カドミウム、ヨーネ菌…食品安全のダブルスタンダード2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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それどころか、TPP関連国会でも取り上げられなかった、食の問題がある。

 その一つが、カドミウム米の問題だ。

 カドミウムは、がんや腎機能障害を引き起こすとされ、日本では四大公害病の一つ、イタイイタイ病の原因物質としても知られる。

 日本の隣国、中国で基準を超えるカドミウム米の流通が問題化したのが4年前の2013年のことだった。

ちょうど当時、上海市内を流れる川に大量の豚の死骸が流れ着いた映像などが配信され、日本でも中国から輸入される“毒食”が盛んに報じられていた時期だ。

 中国南部の広東省広州市で行ったコメの検査で、半分近くがカドミウムの許容限度を超えていたことが発覚したのだ。

 中国のカドミウムの安全基準値は、1キロあたり0・2ミリグラム。

 広州市と周辺の地域に流通したコメからは、この基準値を超える0・21~0・4ミリグラムのカドミウムが検出されたことを、食品薬品監督管理局が発表して、市民が大騒ぎになった。

 この“毒米”は、いずれも広東省の隣の湖南省で収穫されたものだった。

 前号でも記したように、中国環境保護省がこの翌年の14年4月に公表したところによると、同省の調査で中国国土の土壌の約16%に何らかの汚染がある。

そのうち農耕地に限っては、19・3%が汚染され、その大半は、基準値を超える重金属や化学廃棄物が検出されたものだった。

 銅や鉛など非鉄金属の生産でも国内上位5位にランクされている湖南省は、稲耕作地の実に4分の3以上が汚染されていたという。

 それだけでも中国の汚染の深刻さと毒食の氾濫を知る思いだ。

ところが、基準を超えたこの“毒米”が、日本には平然と輸入され、当たり前に販売することができる。

 実は、日本の食品衛生法によるコメのカドミウムの含有許容量は、1キロあたり0・4ミリグラムと、中国の安全基準の2倍も緩いのだ。

 従って、広州市で“毒米”として販売が禁止されたコメも、日本では安全なコメとして流通できることになる。

「日本の食品衛生法の基準値内に適合していれば、輸入は可能となります。

コメのカドミウムの検疫基準は、国内と同じ0・4ミリグラムです」

 当時の厚生労働省の食品安全部監視安全課の見解だ。

 カドミウム基準が0・4ミリグラムというのは、日本だけである。

 韓国、EU、米国(注3)も中国と同じ0・2ミリグラム。タイ、オーストラリア、ニュージーランドは、0・1ミリグラムと、もっと厳しい。

 それでは国際基準はどうかといえば、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が共同で組織し、食品の国際規格を設定するコーデックス委員会では1キロあたり0・4ミリグラムと日本と同じだ。

 ただし、これは日本がコーデックス委員会に働きかけたものだ。

当初は0・2ミリグラムと提案されたものを、過去の鉱山開発による日本のカドミウムの土壌汚染の実態から、日本が0・4ミリグラムとするように反論して成り立ったものなのだ。

クローン病の原因はヨーネ菌か
 そもそも、食品衛生法のカドミウム基準が0・4ミリグラムになったのも、東日本大震災直前の11年2月から。それまでは1・0ミリグラムに定められていた。

 この実情が意味するところは深刻だ。

 安倍内閣は「攻めの農業」を提唱し、日本の農産物の海外輸出を促進しようとしている。

だが、そこで世界に誇る日本の美味(おい)しいコメを輸出しようにも、受け入れ先の安全基準に見合わなければ、輸入は禁止される。

 逆に、諸外国で“毒米”とされ、流通が禁じられたものであっても、日本へは輸入が可能になる。売れない毒米は日本へ売る。

それを日本の国民が食べる。日本は毒食の消費地となる。そんな愚かな話もあるまい。

 それともう一つ、世界と日本の酪農環境の驚くべき違いがある。

 日本の家畜伝染病予防法に指定された法定伝染病に「ヨーネ病」というものがある。

 主に牛の病気で、子牛の時に母乳や排泄(はいせつ)物から菌が感染し、3~5年の潜伏期間を経て発症する。乳が出なくなり、水性の下痢が繰り返され、痩せ衰えて死に至る。

日本では5年に1度の割合で全頭が検査される。

感染が見つかると殺処分され、食品衛生法によって、乳製品はおろか、食肉として市場に回してはならないことになっている。

牛舎も全体が消毒される。

その厳しさで、日本の農場の約2%、牛で0・2%にしかヨーネ菌は確認されない。

 ところが、米国では農場全体の68・1%が、500頭以上の牛を抱える大農場に限っては、95・1%が、このヨーネ菌に曝(さら)されていることが、米農務省(USDA)の調査で明らかになっている。(注4)

