シ ッ クハ ウス症候 群 の病 態解 明 に関 す る知見 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・4.ア レル ギー ・免 疫 学 的側 面 か らシ ックハ ウス症候 群 も含 めた本症の83%の 患者に何 らかの ア レルギー性疾患 の既 往 または合併が認 め られ,一 般 の ア レルギ ー性 疾患 が 全 人 口 の30%で ある とい う事 実 と比較 して も明 らかに高率 で ある こ とが わか ってい る3).し か しなが ら,微量 化学物 質曝露 とサイ トカイ ンと呼 ばれる各 種免疫 学的 マーカーの変動 は一定 の傾 向 を示 さず,現時点で は,ア レル ギー反応 が本症 の成立機序 に深く関 わってい る証拠 は何 も得 られてい ない.よ っ て本症が直接 アレルギー反応 に よって誘発 され る可 能性 は非常 に少 ない と考 えられるが,ア トピー素 因 を有す る ヒ トに高 い頻度で 出現 す る可 能性, ア レル ギー疾 患 を増悪 させ る可能性,す なわち,免疫機 能 を撹 乱 させ る可 能性 につ いて は否定 する余 地は ない.環境化学物質の反復曝露大脳辺縁系における抑制性神経細胞GABA受 容体阻害シナプス可塑性誘導 ・変化、神経細胞の条件づけ化学キン ドリング現象
各種情動反応出現
図―2環 境化学物質 による化学 キン ドリング現象5)
5.心 療 内科 学 的 側 面 か ら
シ ックハ ウス症候 群 は,そ の多彩 な 自覚 症状がいわゆ る 「不定愁 訴」で ある こと,患 者 が最初 に訪れた診療科 におけ る一般 的検 査 のみでは,診 断 が きわ めて 困難 であ る ことな どか ら,「 更年 期 障害」,「 身体表 現性 自律神 経機能 障害」,「 不安 障害」,「気分 障害」あるい は 「うつ病」な どと診 断 され,「心の病」 と して取 り扱 われ る場 合 も多 い.疾 患概念の コンセ ンサスが得 られて いない ことが 「心 の病」 と して取 り扱 われる最 大 の理 由であ るが,多様 な心身 の機 能異常 が多 い こ とも事実 で あ る.本症が,化 学物 質曝露が誘 因 となってい るこ とは言 うまで もないが,心 理社 会的 ス トレス に よる心身相関 も発症,お よびその後 の経過,転 帰 に強 く影響 を与 えてい る.す なわ ち,ラ イ フイベ ン トが患者 に とって どれ ほ どス トレスフル なのか を客 観的に評価 し,ス トレス脆 弱性 と化学 物質曝露状 況 の両面か ら病 態 を把握 す る必要性 があ ると考 え られ,今 後 は この方面 での病態解析 が盛ん になる と思われ る9)(図―3).
6.む す び
シ ックハ ウス症候群 の発症機構 に関 して,臨 床環境 医学 的立場か ら今 後重要 と考 え られ る項 目に関 して最新 の考 え方 を解説 した.数 年前 まで,シ ッ クハ ウス症 候群 は,「 低用量 作用 に よって生 じる」点か ら,従 来の毒 性学 的概念,す なわち明瞭 な「量 一反応 関係 」 を前提 と して ,発 症機構 につ いて誰もが納得 で きる ように科学 的 に説明す るこ とが きわめ て困難で あった.よ って この こ とが,い わゆる 「シ ックハ ウス問題」 の出口 を不明瞭 に させ てきた最大 の要 因である.し か し,こ こ数 年来 の病態解 明 に関す る研 究の進歩 は 目をみ はる ものが あ る.さ らにこの数年以内 に,遺 伝 子発現 や タ ンパク発現 を利用 した最先端 の研 究手法が,本 症 の臨床研 究 に応用 される ようにな るであ ろ う.そ うなる とよ り本 質に迫る臨床基礎 デー ターが得 られるよ うに なる と思 われ,疾 患 としての評価 の ための指標 が ほぼ確立 され る もの と期 待 され る.
参 考 文 献
1) 坂 部 貢:シ ッ ク ハ ウ ス 症 候 群 と 化 学 物 質 過 敏 症 ~ オ ー バ ー ビ ュ ー ~ ,ア レ ル ギ ー ・免 疫, Vol.10, No.12, pp.15-19
 (2002)
2) 坂 部 貢:ビ ル 環 境 と シ ッ ク ビ ル 症 候 群 ビ ル と 環 境
, Vol.106, pp.40-43 (2004)
3) 長 谷 川 眞 紀:シ ッ ク ハ ウ ス 症 候 群 ・ア レル ギ ー の 見 地 か
ら,ア レ ル ギ ー ・免 疫, Vol.10, No.12, pp.20-25 (2003) 4) Meggs W.J.: Mechanism of allergy and chemical sensitivity, Toxicol Indust Health, Vol.15, pp.331-338 (1999) 5) Gilbert M.E.: Does the kindling model of epilepsy contribute to our understanding of multiple chemical sensitivity?, Ann New York Acad Sci, Vol.933, pp.68-91 (2001) 6) Takeda A., Saito N., et al.: Sick-house/building syndrome: its relationship with olfaction, Proceeding 2003 International Symposium in Indoor Air Quality and Health Hazards, pp.242-245 (2003) 7) 坂部 貢,宮 田幹 夫,他:シ ックハ ウス 症候 群 と脳 循環,
神経 眼科, Vol.19, No.2, pp.162-168 (2002) 8) 坂部 貢,宮 田幹 夫,他:化 学 物質 過敏 症 の見 方 ・考 え方 (1)― 環 境化 学 物質 感受 性の ジ ェネ テ ィクス とエ ピジ ェ ネ テ ィクス―,神 経眼科, Vol.29, No.3, pp.350-354 (2003) 9) 辻 内優 子,齊 藤 麻里 子,他:シ ックハ ウス症 候群 ・心 身 医 学 の 見 地 か ら,ア レ ル ギ ー ・免 疫, Vol.10, No.12,
 pp.36-42 (2003)