https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/42.1/0/42.1_O-6/_article/-char/ja/
微小粒子状物質PM2.5による免疫修飾作用の評価
*吉田 成一1), 三浦 早織1), 賀 淼2), 市瀬 孝道1)
1) 大分県立看護科学大学看護学部生体反応学研究室 2) 中国医科大学
公開日 20150803
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抄録
【背景】粒子状物質は粒径が小さいほど細気管支や肺胞まで達しやすいため、粒径の小さいPM2.5による健康影響が懸念されている。
また、粒子状物質は生物由来成分のリポ多糖 (LPS)やβ-グルカンの他、有機化学物質 (タール成分)など多くの物質から構成されている。
しかし、粒子状物質による免疫修飾作用にどの成分が寄与しているかについての知見は限られている。
そこで本研究では、粒子状物質の免疫修飾作用の簡易評価法を確立し、PM2.5による影響を評価するとともに粒径や構成成分による影響の解明を試みた。
【方法】マウス由来マクロファージ様細胞株 (RAW264.7)に濃縮大気粉塵 (30μg/ml)を処理し、所定時間後 (1、3、8、24時間)に細胞を回収して、定量的RT-PCR法を用い、標的遺伝子の発現変動を指標とした評価系を確立した。
確立した評価系を用いて粒径の異なる粒子 (PM2.5、PM10、およびPM10より粒径の大きい粒子 (>PM10) :各30μg/ml)や、構成成分 (LPS、β-グルカン、タール、加熱処理DEP (H-DEP))による21種の遺伝子発現の解析を行い、各種粒子や構成成分による免疫修飾作用への影響を評価した。
【結果及び考察】粒子の処理時間の検討を行ったところ、3時間処理時に発現変動が最大となった遺伝子は21遺伝子中11遺伝子であったため、処理時間は3時間が適切であると判断した。
確立した評価系をPM2.5に適用したところ、PM2.5はTNFなど炎症性サイトカイン・ケモカイン mRNAの発現誘導活性を示し、免疫修飾作用を有することが明らかにされた。
しかし、PM10、>PM10と比較するとTNF、IL-1β mRNAの誘導活性は低かった。
さらに粒子状物質構成成分によるTNF、IL-1β mRNA発現量を解析したところ、生物由来成分 (LPS、β-グルカン)で有意に増加し、タールやH-DEPでは発現変動は認められなかった。
これらのことから、PM2.5は免疫修飾作用を有するが、その作用は粒径の大きい粒子より小さいこと、また、生物由来の成分が免疫修飾作用に関与することが示唆された。