「全米においては、50頭に1頭の割合で牛がヨーネ菌に感染しているはずです」

 かつて私が当地で取材した国際ヨーネ病学会元会長でウィスコンシン州立大学のミッシェル・T・コリンズ博士がそう語っている。

「しかも、マクドナルドで使用されるミンチ肉の30%は乳が出なくなった牛。

おそらくヨーネ病発症直前の牛の可能性が高い。感染した牛の肉組織や血液からもヨーネ菌は見つかっています」

 では、この違いの何が問題なのか。

こちらは人間の話だが、日本の医療費給付の対象となる指定難病に「クローン病」というものがある。炎症性腸疾患(IBD)に分類されるもので、口から肛門までの消化管の全域のどこにでも炎症や潰瘍を引き起こし、主には腹痛や下痢といった症状から、発熱、体重減少、不定愁訴までが報告され、特に20代前半の若者に多く、これといった治療法もない。一度罹(かか)ると治らない病気だ。

「腸の調子が悪いから、ずっと痛みを感じているし、食事も流動食しか摂(と)れない。病気に人生は拘束されるし、やりたいこともできなくなる」(症例に詳しい支援者)

 日本では1950年代までクローン病の患者は見つかっていなかった。それが60年代から症例が報告されるようになり、現在では、約4万人が厚生労働省に難病登録されている。

 この人間のクローン病と、家畜のヨーネ病の病変がそっくりなのだ。

「そもそも最初にスコットランドでクローン病患者が見つかった時は、その症状からヨーネ病と診断されていました」(コリンズ博士)

 しかもクローン病の患部から、牛ヨーネ病と同様のDNAが検出されていることなどから、二つは同じ病気で、ヨーネ菌によって、人間のクローン病が引き起こされる、とする研究が畜産獣医学の分野で世界中から発表されてきたのだ。

 それどころか、安倍首相が患っているとされる潰瘍性大腸炎や、通勤途中にも急に下痢性の便意をもよおす過敏性腸症候群(IBS)、2型糖尿病の原因説まで、研究報告が相次ぐ。

 ところが、家畜伝染病に指定されながらヨーネ菌の検疫体制はなく、そのまま食肉や乳加工製品となって日本国内に入ってきている。

 しかも、研究が進むにつれて、ヨーネ菌は熱処理された死菌であっても、病状を引き起こすことがわかってきた。

牛乳パックに「ホルモン剤未使用」
 そうなると恐ろしいのは、乳児の粉ミルクだ。

日本の大手乳業メーカーの粉ミルクには、北米をはじめ、オセアニアや欧州から輸入された原料が使われている。乳児期から体内にヨーネ菌を蓄積する可能性が高い。

「豪州では日本のように定期的に検査はされず、ニュージーランドでは何もされていません」(専門家)

 仮にTPPが発効すると、ニュージーランドから乳製品が大量に流入するはずだ。

世界最大の集乳量の乳業メーカー「フォンテラ社」が同国最大の企業であり、日本への乳製品の増加が見込まれていた。

 しかも、米国では「rBST」「ソマトトロピン」と呼ばれる、牛の乳生産量を増やすための合成ホルモン剤の使用が認められている。

これも、EUでは使用も輸入も禁止しているのに加え、米国国内のスーパーマーケットで販売されている牛乳パックには、USDA認定の「ホルモン剤未使用」の表記があり、消費者が選択できるようになっている。おそらく、トランプ新大統領のようなセレブ一家は、ホルモン剤使用のミルクなど口にしないだろう。

 ところが、日本には使用実績の記載もなく乳製品が入ってくる。

 家畜伝染病対策がまったく異なる外国から、大量の汚染された食品衛生法違反の食品が流入しているのだ。

 そしてついに、医学界からも、ヨーネ菌の人体への重大な健康被害について指摘されるようになった。

 順天堂大学が、「多発性硬化症の発症にはヨーネ菌が関与する可能性 ~死菌の経口摂取がリスクになる~」とする研究結果を発表したのは、昨年9月のことだった。

文字通り、ヨーネ菌が多発性硬化症(注5)を発症させることを指摘するもので、世界的な科学誌『Scientific reports』にも論文が掲載されたのだ。

 もはやこのような食の安全における“治外法権”を放置しておく余地があるのだろうか。国権の最高機関であるはずの国会で議論されても、何も状況が変わらないのは、やはり食料自給率39%の日本の弱みを米国に握られている食の植民地であるからなのだろうか。

所詮は「意思表示」で終わるのだろうか。

(作家・ジャーナリスト 青沼陽一郎)