3)症状を引き起こす電磁波発生源
これまでに具合が悪くなったことのある電磁波発生源について尋ねると、最も多かったのは「携帯電話や PHS の基地局・中継アンテナ」53 人(70.7%)、
*不整脈:脈拍が不規則にうつこと
*ひん脈:脈が早くなること
*動悸:心拍数や収縮力の増加で起きる
次いで「他の人が使う携帯電話」48 人(64.0%)だった(26 ページ付表 2 参照)。
また、「発症する原因になったと思う電磁波発生源」でも、携帯電話基地局がトップになった(24 人、32.0%)(27 ページ付表 3 参照)。携帯電話とその基地局の増加による影響の大きさが伺える。
前述したように、ベルン大学(スイス)の調査でも、症状に関わると考えられる電磁波発生源でも、携帯電話基地局が最も多かった(5ページ参照)。
68 歳女性は「05 年 5 月、畑から 150m 先に携帯電話基地局が設置され、07年秋から体調が悪化した。畑へ行くと症状が出るので、今では行かない」という。
37 歳女性は、「職場に基地局が3 基、200m 先に 2 基あり、無線LAN も設置されているので復職が困難。外出も難しく、人に会えない」と答えている。
56 歳女性は発症の原因として自宅のそばに設置された携帯電話基地局をあげ、「周りに理解してもらうのが難しい、圏外になる場所が見つからず、安らげる場所がない」と述べている。
発症の原因として「大学のパソコン・ルームと、大学構内の PHSアンテナ」をあげた 32 歳女性は、卒業後も「電磁波の少ない職場が見つからない」ため、就職できずにいる。
具合が悪くなったことがある電磁波発生源には、パソコン、送電線、テレビ、蛍光灯など、身の回りにあるあらゆる電磁波発生源があげられた。紫外線(日光)に反応すると答えた人も 10 人(13.3%)いた。発症者は、超低周波電磁波から
紫外線まで幅広い周波数帯の電磁波に反応し、生活環境にあるさまざまな電磁波によって体調を崩していることが伺える。
MRI(磁気共鳴映像法)やレントゲン、CT スキャン、超音波検査(エコー)など医療機器でも症状が起きていた。
回答者の中には「発症後、これらの医療機器を避けている」という声もあった。
また、発症原因として MRI をあげた人は 4 人、レントゲンをあげた人は 3 人いた。
61 歳の女性は、発症の原因になったと思う電磁波発生源として、2003 年に自宅側に携帯電話基地局が建ち、05 年にデジタル式コードレス電話を購入したこ
とを挙げ、「06 年 1 月に、風邪をこじらせてレントゲンを撮って症状が現れ、回復まで 3 週間かかった」と言っている。
68 歳女性(看護士)は、「勤務で放射線科にいた時(90 年ごろ)、MRI が導入され、週 2~3 日はMRI 室で勤務していた。圧迫感はあったが、当時は今ほど体調不良につながっていなかった」と答えている。
44 歳女性は、地上デジタル放送の試験電波が放送された日に倒れて救急車で搬送され、「病院で MRI 検査を受けた直後に発症したが、地デジの影響もあるかもしれない」と答えている。
IH 調理器(クッキングヒーター)を発症の原因と考えている人は 5 人いた。
62 歳女性は「IH 調理器を使用して 6 日目に強烈なショックを受け、その後電気器具や電気配線の電磁波に反応するようになった」「スーパーなどは大型冷蔵庫や蛍光灯が多く入れない。
どこで体調を崩すかわからないので、家族以外とは外出できない」と記している。
40 歳女性は、IH 調理器を設置して体調を崩し、「リフォームしたばかりの台所から IH 調理器を撤去した」。彼女は生理不順にも悩まされていたが、「IH 調理器をやめたら妊娠した」と答えている。
化学物質過敏症を発症した 48 歳の女性は、「家を新築した際に IH 調理器を設置したこと、約 350m 先に携帯電話基地局があったこと」を発症の原因と考えている。
化学物質過敏症を発症した 42 歳女性は「台所で換気扇をまわすと屋外から農薬が入ってくるため、IH 調理器を使っていた」のが原因だと考えている。
このように、化学物質過敏症を発症後に電磁波過敏症になった人もいるので、化学物質だけでなく電磁波への対策も行う必要がある。
たとえば、化学物質過敏症を発症した後に電磁波過敏症を発症した 48 歳女性は、発症の原因を「(化学物質を除去するための)大型空気清浄機を近くで稼働したことと、新幹線での通院で急激に悪化したこと」と述べている。
電磁波のリスクや電磁波発生源から離れることを知っていれば、併発を防げたかもしれない。
最近、自然エネルギーの利用促進を目指し、太陽光発電が推奨されているが,太陽光発電設備で具合が悪くなったことがある人は 3 人おり、発症の原因として同設備をあげている人は 2 人いた。
50 代男性は「もともと化学物質過敏症だったが、職場で太陽光発電を設置されて電磁波過敏症になった」と述べ、40 代女性は「自宅に設置した太陽光発電設備」が発症の原因と考えている。
普及すれば被害の増加につながる可能性もあり、太陽光発電設備から発生しているすべての電磁波とそれらの被曝影響について調べ、安全性を確認する必要がある。