https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/42.1/0/42.1_P-250/_article/-char/ja/
ゼブラフィッシュを用いた神経毒性評価の試み
*宮脇 出1), 吉沢 佑基1), 小関 直輝1), 藤井 雄太1), 出口 二郎1), 船橋 斉1)
1) 大日本住友製薬(株) 前臨床研究所
公開日 20150803
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抄録
【目的】医薬品や化学物質によって引き起こされる神経障害は人において非常に重篤な有害事象であるにも関わらず、通常はげっ歯類や非げっ歯類を用いた一般毒性試験にて初めて検出されうる毒性である。
我々は医薬品開発の探索初期から本毒性ポテンシャルを評価することを目的に、ゼブラフィッシュを用いた神経毒性評価の可能性についてアクリルアミドを用いて検討を行ったので、以下の通り報告する。
【方法】稚魚を用いて行った検討ではTL系ゼブラフィッシュより常法に従って受精卵を採取し、採卵翌日から144時間、終濃度で1及び2 mMとなるようにアクリルアミドを曝露させた。評価は一般状態(遊泳姿勢)を観察するとともに病理組織学的検査を実施した。加えて同系統の成魚を用いた同様の検討も行った。
【結果・考察】稚魚では1及び2mMいずれの濃度でも死亡は認められず、一般状態変化として傾き姿勢(傾泳)が1mMでは5日目、2mMでは4日目から観察された。
さらに2mMではより顕著な一般状態変化として平行失調や旋回遊泳が観察でき、病理組織では脊髄灰白質のアポトーシスが認められた。
一方、成魚では2mM濃度で3日目に死亡し、生存した0.5 mM以上の動物では興奮、1mM で麻痺性の異常遊泳が確認された。
これらの結果は既に報告のある哺乳類における後肢麻痺や病理組織学的な脊髄変性といった所見と一致しており、ゼブラフィッシュの神経毒性評価への応用が可能であることを示唆していた。