6.1.1. 発生源と移動経路
一般に建築物は、外界からの気象(熱湿気、風圧、日射等)、害虫獣、騒音、犯罪などのス トレスに対抗する屋根・外壁・外部建具などの外装と、室内の空間を包みこんで生活空間を形 成・維持する天井面・壁面・床面などの内装、荷重や外力を負担し外装や室内空間を支持する 木材やコンクリートなどの構造躯体、そして給排水・衛生・調理や暖冷房・給湯・照明等に係 わる住宅設備により構成されています。
さらに、外観からは識別できない断熱材、防水材、気 密材、配線・配管材のほか、塗料、シーリング材、接着剤をはじめとする様々な素材にも本来 機能の実現と耐久性・生産性改善のために薬剤が使われその影響が居住空間に現れます。
薬 剤・成分と健康影響の詳細については第5章で詳しく触れていますので、ここでは部位・用途 の観点から発生と移動メカニズムを分類して表 6.1.1.に示しました。
汚染物質の発生部位が 居住者の視野に入っていれば分かりやすいのですが、現れていない構造躯体内部や補助資材か らの汚染は、施工時期や移行経路・メカニズムに影響されるため、発見が困難なうえ、対応方 策も一様ではなく注意が必要です。
従って、汚染物質の発生・移動(流入)を考え、対策を練 るには、部位別に加えて、発生に係る行為の段階別(設計、施工、居住、災害時、改修時な ど)、移動経路・要因別(材料選択、養生不足等の施工ミス、高温高湿等による加速、暖冷 房・換気設備による圧力分布、建具性能、気密性など)などを把握しておかなくてはなりませ ん。
以下、表 6.1.1.を参照しながら、発生メカニズムや対策に係る特徴について述べます。