・平成15年度 本態性多種化学物質過敏状態の調査研究研究報告書
平成16年3月
財団法人 日本公衆衛生協会
A.目 的
近年、環境中に存在する微量な化学物質による環境汚染や人体汚染が大きな社会問題と
なっている。
とりわけ、シックハウス症候群との関連性等が指摘されている本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)については、不確実な点が多いものの、科学的知見の収集を急ぐ必要がある。
そこで、本調査では、昨年度に引き続き二重盲検法を実施し、本病態が化学物質によっ て 誘発されるか否かを検証するとともに、モデル動物を利用した非アレルギー性の過敏 状態の 発症機序を検討し、メカニズムの解明を図ることを目的とした。
(順不同 敬称略)B.検討会委員
座長 大井 玄 独立行政法人国立環境研究所顧問、東京大学名誉教授
相澤 好治 北里大学医学部衛生学公衆衛生学教授
荒記 俊一 独立行政法人産業医学総合研究所理事長、東京大学名誉教授
安藤 正典 国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部長
浦野 紘平 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
久保木富房 東京大学医学部附属病院心療内科教授
竹中 洋 大阪医科大学医学部耳鼻咽喉科教授
土屋 悦輝 工学院大学工学部応用化学科講師
西岡 清 東京医科歯科大学皮膚科学教授
橋本 信也 医療法人元気会横浜病院長
藤巻 秀和 独立行政法人国立環境研究所環境健康研究領域室長
吉村 健清 産業医科大学産業生態科学研究所臨床疫学教授
鈴木 達夫 (社)北里研究所北里研究所病院医療環境科学センター長
坂部 貢 (社)北里研究所北里研究所病院臨床環境医学センター部長
遠乗 秀樹 北里大学医学部衛生学公衆衛生学助手
嵐谷 奎一 産業医科大学産業保健学部教授
第1章 二重盲検法による微量化学物質曝露試験
Ⅰ.目的
本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)については、平成9年よ り研究班が設置され、微量化学物質に対して過敏性を有すると判断された被験者に対 して平成12年度8名、平成13年度15名、平成14年度15名の計38名につい て、二重盲検方法による微量ホルムアルデヒド曝露負荷試験を施行、年度毎に結果を 評価し検討を重ねてきた。
しかしながら、曝露負荷試験後の自覚症状の増強が医学統 計学的、即ち、科学的評価に耐えうる一定の傾向を示さなかったこと、また神経学的 検査を中心とした他覚的検査においても曝露前後の生理学的変動を十分に捉えるこ とが出来なかった。
そこで本年度は、これまでの研究結果・検討会において今後の課題としてあげられ た種々の指摘・示唆を踏まえ、複数化学物質混合同時負荷・負荷時間の延長を中心と して、負荷前後の自覚症状、バイタルサイン、各種神経学的検査等を記録・検討した。