http://www.nies.go.jp/kanko/news/36/36-2-06.html
・事故・災害時における化学物質調査の現状と課題
特集 国立環境研究所 福島支部を拠点とした災害環境研究の新たな展開
【研究プログラムの研究実施状況4:「災害マネジメント研究プログラム」から】
小山 陽介
「災害環境マネジメント研究プログラム」では、今後の災害に備えるための研究に取り組んでいます。
東日本大震災では、放射性物質の環境中への放出が最も大きな問題となりました。
化学物質についても同様に、事故や災害の発生時には事業所などで製造・保管されている有害な物質が環境中に放出される事態が起こります。
本プログラムでは、このような緊急時に特有の化学物質曝露状況に関するリスク管理を行うための研究を進めています。
従来、化学物質の製造や貯蔵など取扱のある施設や事業所では、環境への放出量や作業者の曝露量を制御するための取り組みが行われており、リスクが十分低くなるよう管理されています。
多くの化学物質は排出側の管理により一般公衆への曝露を抑制することが可能です。
そのため、一般環境において濃度基準等が定められている物質はそれほど多くありません。
しかし事故や災害が発生すると、貯蔵施設からの漏洩などにより、一般環境においても平常時に想定されている状況とは異なる曝露状況となり得ます。
近年、NATECH(natural-hazard triggered technological accident)と呼ばれる自然災害起因の産業事故など、平常時と異なる状況に想定されるリスクを評価・管理するための研究が進められています。
しかしながら、このような事故・災害時のリスク管理手法はまだ十分に体系化されておらず、また、必ずしも事前に想定された状況になるとは限りません。
そのため、実際の事故や災害の現場では、リスク要因として「何を調査し、どのレベルで管理すればいいのかわからない」という問題を抱えています。
リスクの判定を行うための基準値を作成しておくことで、事前に想定できなかったシナリオに対しても対策が取りやすくなると考えられます。
ここでは、いくつかの緊急時における化学物質の基準値や、緊急時の化学物質調査において参考となる情報源の紹介を行うとともに、緊急時調査において有用となる情報の整理の必要性について述べたいと思います。