環境回復PG では2 つの大きなテーマを扱っています。
震災後6 年が経ち、昨年12 月には「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」が閣議決定されるなど、福島は新たな復興ステージに入っている中で、1 つめのテーマである放射能汚染廃棄物研究では、段階的に本格化する汚染廃棄物・除去土壌の中間貯蔵そして最終処分に向けた技術・システム開発を進めており、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)との共同研究も開始しています。
2つめのテーマである放射性物質の環境動態・影響評価研究では、避難指示解除後も視野に入れた長期的な生活環境の管理が課題となっています。
原発事故後の環境がどう変化し回復していくのか、長期のモニタリングはそれ自体重要ですが、将来予測を含め長期管理に役立つ形で結実させていくことが必要です。
環境創生PG では、福島県新地町をモデルに復興事業の構想・計画段階から、まちづくりの支援を行ってきました。
現在はその実施段階にも研究機関として関わりつつ、グリーン復興のノウハウを周辺地域に展開すべく、森林バイオマスの利活用研究も開始しています。
災害環境マネジメントPG では、これまでの経験を将来の災害の備えに活かすことを目指しており、現地支援を通じてこれまでの研究成果を試行的に適用し、研究にもフィードバックしていくアクションリサーチを進めています。
実際に、昨年の熊本地震など大きな災害発生時にも対応してきました。
巨大地震への備えは国家的課題となっており、災害廃棄物の安全・効率的な処理は早期の復旧・復興を左右する大きなテーマです。
様々な事故・災害時の有害物質への対応など、緊急時の環境管理にどう取り組むか、関係者のネットワークづくりに取り組んでいます。
災害環境研究は震災後スタートした新しい分野ですが、国環研の将来の新たな展開にもつながるような特徴的要素があります。
1 つめは、研究タイプとして、自然・社会科学の様々な研究分野の叡智を集める典型的な横断的研究で、かつ、復興に役立てるという社会ニーズを背景にした、課題解決型の側面が特に強い研究です。
放射性物質は国環研にとっては新たなテーマでしたが、社会的要請に応えるべく、これまでに培った手法を組み合わせ応用・発展させることで取り組んできました。
2 つめは、社会との強い関係性です。国環研では、復興ステージの進展に応じて、政策・施策を支える科学的根拠を提供してきました。
一方で風評被害は今も大きな課題です。
被災地の方々の思いを受け止め、ともすれば生じがちな、研究と実社会の意識のギャップを埋める努力が欠かせません。
科学技術の世界では「社会対話」が重要なキーワードとなっていますが、その実践には、さらに一歩踏み出す勇気とそれを支える強い足腰が必要でしょう。国環研つくば本部には新たに社会対話・協働推進オフィスも設置されましたので、今後連携して取り組んでまいります。
3 つめは組織的にも研究実施の面でも、多様な連携の下で活動している点です。
福島支部は初の地方組織ですが、管理部門を持った研究ユニットとして研究・管理の両面でつくば本部とも密に連携しています。
また、現地拠点ができたことで、地域に根ざした協働・連携もしやすくなりました。
さらに福島県環境創造センターでは、国環研、日本原子力研究開発機構(JAEA)および福島県の三機関が、組織的には独立しつつ、お互いに協力して運営しています。
同センターを拠点とした国内外とのさらなる連携・発展につながるよう、新たな関係づくり・ネットワーク化を目指しています。
国内外から原発事故や被災地への関心は高く、「国環研は何をしているのかしていくのか」が世の中から常に問われていると思います。チャレンジの続く福島支部ですが、引き続き皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いします。
(たきむら あきら、福島支部長)
執筆者プロフィール:
原稿執筆時、三春は雪でした。私自身を含め不慣れな雪道をマイカー通勤する職員も多く、無事に初めての冬を乗り切ることが最大の課題でしたが、それは達成できほっとしています。