【対象と方法】 1999 consensus criteriaによりMCSと診断された患者群18名と健常者12名のコント ロール群を対象とした。患者群の 14 名とコントロール群の 12 名が 1 週間の身体症状 と精神症状の化学物質の暴露の測定を遂行できた。
また、心拍変動については患者群 の 16 名とコントロール群の 11 名で測定を遂行できた。 The Mini International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I.)を用いて構造化面接を行い、 精神疾患の合併の有無について評価した。
この面接の後、被験者は腕時計型小型コンピュータの電子日記を渡され、使用方法 について説明を受け、練習を行った。被験者には 1 週間の間、1 日 24 時間この電子日 記を身につけるよう依頼した。
MCS 患者群は午前と午後にそれぞれ 1 回ずつ、無作 為な間隔でビープ音が鳴ったとき(random prompts)と過敏症状を自覚したとき (patient-initiated symptom prompts)に電子日記の質問に回答してもらった。一方、コ ントロール群は 1 日 4~5 回、無作為な間隔でビープ音が鳴ったときに電子日記の質問に回答してもらった。
電子日記の質問項目は場所、行動、17 項目の身体症状と 9 項目の感情状態で構成されている。
さらに患者群にはアクティブサンプラーとパッシブサンプラーも1週間持ち歩いて もらい、過敏症状が生じている間アクティブサンプラーのつながったポンプのスイッ チを入れることで、1 週間の総暴露量と症状出現時の暴露量を測定した。
コントロー ル群ではパッシブサンプラーのみ持ち歩くよう依頼した。
また両群に 1 週間、RR 間隔を測定できるホルター型心電図計を装着するように依 頼した。 MCS の症状プロフィールの検定には線形混合モデルを用いた。
また、評価項目が 身体症状 17 項目、感情状態 4 項目と多いため、Bonferroni の補正を行った。
ガスサンプリングについては以下を満たす物質を症状を誘発する可能性のある物 質とみなした。
CAS×(100 - RSDAS) > CPS×(100 + RSDPS) この式において CASは AS 法の測定濃度、RSDASは AS 法の標準偏差の相対比(relative standard deviation; RSD、標準偏差を平均値で割り、100 を乗じたもの)CPSは PS 法の 測定濃度、RSDPSは PS 法の標準偏差の相対比である。 心拍変動については覚醒している6時間と睡眠中の3時間を選んで粗視化スペクト ル解析を行った。
粗視化スペクトル解析ではまず、R-R 間隔のデータを一列に並べ、 等間隔の標本について線形回帰を用いて線形トレンドを除去し、高調波成分とフラク タル成分に分解した。
高調波成分についてはLF領域とHF領域のパワーを積算した。 フラクタル成分については 2 つのパラメータによって評価した。
1つ目は心拍変動の パワーにおけるフラクタル成分の割合(%Fractal)、2つ目は log パワーと log 周波数を プロットして線形回帰を行って得たスペクトル指数βである。両群の比較については 反復測定分散分析を行った。