値と差はない。400ppb と 2000ppb では減少した(Fig. 4)。
 
 
3)C 群(OVA- 、トルエン+) 3-1) 体重、副腎重量、下垂体前葉体積 結果を Table 2 に示した。
体重と下垂体前葉体積は、曝露群と対照群で差がなかった。
80ppb と 2000ppb 曝露群の副腎重量は、対照群のものより小さく、相対重量では、80ppb 曝露群のものが対照群のものより小さかった。 
3-2)視床下部室旁核の CRH-ir ニューロン数 CRH-ir ニューロン数は、ホルムアルデヒド曝露量依存的に増加していた(Fig. 5)。 
3-3)ACTH-ir 細胞の出現率、数 ACTH-ir 細胞の出現率(Fig. 6)は、ホルムアルデヒド曝露量依存的に増加していたが、数 (Fig.7)では 400ppm 群のみが対照群のものに比べて有意的に増加した。 
3-4) 下垂体前葉の sinusoid 対照群に比べて 400 と 2000ppm ホルムアルデヒド曝露群で、sinusoid の有意的な拡張が見 られた。
特に、2000ppm 群で著明であった(Fig. 8)。 
3-5)半定量的 RT-PCR による下垂体内 ACTH-mRNA ACTH-mRNA の発現量ホルムアルデヒド曝露量依存的に増加していた(Fig. 9)。 
 
4)D 群 4-1) 体重、副腎重量、下垂体前葉体積 結果を Table 3 に示した。
NAG(OVA-)マウスの体重は、対照群よりトルエン曝露群で増加 した。
副腎重量と下垂体前葉の容積は、各群で有意の差はなかった。 
4-2)視床下部室旁核の CRH-ir ニューロン数 NAG (OVA-) 対照群の CRH-ir ニューロン数に比べて NAG (OVA-) トルエン曝露群、AG (OVA +) 対照群と AG (OVA+)トルエン曝露群で多い。
(OVA-)トルエン曝露群に比べて(OVA+)トル エン曝露群で多い (Fig. 10-A)。 
4-3)ACTH-ir 細胞の出現率、数 ACTH-ir 細胞の出現率(Fig. 10-B)と数(Fig. 10-C)は、NAG (OVA-)対照群に比べて(OVA-) トルエン曝露群、AG (OVA+) 対照群と AG (OVA+)トルエン曝露群で多い。
ACTH-ir 細胞の出 現率は、(OVA-)トルエン曝露群に比べて(OVA+)トルエン曝露群で多い (Fig. 10-B)。
 4-4)半定量的 RT-PCR による下垂体内 ACTH-mRNA ACTH-mRNA の発現量は、(OVA-)対照群に比べて(OVA-)トルエン曝露群、AG (OVA+) 対照 群と(OVA+)トルエン曝露群で多い。 (OVA-)トルエン曝露群に比べて(OVA+)トルエン曝露群 で多い (Fig. 11)。 
 
(4)考察 
  A  (OVA-)群では、低濃度の長期ホルムアルデヒド曝露により視床下部室旁核の CRH-ir ニューロン数、ACTH-ir 細胞の出現率と数、下垂体内 ACTH-mRNA 発現量は曝露量依存的に増 加し、ホルムアルデヒドがストレッサーとして作用していることを示した。
ACTH-ir 細胞の 出現率は、短期間の cold ストレスにより増加する 
一方、B  (OVA+)群の視床下部 CRH 神経細胞と下垂体の ACTH 細胞は A 群のものと異なる反応を示した。すなわち、B 群の CRH-ir ニューロン数、ACTH-ir 細胞の出現率と数、下垂体内 ACTH-mRNA の発現量はホルムアルデヒ ド曝露がなくても増加し、80ppbFA 曝露で最高の増加を示した。
このように、アレルギーは、 ストレスとして HPA 軸に働き、ホルムアルデヒドはアレルギーの感受性を高めたと考えられた。
また、B 群での高濃度(2000ppb)ホルムアルデヒド曝露では 80ppb 曝露マウスに比べて、 CRH-ir ニューロン数、ACTH-ir 細胞の出現率と数、下垂体内 ACTH-mRNA の発現量は減少して いる。
この現象から、B 群ではアレルギーと高濃度ホルムアルデヒド曝露により HPA 軸が障 害を受け、更なるストレス(腹痛、頭痛など)を処理できない状態になっているという仮説 が考えられる。
すなわち、MCS の一つであるシックハウス症候群とは、アレルギーとホルム アルデヒドの2つのストレスが相乗的に作用して、HPA 軸が損傷を受け、更なるストレス(腹 痛、頭痛など)に対応できなくなった状態という仮説を立てることができる。
 トルエン前処理した C 群の HPA 軸の結果は、A 群の結果と似ている。即ち、卵白アルブミ ン前処置により惹起したアレルギー性炎症は、ホルムアルデヒド曝露に対する HPA 軸の反応 に影響を与えるが、アレルギー炎症を惹起しないトルエン前処置では影響を与えていないと 考えられる。 D 群の結果から、トルエンの低濃度曝露は、A~C 群の実験同様ストレスとして HPA 軸に作 用していると考えられる。 A~D 群の結果より、本実験系は MCS あるいはマウスにおけるシックハウス症候群モデルと して活用できる可能性があることが示唆された。 本報告中の A と B の結果は Brain Res. 15)、C の結果は、J. Vet. Med. Sci. 16)に、また、 D の結果は J. Jpn. Soc. Atmos. Environ. 17)に掲載された。