-2:FM放送で「香害110番」について話しました   シリーズ「香害」 第2回 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

◆隣人の柔軟剤による被害
サッシャ ところで、日本消費者連盟が7月と8月に行なった「香害110番」では、どんな相談が寄せられたのですか?

 

岡田 最も多かったのは、近隣の洗濯物の柔軟剤による被害だったそうです。

たとえば「マンションで隣に住む人が干す洗濯物の柔軟剤で苦しんでいる。管理人を通してやめてもらうよう頼んだが、らちがあかない」という訴えです。
また「他人の柔軟剤の香りで息ができなくなり、吐き気もある。耳鼻科に行ったが治療できないと言われ、精神科に行きなさいと言われた」と訴えた人もありました。
共通するのは3点です。

一つ目が、頭痛をはじめとする健康被害が続き、普通の生活が困難になったこと。

二つ目が、ニオイに神経質な特殊な人物だと周囲から見られ、苦しさが理解されず、孤立しがちであること。

そして三つ目が、決して個人の問題ではなく、だれでも被害を受ける可能性のある、一種の「公害問題」だと広く知らせてほしいということです。
 

サッシャ 確かに化学物質に敏感でない人には想像がつきません。

ぼくも洗濯物を干したとき、ニオイが隣にまで行くとは知りませんでした。
 

岡田 同じ家に住んでいる家族にさえ理解されないことも少なくありません。

被害者たちが訴えるのは「好き嫌いの問題ではない。健康が損なわれることをわかってほしい」ということです。
 

寺岡 過敏症のご本人も病気だとわからず自分だけで悩み、精神的に孤立してしまうかもしれませんね。
 

サッシャ 「気にし過ぎだよ」とか言われて。
 

岡田 中には、体調が悪くなったのに柔軟剤などを使い続けている人もいます。

原因が何かわかっていないのです。
 

◆公共の場では香料の自粛を
サッシャ 実際に香害で悩まされている方は、どうすれば良いのでしょうか。

 

寺岡 何科を受診するとか。
 

岡田 生活が困難になるほど重症の方は、専門のクリニックを受診してください。

専門のクリニックは国内にはわずかしかありませんが、「化学物質過敏症支援センター」という支援組織や各地の患者会に相談すると、教えてくれます。
そこで化学物質過敏症と診断されれば、治療が始まります。

治療といっても薬や手術では治りません。

体内に取り込んだ化学物質を排出し、新たに化学物質を取り込まないようにして症状を少しずつ改善していくのです。
ところが、いまの時代、「化学物質を取り込まない」を実行するのは容易なことではありません。生活をすっかり変える必要があるからです。

ですから、普通の生活ができる程度にまで回復する人は多くはありません(注1)。
 

サッシャ 一方で、ぼくなんかもそうですが、香りを楽しんでいる人もいます。

香りがリラックス効果をもたらし、それで元気になる人もいます。

この問題にどう向き合っていけばいいのでしょうか。
 

岡田 香害はタバコの害に似た面があります。

喫煙者にリラックス効果をもたらすタバコはかつて、ごく普通の生活習慣であり、文化でもありました。

しかし、健康への影響が明らかになり、禁煙する個人が増え、社会では「分煙」から「受動喫煙の防止」へと進んいます。
香りについても、個人で楽しむのは自由ですが、少数とはいえ被害を受ける人がいる以上、だれもが出入りできる場所での利用は自粛する、とくに濃厚な香りは自粛するようにしたいものです。
カナダやアメリカでは、無香料や香料自粛を求める自治体・職場・病院・学校などが少しずつ増えています。

 

サッシャ アメリカはむしろ柔軟剤などの香りの強い国なのに?
 

岡田 それだけ被害を受ける人も多いということなのでしょう。
 

サッシャ 香害はどこまで影響が及ぶか目に見えないものです。

それだけにわれわれも、想像力を広げていくしかない。

そしてニオイで苦しむ人たちが遠慮なく、そのことを言える社会にしたいと思います。

岡田さん、今日はどうもありがとうございました。
 

岡田 ありがとうございました(注2)。
 

◆「香害110番」のその後
「香害110番」は日本消費者連盟(日消連)洗剤部会の3人の女性が中心になって企画・実行したものです。

その結果、番組でお話ししたような相談が寄せられました。
これを受けて日消連、化学物質過敏症支援センター、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議など8団体は、政府や業界に働きかけていくことを決め、まず消費者庁・国民生活センターに要望書を提出し、8月28日に懇談会を開きました。
要望は

▽国民生活センターが「香害110番」を開設して実態を把握する、

▽「香害」で苦しむ人がいることを周知徹底し、使用者に自粛を求める啓発をする、

▽柔軟剤などを家庭用品品質表示法の対象品目に指定する――など5項目です。
懇談会に出席した官庁側の担当者8人はほぼ全員が柔軟剤を使用しており、「香害」について何も知りませんでした。

要望への対応は消極的で、団体側は文書での回答を求めましたが、9月4日に電話で次のような回答があっただけでした。
「専用窓口は設けないが、実態の把握は検討する」「啓発については考えないでもない」「対象品目指定は、業界などの意見を聞き、必要と判断すれば、(法律をともに所管している)経済産業省と協議する」
8団体は「香害」被害をなくすため、さらに運動を続けることにしています。

 

注1 まだ軽症の人は、化学物質を放散させる日用品(柔軟剤・合成洗剤、シャンプー、制汗剤、消臭スプレーなど)や家具などを身の回りからなくすとともに、隣人などに「使用をやめてほしい」ときちんとお願いすることを勧める。近隣の十分な理解が得られず、引っ越した人もいる。
注2 生放送を聴いたある患者からは「香りにマイナスのイメージを持っていないナビゲーターが、うまく誘導し、自分の考える方向へもっていった印象を受けた」との感想が寄せられた。