・Q35. 家の中のカビを防ぐ方法をおしえてください。
A カビ(真菌)の生育条件は人間と重なっているため、居住空間によく現れます。
既に発生している部位は薬剤等で除去・処理するとともに、「結露を防いで材料を湿潤させない」「清掃をまめに行う」のが基本的な戦略です。
浴室・洗面などの水回りも暖房や換気で濡れたまま放置しないようにします。
Q36. 仮設住宅での?活で特に気をつけなければならないことは何でしょうか?
A 仮設住宅で結露やカビの発生が多いことが報告されており、換気に気を付ける必要があります。
具体的には、トイレの換気扇を常に運転しておく。
また、移動できる開放型の灯油やガスのストーブは使用しないほうが望ましいです。
詳しくは第7 章 4 節を参照してください。
Q37. 家の改修築をしたいけれど、業者選定にあたって注意することは何ですか。
A 改修の経験が豊富で、省エネルギーやシックハウス問題、健康問題に関心のある業者を選ぶとよいでしょう。
さらに、より高い安全性を望むなら、使用建材や施工材(接着剤、塗料など)の組成仕様や放散性状を熟知し、換気情報も提示できる業者ならなお良いです。
Q38. 家の中でも熱中症になる可能性がある、というのは本当ですか?
A 熱中症は、以前には炎天下の屋外での作業やスポーツ、運動の際に多くみられました。
しかし最近は、特に高齢者が、家の中で熱中症になる場合がみられます。
高齢者は、加齢により身体機能が低下し、環境の影響を受けやすく、体温調節機能も低下しています。
また、温度感覚も鈍く暑さ寒さを感じにくくなっている場合もあります。
暑さに身体が対応出来ず、熱中症になりやすいのです。
日本は高齢社会で、高齢者のみの世帯も多く、独居老人も増加しています。
室内において気づかれずに熱中症により死に至る場合もみられます。
室内環境面、そして、社会的対応が重要となります。
(詳しくは第 8 章 4 節を参照してください。)
Q39. エアコンはなるべく使いたくないのですが、熱中症を防ぐにはどうしたらよいですか?
A 熱中症の防止には、温度のみでなく、風速や湿度、輻射の環境面、そして、着衣も影響します。
室内での暑さ対応には、エアコンだけではなく、扇風機や除湿機も有効です。
風土や地域にもよりますが、自然環境を取り入れての対応が大切です。屋外の暑さ、日射を室内に入れない様に工夫しましょう。
日光の当たる窓ぎわやベランダに、朝顔やヘチマなどの植栽、また、スダレなどを窓の外に設置し、太陽光の輻射熱を室内に入らない様にすることも効果的です。
ベランダや庭に樹木を植えると、緑陰とともに微風を伴って、窓からの自然の涼しさが期待できます。
家の中では、ほどよい風の流れが必要です。
窓から入った空気が他方の窓やドアから出る空気の通路です。
部屋に窓や換気孔が必要です。
湿度が低くカラリとした環境で、木陰からの微風も加われば、気温が少々高くても快適に過ごせます。
室内に温・湿度計を備え、身近な生活域の温熱環境をチェックすることも大切です。(詳しくは第 8 章 4 節を参照してください。)
Q40. 学校でシックハウス症候群の学童がいます。
どのように対応したらよいですか?
A その学童の症状について本人からよく話を聞くことが必要です。
症状が出始めた時期、症状が出る場所、症状の内容についての情報を得ることで症状を来した原因がある程度わかる場合があります。
また、学童の担任、学校管理者とも情報を共有し、症状を軽減、解消するための方法について、できれば建築に関わった業者、さらに専門家も交えて検討することが大切です。
多くの場合、学校の新築、改築、再塗装などがきっかけとなって症状が始まりますが、学校の室内環境を良くするための方法としてベイクアウト(半日ほど室内を高温にさらし、VOC の揮発を促して建材などに残る VOC を排出させること)、換気の強化などの方法があります。
いずれもお金がかかるため、予算が必要になります。
学校管理者、公立学校であれば教育委員会などとも連携して対応にあたらなければならない場合もあるでしょう。
一方、症状を訴える学童がクラスなどで孤立してしまわないような配慮も必要です。
他の学童にもシックハウス症候群に関する理解を深めるような教育とともに、当該学童を精神的にも支えるサポートの方法なども養護教員などと話し合っておいてください。
なお、揮発性化学物質以外の原因でもシックハウス症候群の発症はあり得ることも念頭に、原因がはっきりしない場合には本書にも記された専門家への相談をお勧めします。
詳しくは第 10 章を参照してください。
Q41. 職場でシックハウス症候群の訴えがあった時に注意することはありますか?
A 製造業などの現場では様々な揮発性の化学物質が使用されていますが、現場で働く作業者からシックハウス症候群の訴えが出てくることはむしろ少なく、深刻な症状を訴えるのはオフィスなどの固定した場所で働く人たちに多いようです。
職場となる建物の改築、改装などを機に発症することがありますので、これらの出来事があった場合にはその後しばらくはシックハウス症候群の訴えが出ないか注意しておく必要があります。
産業保健スタッフがいる職場であれば、本人に症状について相談してもらうとともに、会社としての対応についても協議し、本人、産業保健スタッフ、会社が十分に意思疎通を図る必要があります。
対策については建築関係の専門的な知識も必要とされる場合もありますので、上記の工事関係者、建築関連業者とも連携する必要が出てくる場合もあります。
産業保健専門職が身近にいない場合は地域を管轄する保健所など、本書に紹介されている相談先への相談をお勧めします。
原因となる揮発性有機化合物の同定や濃度などは明らかにできればそれに越したことはありませんが、高額の費用が掛かる場合がありますので、財政状況を検討しつつ、費用がかからない対策を優先させるのが適切です。
詳しくは第 10 章を参照してください。
Q42. シックハウス症候群の患者さんの相談を受ける上で、気を付けることはありますか?
A 重要なのは、患者さんの話を受容的な態度でよく聴くことです。
また、誤解を避けるために、聞いた話の要点を整理して復唱し、内容を確認してもらうことも大切です。
このようなやり取りが信頼感につながり、相談業務を進めやすくします。患者さんは症状の原因として、目につきやすく、気づきやすい発生源に注意を向ける傾向があることにも留意し、患者さんの訴えから、様々な原因の可能性を探ることも重要でしょう。詳しくは第 10 章を参照してください。