生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書3 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

ネオニコチノイド研究会代表 平 久美子
浸透性殺虫剤に関する世界的な統合評価書
昆虫相の世界的な崩壊:浸透性殺虫剤が果たした役割の探求
ノートルダム=ド=ロンドルの願い欧州における昆虫、特に節足動物全般の壊滅的な減少に関する昆虫学者の国際的な調査を受け、2009年7月にフランス、エロー県の小村ノートルダム=ド=ロンドル(NotreDame de Londres)に昆虫学者と鳥類学者が集まった。
彼らは、自然環境の全般的な劣化に伴い、1950年代以降に昆虫がだんだんと減少したことに注目した。とりわけ、自然生息環境の消失と殺虫剤および除草剤の大量使用を伴う農業の集約化、道路や車両交通のさまざまな発達、および大陸全体に及ぶ夜間の光害や窒素堆積などがこの減少の根本的な原因として確認された。
同時に1990年から2000年にかけての10年間に昆虫生息数がより急激に減少し始め、更に状況が悪化したことも確認された。

これは最初に西欧で始まり東欧と南欧に及び、今日では、フロントガラスに当たって飛び散ったり、ラジエーターで押しつぶされたりする昆虫の数が明らかに少なくなり、とくに蝶の減少や世界的なミツバチの異変について最も多くの報告がなされている。

これらの現象は今や一般的となった欧州の昆虫相の崩壊を反映したものと結論された。
更に注目されたのは、さまざまな種・属・科の節足動物の大規模な衰退と、ツバメやムクドリなどこれまで“どこにでもいる”と考えられてきた食虫鳥類の著しい減少が同時期に起こったことである。
この分野における既存の研究や多くの観察報告、そして圧倒的な状況証拠に基づき学者らは、昆虫や鳥類の減少に、1990年代初期にもたらされた新世代の殺虫剤で、残留性と浸透性をもつ神経毒であるネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルが、少なくとも部分的に関与しているのではないかという仮説に到達した。
これをうけて発表されたのが、ノートルダム=ド=ロンドルの願いで、ほぼ半世紀前に出版されたレイチェル・ルイーズ・カーソン著『沈黙の春』を引用し「沈黙の春を繰り返すな」という見出しがつけられ、以下のように記されている:
ミツバチの消失は、昆虫相の崩壊という、今や西欧のどこにでも見られる現象のもっとも顕著な一例にすぎない。

最近見られる昆虫生息数の凄まじい減少は、生物多様性の大規模な喪失と、それに引き続く劇的な自然生態系や人間をとりまく環境、公衆衛生の変化の前触れである。集約農業や園芸で組織的に使用される残留性で神経毒の殺虫剤(イミダクロプリドやチアメトキサムなどのネオニコチノイド系殺虫剤、フィプロニルなどのフェニルピラゾール系殺虫剤)が、今や目に見えない有毒な靄となって地上や水中、空気中に広がり、1990年代中期以降に昆虫学者が観察した昆虫生息数の減少と、それに続いて鳥類学者が観察した食虫鳥類や他の鳥類の減少の主な原因となっていると思われる。
それゆえ署名人は警鐘を鳴らし、“予防原則”をなお一層厳格に順守することを願う。

“予防原則”とは、欧州委員会指令91/414に銘記され、2005年にユネスコによって定義された「人間の活動が、科学的には妥当だが不確かで倫理的に受け入れがたい危険につながるとき、その危険を避け軽減させるための行動をとること」である。
浸透性殺虫剤タスクフォース(TFSP)
これに応えて、中立的立場の科学者による浸透性殺虫剤に関する国際的かつ科学的なタスクフォースが運営委員会により設立された。

最初の会員はMaarten Bijleveld vanLexmond(スイス)、Pierre Goeldlin de Tiefenau (スイス)、François Ramade (仏)、Jeroen van der Sluijs (オランダ)である。年と共に会員数は増え、今日では4大陸で15国籍を数えるに至った。浸透性殺虫剤タスクフォース(TFSP)は、専門家の集団として、生態系管理委員会および種の保全委員会という2つのIUCN(国際自然保護連盟)の委員会に助言を行う。

その取り組みは、生物多様性条約(CBD)に基づく科学技術助言補助機関によって認知され、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の中で、授粉昆虫、授粉および食糧生産のための一括審議課題評価に関連して注目された。
世界的な統合評価書(WIA)を手掛けるに当たり、TFSPは、4年がかりで過去20年間に発表された800を超す査読審査された科学論文を調査した。

TFSPに結集した専門知識の分野は、化学、物理学、生物学、昆虫学、農学、動物学、リスク評価、(環境)毒性学など多角的広範囲にわたり、これにより、まさに学際的な証拠の評価が可能となり、浸透性殺虫剤の世界的な使用に伴い個々の生物や生態系、生態系プロセス、生態系サービスに派生する様々な影響への理解を可能にした。