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法医学実務と一酸化炭素中毒: 一酸化炭素は敵か?味方か?
*吉田 謙一1)
1) 東京医科大学法医学分野
公開日 20160808
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抄録
法医学実務上、CO中毒は、火災、ガス器具、下水道工事等の事故、車内練炭燃焼による自殺等に多い。
その毒性は、酸素O2を凌駕するHemoglobin親和性と組織O2解離抑制による組織低酸素、mitochondria呼吸鎖酵素阻害によるATP産生抑制、中枢活性酸素増生等によると考えられている。
火災被害者の血中CO濃度が低い場合、CO中毒、高齢・心疾患の寄与度が火元の責任、保険の支払等に影響を与える。
また、既往症のある人が死亡した時、CO発生状況や偽装に気づかないと、事故や殺人を見逃す。
COは、大気汚染や喫煙が、心血管系リスクを増す要因の一つと考えられている。
また、COは、ヘム蛋白をHemeoxygenase (HO)が代謝する過程で産生され、抗酸化作用、抗炎症作用、細胞死抑制作用を発揮する。
恒常発現型のHO-2由来のCOが血管を拡張させるのに対して、誘導型HO-1由来のCOは、脳神経・心筋細胞等が、虚血、酸化ストレス等によって細胞死や機能低下に陥るのを抑える。
私は、CO中毒による脳基底核病変が活性酸素増生による細胞死(apoptosis, necrosisの混合)であることを見出した。
また、虚血が心筋細胞のCa2+取込み増加よりnecrosisを促すが、これをCO曝露が抑制することを見出した。
いっぽう、CO曝露によるAkt活性化が、心筋細胞apoptosisを抑制することを見出した。
さらに、冠動脈結紮による虚血再灌流ラットの心筋梗塞は、CO吸入によるAkt. p38MAP kinase活性化により抑制された。
ところが、高脂血症ラットを、睡眠時無呼吸発作を再現する間歇低酸素に暴露した時、肝臓Kuppfer細胞に増えるHO-1由来の遊離鉄は、Fenton反応により脂質過酸化を促し、肝障害に寄与することを見出した。
このように、COは、細胞、刺激、濃度、時間等、多様な要因において、善悪両方の作用に寄与する。
runより:一酸化炭素は善悪両方の作用に寄与するので 一酸化炭素は身体に必須の物質でもある。
二酸化炭素と 一酸化炭素感じる患者さんにはまず血中酸素濃度を調べてほしいのはこういう所にあります。
呼吸器系の症状で酸欠気味になりがちで一酸化炭素、二酸化炭素の濃度が高い時苦しかったので脳が敵認定した場合も考えられます、この場合はまず呼吸器の改善が必要で他の症状と合わせて考えてみる事が大事だと思います。