c. 適応
快適温度の範囲についてみると、夏は相対的に高く冬は低くなっています。
これは季節によ
り変化する外気温に体が慣れることによるものであり、適応と呼びます。
また、先に自然換気
を行うオフィスの場合には、空調する場合に比べて温度の快適範囲が広がるという研究成果に
ついて述べましたが、一種の適応であり省エネルギーを進める上では重要な研究成果です。
また、転勤や大学入学のために北海道から南の地域に移動した人たちは冬の室内の温度が低
く風邪をひいてしまったという話をよく聞きます。
これは適応ができないことが原因で健康へ
の影響にかかわる問題ですが、まだ研究は十分に進んでいません。
d. 低温・高温と健康
低温と高温が健康に与える問題に関しては既に触れましたが、低温の問題に関して追加して 説明します。
筆者らは 2015 年の冬に山形県の 3 つの町の住宅それぞれ約 80 軒を対象に室内の 温度を測定しました。
その結果、暖房している住宅は主に居間だけであり、12°Cから 24°Cの間 で分布があるものの平均で約 20°Cとなっていること、寝室の温度は分布が大きく約 8°Cと約 20°Cを中心とした山が 2 つ見られること、トイレは 8°Cを中心とした山がみられるが 16°Cまで 分布していること、などの特徴がみられました。
居間などの暖房している部屋と暖房してない スペースでの温度差は大きく、その間を移動する場合には居住者に熱的なストレス(ヒートシ ョック)が加わることになります。
このような室内の温度の特徴、特に暖房している居間と暖房していない寝室やトイレとの温 度差が大きいことやそのことが脳卒中の発症に影響していることが明らかになっていますが なっています 3)。
断熱・気密性能の高い住宅に移った後には、それまで暮らしていた住宅で症状のあった気管 支喘息、喉の痛み、せき、アトピー性皮膚炎などについては居住者の約 60%が回復したことが 調査で明らか 4)にされています。
夏期の住宅内の高温に対しては、冷房設備の運転で対応することが望ましいのですが、冷房 設備を運転して睡眠をとった場合には、冷房しない場合よりも睡眠障害、疲労感の度合いが高 いという調査結果 5)が得られており、冷房を適切に使用することが大切であるといえます。