c. 準(半)揮発性有機化合物(Semi-Volatile Organic Compounds: SVOC)
準(半)揮発性有機化合物 SVOC は沸点 240~260°Cから 380~400°Cの物質です。
揮発性が高い VOC の多くは室内の空気中に存在しますが、揮発性が比較的低い SVOC は環境中ではガス状物質、浮遊粒 子状物質、またはダストに吸着し、平衡状態を保ち存在しています。
室内環境汚染の原因となりう る主な SVOC には、フタル酸エステル類や、有機リン酸トリエステル類、殺虫剤などがあります。
フタル酸エステル類は、プラスチックやポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride: PVC)を加工しや すくするための可塑剤として使用されます。
私たちが生活する場には様々なプラスチック製品や PVC 製品が使用されているため、室内環境にはほぼ例外なく各種のフタル酸エステル類が存在しま す。
フタル酸エステル類のうち、もっとも生産量が多いのがフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP) で、日本では全体の約 65%、次に多いのが DEHP の代替として増加してきたフタル酸ジイソノニル (DiNP)で約 25%となっています。
リン酸トリエステル類は、難燃性可塑剤として主に住宅内装材 や建材、ウレタン素材、繊維製品、電化製品、ゴム製品等に用いられています。
以前は難燃剤とし ては臭素系化合物が多く用いられていましたが、臭素系難燃剤は内分泌かく乱作用が疑われたこと から、日本では欧米に先駆けて 1990 年代初頭には業界の自主規制によりリン系難燃剤へと移行して きました。
2003 年には欧州連合(EU)や米国でも臭素系難燃剤が規制され、現在はリン系難燃剤へ と移行してきています。リン酸トリエステルのうちリン酸トリス(ブトキシエチル)(TBOEP)は、 可塑剤やフローリングのワックスに配合されることが多い物質です。表 3.2.2.に室内の空気中およ びダスト中のフタル酸エステル類、リン酸トリエステル類の濃度を示しました。