・https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/41.1/0/41.1_MS1-5/_article/-char/ja/
カニクイザルを用いた化学物質の発達神経毒性評価
*根岸 隆之1)
1) 名城大学薬学部薬学科生理学研究室
公開日 20140826
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抄録
近年、環境を汚染する化学物質がこどもの脳や行動の発達に与える影響に関心が集まっている。脳は胎生期・新生仔期にその器質的発達の大半を完了するため、化学物質曝露による影響は単に曝露時だけでなくその後に学習記憶障害や行動異常といった非可逆的な脳機能異常として現れる可能性が危惧されるからである。
これまでにマウス・ラットを用いた発達神経毒性研究からビスフェノールA(BPA)等いくつかの化学物質についてその発達期、特に胎生期曝露が脳の器質的発達および生後の脳機能に影響を与え得ることが報告されている。
ここではカニクイザルを用いた化学物質の発達神経毒性評価を2例紹介したい。
一つ目として胎生期BPA曝露が生後の行動発達に与える影響を評価した。妊娠カニクイザルに皮下ポンプによりBPA(10 μg/kg/day)を曝露し、その仔ザルについて新生仔期には飼育ケージ内での母子行動を観察し、生後1歳および2歳時に2個体を一つのケージに入れることによって生じる社会的行動の観察(出合わせ試験)を行いBPA曝露の影響を評価した。
母子行動および出合わせ試験においてBPA曝露オス仔ザルが見せる行動パターンは対照群のオス仔ザルのそれと有意に異なっており、対照群メス仔ザルのそれと似ていた。
また対照群仔ザルでみられる行動パターンの性差がBPA曝露群仔ザルでは消失した。
この結果は胎生期BPA曝露によるオスカニクイザルの行動学的脱雄性化を示唆している。
次に脳発達に重要な役割を果たす甲状腺ホルモンの新生仔期における欠乏がカニクイザル脳発達に与える影響を分子生物学的および組織学的に評価した。
メチマゾール誘発甲状腺ホルモン欠乏カニクイザルにおいて抑制性神経伝達システム発達の異常が確認された。
カニクイザルは化学物質の発達神経毒性評価に利用し得る動物であり、ヒトにおけるリスク評価に有用な存在であると考えられる。
runより:ビスフェノールAはカナダが認めた世界唯一の環境ホルモンです。
実は他には無いんですよね(´・ω・`)