・https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/93/10/93_10_2153/_pdf
・アレルギー疾患:診断への新たなアプローチ 化学物質過敏症トピックス<br />
IV.診断上留意すべき病態 3.化学物質過敏症
岡田 千春 宗田 良
要 旨<br /> 化学物質過敏症は微量な化学物質に反応して多彩な症状を呈する疾患群と考えられているが,病態も不明な部分が多く診断基準が確立されたとは書い難い.そこで,診断目的で環境クリーンルームにおいて微量の化学物質の負荷テストを行い61.1%の陽性症例を認めた.また,客観的指標として負荷テスト前後のSuperoxide desmutase(SOD)活性の変化や脳内酸素状態の変化が有用である可能性がある.
〔日内会誌 93:2153~2158,2004〕
Key words:化学物質,負荷テスト,環境クリーンルーム
はじめに
化学物質過敏症は,健常人なら問題にならないような微量の化学物質に反癒して多臓器にわたる多彩な症状を呈する症例が存在することを;Cullen1)らが1980年代後半に報告しMdtipleChemical Sensitivity(MCS)あるいはChemical Sensidvity(CS)として知られるようになった.また,日本においては1990年代後半より石川2)らが化学物質過敏症として診療を開始し認知されるようになった。
しかし,現在でも病態は不明の部分が多く,診断基準が曖昧で疾患としての存在にも疑問がなげかけられたままである.海外でも状況はさほど変わりがない.環境中の化学物質がこのような健康障害を引き起こし,慢性暴露がさらに個体の病態を悪化させるとしてMCSとの呼称を提唱しているグループと,個体側の環境中の化学物質などに対する耐性低下に問題があるとしldiopathic Environmental Intolerance(IEI)との呼称を提唱するグループもありまだ統一した見解に至っていない.しかし,この章では混乱を避ける都合上メディア等でも使用され一般に普及している化学物質過敏症(MCS)の呼称を使用する.また,化学物質過敏症に非常に類似した概念としてシックハウス症候群がありさらなる混乱の原因となっている.シックハウス症候群は日本において作り出された造語で海外では1980年代後半より報告されているsick building syndromeと概念が共通するものであるが,広義には環境中の種々の要園に反応して健康障害を呈する状態と定義され,原因が化学物質に限定されない点,新築の住居・ビルディングなど環境中に原因物質が高濃度に存在し,その環境を脱すると症状が消失する点などが化学物質過敏症と異なる.しかし,シックハウス症候群のなかにも微量の化学物質に過敏性を示し化学物質過敏症とオーバーラップするグループも存在すると考えられる.
おかだ ちはる:(独)国立病院機構南岡山医療センター
/内科そうだ りよう:(独)国立病院機構南岡田医療センター;(99)
日本内科学会雑誌 第93巻 第10号・平成16年10月10日