110;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・10.5.4. 学校への対応
本人又は保護者には、今の症状が学校の室内環境に問題があるために生じている疑いがあることを伝え、まずは担任の教員にそのことを相談してもらうようにします。

室内の VOC が原因であれば、換気に努めることでかなりの確率で症状は改善します。

また、直接学校管理者などに連絡をとり、対策の検討を申し入れること、学校の医学的な責任を負う校医に連絡することも選択肢に入ります。
10.5.5. 職場への対応
患者さんから依頼があれば、診療情報提供書に準じて職場の産業医をはじめとする産業保健スタッフに対して対応を求める文書を作成することで、問題解決に向けて事態が動き出すことが期待できます。
まず職場における衛生管理の状況を尋ねます。

重要なのは産業保健スタッフがいて、本人からアプローチすることが可能かどうかという点です。

50 人以上の事業所には産業医が選任されており、1,000 人以上の事業所には専属産業医がいますので、まずは産業医に連絡します。

また、産業医がいなくても常勤で産業看護職がいることがあり、その場合には文書の宛先を看護職にします。

いずれにしても、従業員の体調に職場の室内環境が関連していることが疑われるため、対応を求めるという趣旨のものになります。
50 人未満の事業所では通常、産業保健スタッフは選任されていないため、対応が難しくなります。
この規模の事業所への産業保健サービス提供のための機関として労働者健康安全機構が各都道府県に設置している産業保健総合支援センターがあります(「第 10 章 4 節 住宅や職場で発生した場合の相談機関」参照)。
10.5.6 診断書について
診断名を「シックハウス症候群」として診断書を書くという対応も考えられますが、シックハウス症候群であれば、医療機関が主体的に治療して症状が快方に向かうことはありませんので、診断書の提出によって本人が療養するという意味はなく、通常の診断書としての役割は期待できません。

シックハウス症候群は職場の室内環境を変えない限り、症状はよくなりません。

この点について本人に十分理解してもらうことが必要です。
10.6. メンタル面のサポート
シックハウス症候群を発症する人は、職場、学校、住宅を問わず、常に少数派です。

発症するとすでに述べたような様々な症状を訴えるようになりますが、周囲の人たちには症状がなく、発症者の訴えが理解しにくい場合もあります。

本人にとっては頭痛、めまい、喉や目の痛みなどの問題があってもその原因が建物であることが理解されないと、次第に発症者が孤立しがちになります。

特に職場や学校でこのような状況になると働き続けること、登校が困難になってしまうという深刻な事態を招くことになります。

室内環境の改善による対策は不可欠ですが、発症した人へのメンタル面のサポートは大変重要な課題です。
10.6.1. 一建て新築住宅の場合

新築住宅でのシックハウス症候群の発生は以前と比べ、かなり減少しましたが、発症はなくなっているわけではありません。

新築住宅は施主が工務店やハウスメーカーと契約して高額の出費を伴う、人生の中でも大きなイベントと言えますが、その住宅にいることで、体調不良を起こすことになれば、精神的な負担感は極めて大きなものになります。

すでに述べたように、クレームを行い、早期に問題が解決できれば、メンタルヘルスの問題になることは少ないと思われますが、原因が不明、または原因がわかっていても、早期に解決できない場合には、メンタルヘルスへのサポートが必要になる場合があります。
住宅での発生では、対応は例えばメンタルヘルスに対応する診療所への受診などが考えられますが、シックハウス症候群というメンタルヘルス不調の原因となる問題への理解を外来受診の際に多忙な担当医に求めることはかなり難しいのが実情です。

しかし、不眠などの症状に対しては対症療法としての薬剤治療も有効なこともあり、受診時にはできるだけの情報を伝えることが必要です。

また、時間をかけて訴えを聴いてもらうことで症状の改善が期待できると判断されれば、カウンセリングをしてもらえる診療所もあり、この点についても主治医と十分に相談してみることが大切です。
新築戸建て住宅はほとんどの場合、家族で住みますので、発症者のメンタルヘルスのサポートで最も重要なのは家族にほかなりません。

家族が症状についての情報を本人から得るとともに、必要があれば、メンタルヘルス対応医療機関への受診支援、さらに保健所、保健センターなど地域保健機関も重要な相談先になります。