生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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TFSP-WIAの所見
ネオニコチノイド系殺虫剤は1990年代初期に導入され、今日では世界で最も広範に使用されている。

中枢神経系のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)に結合し、低濃度で神経を刺激し、濃度が上昇すると受容体遮断や麻痺、および死をもたらす神経毒である。

フィプロニルは、別系統の広範に使用されている浸透性の殺虫剤だが、前者の性質を多く共有し、ほぼ同時期に導入されたので、この化合物も本稿に加える。

ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルはほとんどの節足動物に極めて高い毒性を示し、脊椎動物への毒性は低い(ただしフィプロニルは魚類とある種の鳥類には高い急性毒性を示す)。

両者とも比較的水に溶けやすく、植物の根や葉から容易に取り込まれるため、葉面散布や土壌施用、種子コーティングなどさまざまな方法で施用できる。

これらの化学物質の主な使用法は、使用された土地面積からみると種子コーティングである。種子コーティングの場合、有効成分が播種前の種子に対して予防的に用いられ、成長する植物に吸収されて組織全体に広がり、作物全体を保護する(Simon-­‐‑Delso et al. 2014)。
ネオニコチノイド系殺虫剤およびフィプロニルの環境
への影響に関し、一連の懸念が浮上している(Bonmatin et
al. 2014; Pisa et al. 2014; Gibbons et al. 2014; Chagnon et al.
2014; Furlan and Kreutzweiser 2014):

ネオニコチノイド系殺虫剤は土壌中に何年間も残留するため、定期的に用いると環境中濃度の上昇をもたらすことが明らかとなった。

このことは、土壌中の無脊椎動物に多大な影響を及ぼすと考えられる。土壌中の無脊椎動物は、群となって土壌構造を維持し、栄養循環に決定的な役割を果たす。

水溶性であるため、ネオニコチノイド系殺虫剤は池や溝、小川などに浸出し、地下水を汚染する。

海洋環境の汚染も観察されているが、まだ組織的な観測は行われていない。

水生昆虫のLC50 を超える濃度が水路でしばしば認められ、耕地や隣接する溝の地表水では更に高い濃度が認められている。

ネオニコチノイド系殺虫剤の濃度の高い水路では、昆虫の個体数や多様性が激減している。

農地に処理種子を蒔く際に上がる土ぼこりは飛翔昆虫にとって致死的で、ミツバチ群の急激な大規模な喪失を引き起こしている。葉面散布に用いると、飛散した殺虫剤は非標的昆虫に対して強い毒性を持つと考えられる。

畑の周囲や生け垣、あるいは汚染水路の近くで成長する作物以外の植物は、農地に種子をまく際に上がる土ぼこりや散布による飛散、あるいは汚染水によってネオニコチノイド系殺虫剤に汚染される可能性がある。

このことは農地に生息するさまざまな非標的草食性無脊椎動物に多大な影響を与える可能性がある。

ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルは、トウモロコシやアブラナ、ヒマワリなどの処理作物、および農地に生息する野草の花蜜や花粉に認められる。

又、多くの作物からにじみ出た溢液からも、さらに高い濃度で検出されている。

ハチでは、このような汚染食物の摂取により、学習および移動能力の減退、致死率の上昇、免疫系不全による罹病率の上昇、繁殖力の低下が生じ、マルハナバチでは、群レベルで影響を受ける明らかな証拠がある。

他の花粉媒介者についての研究はない。農場のハチは同時に多数の異なる農薬に曝露しており、中には相乗的に作用するものもある。

このような非標的昆虫の複数の農薬への長期曝露の影響は、農薬取締のための試験では取り組まれておらず、ほとんど理解されていない。

脊椎動物は節足動物より被害を受けにくいが、種子食の鳥類や哺乳類では少数の処理種子の摂取により直ちに死に至る可能性が生じる。

なぜなら、このような鳥にとってはこぼれた種子をほんの数個食べただけで致死量に達するからである。低用量で現れる症状は、嗜眠、生殖能力の低下、免疫機能障害などである。

さらに、食糧となる無脊椎動物が減少すると、節足動物から脊椎動物まで広範囲の捕食性の動物に間接的な影響を及ぼすと考えられる。