シリーズ「香害」 第3回 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・NHKの「クローズアップ現代+」に「香害」被害者たちが憤っています
社会
2017/11/1000:00 0 0 
        シリーズ「香害」 第3回
                      
岡田幹治 (フリーライター)

10月25日に放送されたNHK「クローズアップ現代+(プラス)」の「気にしすぎ!? 相次ぐにおいトラブル」に対し、「香害」被害者たち(香りつき商品の成分で様々な健康被害を受けた人たち)から「ひどい内容だ。番組のせいで私たちはさらに肩身が狭くなり、健康被害を受けても我慢を強いられてしまう」など、憤りの声が上がっています。
なぜなのでしょうか。番組にはどんな問題があるのでしょうか。

◆体臭に過敏になった日本社会
25分間の番組は次のような内容でした。
まず、日本人が最近、体臭に過敏になっており、それを覆い隠すために消臭スプレーの噴霧などが日常的に行われている、異常とも思える実態を、いくつかのエピソードで伝えます。
そして、坂井信之・東北大学脳科学センター教授が、においを嗅いで心地よくなるか不快になるかは、におい発生源の見た目や人間関係などによって左右されることを明らかにします。

体臭を気にして専門クリニックを訪れる人が増えているが、その7割は体臭がとくに強いわけではないとも指摘されます。
続いて番組は、ニオイ対策用の香りつき商品(消臭スプレーや柔軟剤)をめぐる様々なトラブルに焦点を移し、その一つとして、商品に含まれている化学物質がもたらす体調不良を取り上げます。
香りつき商品が原因で「化学物質過敏症(MCS)」になった女性が登場し、ここ数年で症状が悪化し、ニオイを嗅ぐとめまいがしてずっと寝ているようになって、今年6月に10年務めた仕事を辞めざるを得なかったと訴えます。
番組のまとめ部分では、坂井教授とともに、坂部貢・東海大学医学部教授(医師)が出演し、「MCS患者の約8割はニオイにも過敏に反応するが、空気中の化学物質は無数にあるので、なぜ症状が出るのかというメカニズムは分かっていないところが多い。
環境省と厚生労働省が研究班などをつくって研究しているが、問題が複雑で、アウトカム(成果)まで達していない」と述べます。
どう対応したらよいか、というキャスターの問いに対し、坂部教授は「ニオイに対して感受性が高くて症状が出る方もいることにわれわれは配慮すること、そしてメーカーは消費者に注意を喚起することが必要」と述べ、坂井教授は「体臭に寛容になるためには、人間関係も寛容になる必要がある」と述べます。

◆まるで消臭スプレーのCMこの番組の第一の問題点は、消臭スプレーなどを販売する業界の立場に立っていることです。
たとえば、人々の意識や行動を探るためのアンケートです。

番組は、化粧品会社マンダムが実施した「職場のニオイに関する意識調査2017②」を取り上げ、「職場で『嫌だ』と感じるニオイ」は1位が体臭、2位が口臭、3位がタバコのニオイだとしています(注1)。
しかし、別のアンケートもあります。

シャボン玉石けんのアンケートでは、回答者の8割が「香りつき商品を日常的に使用」しており、79%が「他人のニオイ(香水・柔軟剤・シャンプーなど)で不快に感じたことがあり」、51%が「人工的な香りを嗅いで、頭痛・めまい・吐き気などの体調不良になったことがある」と回答しているのですが(注2)、こちらは取り上げられませんでした。
最近の体臭過敏の風潮には、テレビCMなどを通じた業界のあおりによってつくられた面がありますが、それは報じられません。
ニオイ対策にしても、体は入浴やシャワーで清潔にする、衣類は洗濯し、スーツ類は風に当てるといった、当たり前の方法は全く示されません。消臭スプレーや汗拭きシートの使用しか方法はないかのようです。
番組には消臭スプレーを体に噴霧する場面が何度も登場し、まるで「体臭を気にする人は消臭スプレーを使いましょう」というCMを見ているようです(注3)。

残念なことに、スプレーが有害な成分を周りにまき散らし、周辺の空気質を悪化させていることは語られません。