・ 被験者概要
症例 年齢・性 主要発症推定原因・場所
1 24歳男性 大学の化学研究室。アレルギー歴あり。
2 27歳女性 化粧品会社勤務から発症
3 27歳男性 新築ビルにおける勤務。アレルギー歴あり。
4 25歳男性 大学の化学研究室。
5 35歳女性 主要発症要因不明。アレルギー歴あり。(平成 14年度症例 5)
6 26歳女性 新築住居。
7 32歳男性 組織ホルマリン固定作業。アレルギー歴あり。
8 30歳男性 大学の化学研究室
9 37 歳男性 建材作業で発症。中毒後遺症状と本症の境界型。アレル ギー歴あり。
参考のため、昨年度のホルムアルデヒド・トルエン混合曝露負荷検査結果に ついて概要を示す。
なお解析方法は以下の通りである。
1) 症例ごとの検討
各患者のスコアは、以下の方法で解析した。
(1) 曝露条件ごとに、曝露直前と曝露直後の自覚症状のスコアを、症状 ごとに対応させた上で比較する (Wilcoxon singed-rank test)。 (以下、曝露前後比較)
(2) 全条件での曝露後の症状スコアを、症状ごとに対応させて上で、3 群間比較する (Freidman test)。 (以下、3群比較)
(3) 昨年度報告書と同様、曝露前後の自覚症状を比較した解析の結果を もとに9名の被験者を以下の4型に分類できる。
Type 1: プラセボでは自覚症状の増強がなく、混合曝露(1回目・2 回目)のみで自覚症状増強が認められた者
Type 2: プラセボ、混合曝露(1 回目・2 回目)ともに、自覚症状 増強が認められた者
Type 3: プラセボ、混合曝露(1 回目・2 回目)ともに、自覚症状 増強が認められなかった者 Type 4: プラセボのみで自覚症状の増強が認められた者2) 平成15年度症例の曝露試験結果
・ 症例1について プラセボ負荷前後、曝露 1 負荷前後では、有意な症状の変化は認めら れなかった。
曝露 2 負荷前後では、負荷後に有意な症状の増強が認めら れた(p=0.028)(不完全なType 1)。負荷後の3群比較では、プラセボ負荷 後、曝露1負荷後、曝露2負荷後の症状の強さを比較すると、Freidman 検定では、3群間に差が認められていたが (p=0.041)、ボンフェローニの 不等式で訂正した場合、3群間の症状に差は認められなくなった。
・ 症例2について
プラセボ負荷前後、曝露 2 負荷前後では、症状の強さに有意な差は認 められなかった。
曝露 1 負荷前後の比較では、曝露後に有意な症状の増 強が認められた (p=0.011)(不完全なType 1)。
負荷後の3群比較では、プ ラセボ負荷後、曝露1負荷後、曝露2負荷後の症状の強さを比較すると、 3群間に症状の強さの違いは認められなかった。
・ 症例3について
プラセボ負荷試験、曝露 1 負荷前後、曝露 2 負荷前後の全てで、症状 の強さに有意な差は認められなかった(Type は3)。
負荷後の3群比較では、プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露 2 負荷後の症状の強さを比較 すると、3群間に症状の強さの違いは認められなかった。
・ 症例4について
プラセボ負荷試験、曝露 1 負荷前後、曝露 2 負荷前後の全てで、症状 の強さに有意な差は認められなかった(Type は3)。
負荷後の3群比較で は、プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露 2 負荷後の症状の強さを比較 すると、3群間に症状の強さの違いは認められなかった。
・ 症例5について
プラセボ負荷前後では、有意な症状の変化は認められなかった。
曝露 1 負荷前後、曝露 2 負荷前後では、有意な症状の増強が認められた(曝露 1・p=0.017、曝露2・ p=0.030)。
この被験者では、プラセボに反応せ ず、曝露で症状が強くなるパターンを呈している (Type 1)。負荷後の 3 群比較では、プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露 2 負荷後の症状の強 さを比較すると、3群間の症状に強さの違いは認められなかった。
・ 症例6について
プラセボ負荷試験、曝露1負荷前後、曝露2負荷前後の全てで、症状 の強さに有意な差は認められなかった(Type は3)。
負荷後の3群比較で は、プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露 2 負荷後の症状の強さを比較 すると、3群間に症状の強さの違いは認められなかった。
・ 症例7について
プラセボ負荷前後では、負荷後、有意な症状の増強が認められた (p=0.045)。
この被験者では、プラセボのみで症状が強くなるパターンを 呈している (Type 4)。
負荷後の 3 群比較では、プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露2負荷後の症状の強さを比較すると、3群間に症状の強さの 違いは認められなかった。
・ 症例8について
プラセボ負荷前後では、負荷後、有意な症状の増強が認められた (p=0.046)。
この被験者では、症例 7 と同様、プラセボのみで症状が強く なるパターンを呈している (Type 4)。
負荷後の3群比較では、プラセボ 負荷後、曝露1負荷後、曝露2負荷後の症状の強さを比較すると、3群間 に症状の強さの違いは認められなかった。
・症例9について
プラセボ負荷前後、曝露2負荷前後では、症状の強さに有意な差は 認められなかった。
曝露 1 負荷前後の比較では、曝露後に有意な症状の 変動が認められた(p=0.001)(不完全な Type 1)。
プラセボ負荷後、曝露 1 負荷後、曝露 2 負荷後の症状の強さを比較すると、Freidman 検定では、 3 群間に有意の差が認められていた(p=0.0000004)。
ボンフェローニの不等式で訂正しても、有意差が認められ、プラセボ負荷後は、他の2つの曝露負荷後に比べ、症状が強いことが認められた。
ただし、この結果は負荷前の状態を反映しているものと考えられ、考慮出来ない結果と判断 された。