急性一酸化炭素中毒の疫学と臨床的特徴 | 化学物質過敏症 runのブログ

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急性一酸化炭素中毒の疫学と臨床的特徴
*伊関 憲1)

1) 福島県立医科大学地域救急医療支援講座

公開日 20160808 
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抄録

一酸化炭素(CO)は有機物の不完全燃焼で発生する有毒ガスである。
急性CO中毒は最も死亡数の多い中毒であり、日本では約5000名が死亡していると推定されている。
その原因として火災や労働災害などの不慮の事故と自殺の大きく2つに分かれている。
また米国では災害による停電で、発電機や炭を用いることにより、disaster-related CO poisoningが発生することが知られている。
日本でも同様の機序で東日本大震災でCO中毒が被災地で多発した。
CO中毒の主な病態は組織の低酸素である。
COはHbに対して酸素の250倍も高い親和性があり、結合してCarboxyhemoglobin(COHb)を生成する。

急性期には血中COHb濃度により種々の症状を呈する。
血中COHb濃度が10%程度では頭痛をおこし、50%以上では意識障害を起こし死亡する。
また、急性期症状が改善した後に、数週間経ってから精神神経症状を来すことがあり、遅発性脳症(delayed neuropsychiatric sequelae; DNS)とよばれる。
成人では見当識障害、歩行障害、集中力低下、自発性低下、記銘力障害、失行、失認やパーキンソン様症状などが多い。
DNSは脳の深部白質の脱髄が原因と考えられている。
COにより多核白血球が活性化され、脂質の過酸化物がミエリン塩基性タンパクを化学的に変化させ、自己免疫反応によりミエリン鞘が壊死することが原因とも言われている。
このため細胞壊死に10~14日経過して、DNSが遅れて出現すると考えられている。
臨床においては急性期症状だけではなく、このDNSについても診断しなければならない。
このDNSの診断には画像診断、特にMRIが有用である。
中毒を発症して4,5日以降にMRIにて淡蒼球および白質病変を伴う症例は、DNSを来す可能性が高い。
淡蒼球の変化は一過性意識障害の原因として、白質の変化がDNSを表しているものと考えられている。
CO中毒、特にDNSの発症機序は未だ不明な点が多く、これらの解明がCO中毒の治療の質の向上につながる。