2.社会参加への支障
1)発症によって起きた問題
発症者は、症状を抑えるために電磁波をできるだけ避けなくてはいけないが、携帯電話や無線 LAN などの無線通信機器が急増する現代社会では、電磁波を避けるのは簡単なことではない。
被曝を避けるために、電磁波を防ぐ対策工事を自宅に施したり、働き続けることができなくなるなど、さまざまな問題に直面する。
そこで、アンケートでは、発症によって起きた日常生活上の問題についても尋ねた。
最も多かったのは、電磁波に直接関わる項目だった。
「電磁波を避けたいのに、携帯電話・PHS 基地局が、突然、近所に設置された、または設置される不安がある」51 人(68.0%)、「住宅の電磁波対策をして経済的な負担が発生した」40人(53.3%)、「電磁波の少ない環境へ転居を余儀なくされた」29 人(38.7%)、「携帯電話・PHS 基地局の設置場所が公表されておらず、行政や企業に聞いても教えてくれない」18(24%)人、「電磁波の少ない家電製品を探しているが、どの程度の電磁波が発生しているのか情報がなく、適した家電を探すのが困難」41(54.7%)人だった。
医療に関する問題としては、「他の病気になっても、医師に電磁波の知識がなく、必要な診察・治療を受けられない」36 人(48.0%)、「電磁波過敏症を知っている病院がなく、適切な治療が受けられない」31 人(41.3%)、「専門病院が遠方にあるので、通院の交通費がかさむ」25 人(33.3%)、「他の病気で入院することになっても、電磁波の少ない病院がなく、入院できない」19 人(25.3%)、「自由診療なので、病院での検査費用がかさむ」21 人(28.0%)だった。
仕事に関する問題としては、「思うように働けなくなり、退職した」が最も多く 20 人(26.6%)だった。
また、「体調不良をおして働いているので、症状が改善しない(または悪化した)」は 13 人(17.3%)だった。「家事ができなくなり、家族やホームヘルパーに依頼することになった」も 13 人(17.3%)いた。
55 歳女性は、「蛍光灯の施設が多く、長時間いられない。
重症時は家の中のどこでテレビがついていても辛く、家人はテレビが見られない。
電車で 3 時間の実家に、両親の世話をしにいけなくなった」という。
58 歳女性は「自由に外出できなくなり、人付き合いが減った。映画や人が集まる場所に行けず、趣味が楽しめない。
転居したいが安全な場所の探し方がわからない」と答えている。
別の58歳女性は化学物質過敏症になって半年後に電磁波過敏症を発症し、「住む場所が見つからず、5 年前から路上生活をしている。周囲の状況が変わると移動する。冬は大変」と答えている。
2)交通機関の携帯電話使用について回答者のうち 49 人(65.3%)は、交通機関の中で使われる携帯電話によって体調不良を起こした経験があり、9 人(12%)は「症状が重く交通機関を利用できない」と答えている。体調不良を起こしたことがないのは 15 人(20%)だった。
実際に起きた症状は、「頭痛」24人(体調不良経験者の 49.0%)、「動悸」12 人(24.5%)、「めまい、耳鳴り」10 人(20.4%)、「疲労感・倦怠感」「皮膚症状」各9人(18.4%)、「吐き気・嘔吐」8 人(16.3%)、「腹部や胸部への圧迫感」5 人(10.2%)「腹痛」「思考力・記憶力の減少」各 4 人(8.1%)、「ひん脈・不整脈」「目の奥の痛み、目がかすむ」「倒れる、意識が遠くなる」「呼吸が苦しい」各 3 人(6.1%)などだ。
多くの交通機関では、優先席付近をマナーモードに指定し、携帯電話の電源を切るよう求めているが、実際には優先席に座って携帯電話を操作する人が後を絶たない。
こういった症状に苦しみながら、乗車している人がいることに目を向ける必要がある。阪急電鉄は「携帯電話の電源オフ」車両を設けており、回答者の中には、この電源オフ車両を利用すると答えた人もいた。
このような取り組みが全国に広がることを願う。
なお、交通機関を利用する目的は、「友人・家族に会う」26 人(34.7%)、「買い物」23 人(30.7%)、「通院」20 人(26.6%)などだった。
乗車中、他の人の携帯電話で体調が悪化するため、発症者はさまざまな自衛策をとっている。
「外出をできるだけ控える」35 人(46.7%)、「交通機関を利用せず、できるだけ徒歩や自転車を利用」28 人(37.3%)、「できるだけマイカーで利用する」26 人(34.7%)、「できるだけラッシュ時を避ける」23 人(30.7%)、「周囲の乗客に電源オフを利用している」11 人(14.7%)、「携帯電話を使っていない人の側を選び、少しでも楽そうな場所に移動する」7 人(9.3%)だった。
「店や場所はある程度選べるので、交通機関だけは安全に利用できるようにしてほしい」「周囲の乗客へ電源オフを呼びかけるのは、できそうでできない」
「電源オフを頼むと、『メール等は電磁波は出ていない』と反論された」という声も寄せられた。
アンケートでは、必要と思われる電磁波対策についても質問した。「電磁波過敏症という病気と電源オフの必要性について、乗客に知ってもらうこと」71 人(94.7%)、「交通機関に『携帯電話の電源オフ』車両を設けること」65 人(86.7%)、「交通機関のホーム,待合室などに『携帯電話の電源オフ』エリアを設置すること」49 人(65.3%)、「バスや電車の停留所で携帯電話の電源を切るルールを作ること」47 人(62.7%)だった。
また、「携帯電話だけでなく、無線全般、パソコン等の使用禁止エリアを設けること」「公共の場での携帯電話の使用場所を決める」「国民全員が電磁波のリスクを知ること」「電磁波過敏症の認知度を高め、理解や配慮を求める」「電磁波の少ない交通機関の研究開発、導入」といった声もある。
runより:まだまだ続きがあるので明日以降掲載します。