5.1.1 産業医学論文中のMCSの有病率
キペン(1995)は、産業医療病院又は一般開業医で診察を受けた人々の様々なグループからMCS様症状を調査した。
彼は、23種の引き金物質のうちひとつ以上に曝露して具合が悪くなったかどうか、又はその部屋を離れざるをえなくなったかどうか、仕事を辞めなくてはならなかったかどうか、などについて質問した。
肯定回答は下記の様に分析された。
4 %:定常的な健康診察を受けた436人中
15%:他の職業関連の病気を持っていた107人中
20%:一般開業医の診察を受けた41人中
54%:職業的ぜん息又は気管支の過剰反応であるがMCSではない人43人中
69%:MCSの可能性(カレンの基準を満たす)39人中
この最後のグループは、他のグループに比べて、明らかに選定された23物質以上の物質によって症状が引き起こされていた。
ぜん息のグループは同様ではあるが、少し低い結果が得られた。キペンは、4つのコントロール・グループの肯定回答の人々がMCSであったのかどうかについて調査しなかった。
下記のテーブルは産業医療患者グループの中のMCS又は同様な症状の有病率を示す。
上記の表で引用(及び第4章で記述)した論文は、匂い過敏性及びMCSのそれぞれの有病率について興味深い展望を与えている。
アメリカの2つの論文(ラックスとコーン)は様々な産業医療患者の中の可能性あるMCS患者を特定するために従来のMCS定義を用いているが、デンマーク、フランス、及びスウェーデンの3グループはMCSの2段階の進展を記述している。
ジンテルバーグによって記述される症状は多分匂い過敏性に対応しており、MCSの初期段階と見なすことができるが、一方、スランスとスウェーデンのグループはカレンのMCS基準を満たしている。
アメリカとヨーロッパの論文では性差の状況が異なる。
このことはヨーロッパでは男性が職場で有機溶剤に曝露することが比較的多いためかもしれない。
リンデロフのストックホルムの家屋塗装工の調査は多分、選定上の影響がある。
しかし、アメリカの産業医学論文にこのように多くの女性が現われることには驚かされる。
アメリカとヨーロッパの論文は比較可能であるようには見えない。
リンデロフの家屋塗装工は、MCSになってもまだ働いているということが加えられるべきである。
他の論文は調査された人々の社会的状況に関する情報がない。