巻末資料
資料1 厚?労働省の室内濃度指針値
a 室内濃度に関する指針値の概要
室内空気中に存在する化学物質はヒトの健康に影響を及ぼす可能性があるため、公衆衛生の観点から化学物質の不必要なばく露を低減させる必要があります。
ここで示した指針値は、現状において入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響を受けないであろうと判断される値を算出したものであり、その設定の趣旨はこの値まで良いとするのではなく、指針値以下がより望ましいということです。
この指針値は、新しい知見やそれらに基づく国際的な評価作業の進捗などに伴い、将来、必要があれば変更され得るものです。
b 個別物質の室内濃度指針値と TVOC 暫定目標値
(資)表- 1 に示した個別物質の指針値は、ホルムアルデヒドの場合は短期間のばく露によって起こる毒性を指標に、その以外の物質の場合は長期間のばく露によって起こる毒性を指標として、それぞれ策定しています。
しかし、実際には(資)表- 1に示した化学物質以外に多数の化学物質が存在しています。
それらの物質について指針値を決めていくには多大な時間を要すること、またその間に指針値を決めていない有害物質による汚染の進行を未然に防ぐ目的から、化学物質の総量、すなわち、総揮発性有機化合物(TVOC)濃度の目安を示して、個別物質の指針値を補足しています。TVOC の暫定目標値は、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した値であり、毒性学的知見から決められたものでないので、個別物質の指針値とは独立に、室内空気の状態の目安として利用されます。
c 室内濃度指針値を超過した場合の対応
室内濃度指針値を継続的に超えている場合は、関係の相談機関や専門家と相談し、その家屋の状況などを総合的に勘案して、必要に応じ、次のような対応を検討することが望ましいと考えられます。
1. その化学物質の室内濃度の再測定
2. 換気の実施など、室内環境の改善
3. 発生源の特定と発生源対策の実施
資料2 室内濃度指針値の考え方
化学物質のヒトへの影響を明らかにするための方法として、疫学的評価法(集団を対象とした調査研究)と毒性試験(実験動物、培養細胞、微生物等を使用)があります。
複数の種類の毒性試験を行い、その濃度以下では何の影響も観察されない量が無毒性量(NOAEL)、それ以上で有害な影響が起こり始める量が最少毒性量(LOAEL)です。
動物を使った評価結果を人間にあてはめる際には、種の違いによる感受性の差(種差)が重要な問題となります。
ヒトでの NOAEL が明らかでない場合には、動物試験で得たNOAEL を種差に由来する不確実係数 l0 で割った値をヒトの値として採用します。さらに、個体差に由来する不確実係数 l0 で割り、加味すべき要因があればさらに妥当と考える不確実係数で割った数値が基準値や指針値として採用されています。