揮発性有機化合物の神経系細胞への効果 | 化学物質過敏症 runのブログ

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/40.1/0/40.1_2003191/_article/-char/ja/
出典:日本毒性学会
揮発性有機化合物の神経系細胞への効果
*山田 康枝1), 大谷 航平1), 白石 浩平1)

1) 近畿大学工学部 生物化学工学科

公開日 20130814   キーワード: ]揮発性有機化合物, 神経系細胞, トルエン
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抄録

[目的]揮発性有機化合物(VOCs(volatile organic compounds))には神経系に悪影響を与えるものが多く存在する.

代表的なトルエンは,塗料や接着剤(有機溶媒)に用いられており,シックハウス症候群の原因物質の1つであり,神経系に強い毒性を持つ. 

高濃度のトルエンを吸入すると, 神経行動や生殖能力に影響が出ることが知られている.

VOCsの組織や細胞レベルでの研究は少なく,毒性の分子メカニズムも明らかにされていない.VOCsの神経系細胞への効果を検討するためラット初代培養神経細胞とヒト神経芽細胞腫由来細胞株SK-N-SHへの効果を検討した.

 [実験方法] SK-N-SH細胞に対してのVOCsの効果は,96穴コラーゲンコーティングプレートに細胞濃度2.0×105 cells/mlに調整後,播種し24時間インキュベーター内で培養した.

VOCsであるtoluene, n-octanal, 2-ethyl-1-hexanol, nonanalを添加し24時間後の細胞生存率をMTT assay法で測定した.

ラット初代培養神経細胞は妊娠ラット胎仔の大脳を採取し,細胞濃度 1.0×106 cells/mlになるよう調整しポリエチレンイミンコーティングした4穴シャーレに播種し,3週間培養した.

VOCsを添加し、24時間インキュベーション後Live-Dead染色法で生細胞を緑色蛍光色素(蛍光波長:518 nm),死細胞を赤色蛍光色素(蛍光波長:618 nm)で識別し生細胞と死細胞の割合を蛍光輝度で測定し,細胞毒性を検討した.


[結果と考察]SK-N-SH細胞へVOCs を0.1 mMを添加すると,その細胞生存率はtoluene11.7%,n-octanal 2.16%,nonanal 0%,2-ethyl-1-hexanol 25%であった.

ラット初代培養大脳神経細胞に対して,VOCsを0.1 mMを添加すると,生細胞と死細胞の割合は,controlと比較して生細胞よりも死細胞の方が多かった.

以上より,VOCsはヒトSK-N-SH細胞とラット初代培養神経細胞に対して強い毒性を示すことが明らかとなった.