・4.4 屋内環境に関連したMCS
第2章で述べたように、屋内環境による症状には多くの原因があり得るが、それらは必ずしもMCSに共通であるというわけではない。
この章ではMCS様症状を引き起こす化学物質に注目する。
屋内空気及び様々な屋内の発生源に由来するこれらの化学物質は、集合的に揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれることがある。
ウォルコフ(1995)は、下記の主要な発生源を挙げた。
建材、塗料、接着剤、壁紙、家具、カーペット等
人間の活動に由来するもの:事務様機器、家庭用機器、パーソナル・ケア用品等
微生物:カビ、菌等
交通や産業からの屋外空気汚染(4.7節参照)
アメリカの文献には、新しい事務所に移った時、新しい家に引っ越した時、あるいは新しいカーペットを敷いた時などにMCS症状が出た人々の多くの事例がある。
ほとんどの場合、これらの人々は、多くの他の従業員とともに200~300m2のカーペットが敷かれた大きな事務所で働いていた。
カーペットはスチレンとブタジエンを含む接着剤で床に貼り付けられ、それらはポリマー化されたカーペットの下面に塗られていた。
(Ashford & Miller, 1998)
アメリカの家庭ではヨーロッパの家庭より多くの化学物質が使用されている。全人口の多くの部分が、デンマーク/ヨーロッパよりも大きく化学物質に屋内曝露している。
4.5 湾岸戦争症候群 (GWS)
先の戦争(ベトナム、朝鮮)に関しては、ある限られた兵士は帰還した後に様々な症状に悩まされたが、それらのあるものはMCSに似ていた。これらの症例は、かつて、主に心因性トラウマとして関連付けられ評価されたが、他の仮説も現在、検証中である。
湾岸戦争後、多くの兵士が健康の異常を訴えた結果、アメリカとイギリスで大規模な健康調査が行われることとなった。
いくつかの研究プロジェクトが現在も実施されている。
湾岸戦争症候群 (GWS)の原因としての多くの仮説のひとつは様々な化学物質への曝露であり(農薬、ワクチン、耐毒ガス抗体、等)、兵士等は呼吸又は注射を通じてこれらに曝露していた。
GWSの帰還兵のあるものは、MCS基準を満たしている可能性があり、そのことは、彼等は呼吸によって初期化学物質に中毒しており、その時以来、匂いに触れると様々な症状が現われるようになった。
デンマークの湾岸戦争調査では、湾岸戦争前及び間に、化学物質への曝露があったという事実は明らかにしていない((Ishoy, 1999)。