・アレルギー性疾患への環境化学物質の影響
近年、アトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息、さらには花症やアレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど、アレルギー性疾患が小児を中心に急増しています。
人間がつくり出した化学物質がその原因であったり、症状を悪化させる要因の1つではないかと危惧されています。
アレルギー性疾患に対し適切かつ迅速な対策を打てるようにするためには、疾患が増加した要因の究明が必要です。
そのため国立環境研究所では、「アレルギー反応を指標とした化学物質のリスク評価と毒性メカニズムの解明に関する研究―化学物質のヒトへの新たなリスクの提言と激増するアトピー性疾患の抑圧に向けて―」という特別研究を実施しています。
まだ全体像の解明にまでは至っていませんが、これまでの研究の結果、低濃度の曝露でもアレルギー症状を悪化させる化学物質が存在することなどが判明しています。
アレルギー性疾患増加の要因を解明するべく、現在も研究を継続し、より詳細な分析を重ねています。
本号では、本研究の背景からこれまでの成果を広く紹介いたします。
●本研究に関する成果は、国立環境研究所のHPでご覧になれます。
http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/sr63/sr63.pdf
研究者に聞く!!
小児をはじめとして、アレルギー性疾患を発症する人たちが増加しています。その原因の1つに、化学物質など生活環境に放出されることで生体に悪影響を与える物質(環境汚染物質)の曝露が考えられています。
一方で、化学物質のアトピー・アレルギーへの影響に関する研究は、充分には行われていません。
今回は、主として動物実験によって、環境汚染物質がアレルギー性疾患に与える影響とそのメカニズムの解明に関する研究に取り組んでいる井上さん、柳澤さん、小池さんに、研究の成果や今後の進め方などについてお聞きしました。
アレルギー性疾患の症状を悪化させる環境化学物質の存在
身近になった化学物質の曝露
アレルギー性疾患が急増している背景の1つとして、私たちを取り巻く環境が急速かつ大きく変化し、化学物質をはじめとする環境汚染物質に触れる機会が増えたことがあげられます。
種々の環境因子別に見た化学物質に関する近年の変化点を、以下にまとめます。
①居住環境の変化
木材などの建材の防腐や防虫を目的に種々の化学物質が使用されるようになったほか、化学物質を含んだ壁紙や塗料、接着剤、パーティクルボードなどが住宅に多く使われるようになりました。
②食環境の変化
人体に深刻な影響を与える化学物質の使用は減少したものの、食の多様化が進んだことでさまざまな化学物質を含んだ食品を摂取する機会が増えました。
さらに、使い捨て食器や容器では、よくプラスチックが使用されますが、その中には材質を柔らかくする可塑剤としていくつかの化学物質が使用されています。
③衛生環境の変化
いわゆる抗菌グッズが増加したことが象徴するように、抗生物質や抗菌性化学物質などが普及するようになりました。
④大気・水・土壌環境の変化
この場合の変化は大気や水質、土壌が汚染されることを意味します。
とくに世界中の都市部の主たる大気汚染物質であるDEP は、一般的に元素状炭素を核として持ち、その周辺や内部には炭素数が 14 から 35 の炭化水素とその誘導体、キノン、多環芳香族炭化水素、飽和脂肪酸、芳香族酸、など多くの物質が存在しています。
多様性に富んだ化学物質の集合体が DEP なのです。
runより:長~いですよ( ̄_ ̄ i)