2 :低濃度の曝露でも症状は悪化
Q:研究は主に、どのようにして進めていくのでしょうか。
井上: まず動物疾患モデルをつくり、評価したい化学物質を一定期間投与した後、その化学物質によってどの程度疾患が悪化したのかを評価します。また、化学物質の影響を早く、簡単、適正に評価(スクリーニング)するために、in vivo(生体内)試験の新たな手法の開発も、研究と並行して行いました(図 2)。
Q:「動物疾患モデルをつくり」とおっしゃいましたが、これはどういう意味なのですか。
井上: 人間の疾患に類似する症状を示す実験動物を作製するということです。
アレルギー性喘息に関するものであればアレルギー性喘息モデル、アトピー性皮膚炎に関するものであればアトピー性皮膚炎モデルをつくります。
モデルに使う動物は、疾患によって異なります。
たとえば花粉症であればモルモット、アレルギー性喘息やアトピー性皮膚炎であればマウスを主に使います。
私たちの研究では、アレルギー性喘息とアトピー性皮サイトカインの濃度を読み取るプレートリーダー。
円内はサイトアレルギー性喘息で化学物質の影響を評価する場合、マウスが持っていない異種タンパク質(卵白アルブミン)をアレルゲンとして投与し、短期間で意図的にアレルギー性喘息と似た症状を発症させます。
また、マウスには DEPや PQ、NQ と評価したい物質を気管から投与し、のべ 1カ月半にわたり評価したい物質を曝露します。
一方、アトピー性皮膚炎での影響評価は、NC/Nga マウスの耳(耳介部)にダニアレルゲンを生理食塩水に溶解して注射、アトピー性皮膚炎に似た症状を短期間で発症させ、DEHP を腹腔内に投与します。
1回の実験期間は 3 週間程度と動物実験として投与は比較的短期間です。
膚炎の動物モデルにマウスを使っています。
Q:それから、研究と並行して in vivo 試験の新たな手法を開発されたそうですが、その理由は何ですか。
柳澤: 今回は DEP や PQ、NQ、DEHP を評価しましたが、今後、他の多くの化学物質を評価するには、従来からある動物試験方法では時間や感度などの面で問題があったからです。
今回開発した in vivo 試験の新たな手法は、3 週間で影響を評価することができ、それまでの動物試験に比べてはるかに短期間で評価できました。
この成果は、環境関連の学術雑誌であるアメリカの“Environmental Health Perspectives”誌にも掲載されました。