・平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究
研究報告書
平成17年3月
財団法人 日本公衆衛生協会
第1章 二重盲検法による微量化学物質曝露試験
Ⅰ.目的
本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)については、平成9年より研究班が設置され、微量化学物質に対して過敏性を有すると判断された被験者に対して平成12年度8名、平成13年度15名、平成14年度15名の計38名について、二重盲検方法による微量ホルムアルデヒド曝露負荷試験を施行、年度毎に結果を評価し検討を重ねてきた。
しかしながら、曝露負荷試験後の自覚症状の増強が医学統計学的、即ち、科学的評価に耐えうる一定の傾向を示さず神経学的検査を中心とした他覚的検査においても曝露前後の生理学的変動を十分に捉えることが出来なかった。
そこで平成15年度は、これまでの研究結果・検討会において今後の課題としてあげられた種々の指摘・示唆を踏まえ、複数化学物質混合同時負荷・負荷時間の延長を中心として、負荷前後の自覚症状、バイタルサイン、各種神経学的検査等を記録・検 討した。
その結果、平成 14 年度の結論と同様、本態性多種化学物質過敏状態と診断された集団の中には、様々な状態の患者が混在し均一な集団ではなく、昨年度の結果からも、ごく微量(混合曝露でガイドライン値の半分以下)のホルムアルデヒド+トルエンの曝露と被験者の症状誘発との間に、統計学的に有意差をもった関連性は、確認出来なかった。
即ち、微量化学物質曝露で自覚症状を呈する集団が存在することに間違いはないが、被験者の内容は非常に変化に富んでおり、曝露負荷試験のみで、本 症の病態解析を行なうことが困難であるとの結論と評価を得た。
そこで本年度は、平成 15 年度の研究協力を得られた被験者を中心に、被験者に対する薬物代謝酵素の遺伝子多型性・神経学的検査所見を加味した再評価を施行し、二重盲検法における本症の病態解析に関わる有用性について最終的結論を引き出した いと計画した。