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環境ホルモンとアトピー
監修:坂部貢 先生
生物の性や生殖に大きな影響を与え、社会的な問題となっている環境ホルモン。
今月は、環境ホルモンとアトピーとの深い関係について考えます。
環境ホルモンって何?
環境ホルモンとはそもそもどんな物質で、どのような問題があるのでしょうか?
体内のホルモン分泌を乱す内分泌かく乱化学物質
化学物質の中には、体の中に入ると、ごく微量であっても、体の中で分泌されているさまざまなホルモンのバランスを乱してしまう性質のものがあります。
それが、環境ホルモンと呼ばれるものです。
専門的には「内分泌かく乱物質」と言われます。
環境ホルモンの構造は、女性ホルモンに似ているものが多く、体内に入ると女性ホルモンに似た働きをしてしまいます。
男性の体内に入ると、生殖器の発育や正常な精子の形成を阻害するなどの影響があり、女性の場合は婦人科系腫瘍などにかかりやすくなると言われています。
環境ホルモンの研究はまだ十分ではありません。
環境ホルモンが、人間本来のホルモンの働きを乱すことはわかりましたが、その結果どういう影響を人体に及ぼすか、またどれだけの量を摂取したら危険なのかなど、不明な点はまだたくさんあるのです。
日常生活のあらゆる場面で環境ホルモンに接している
現在、環境省が環境ホルモンの疑いがあるものとしてリストアップした化学物質の中には、PCB(ポリ塩化ビフェニール)のように使用禁止になっているものもあります。
しかし、PCBや塩素系の農薬は、かつて野菜や果物などに散布され、現在も大気中や土壌、沼や湖の水などから、検出されています。
また、環境省が環境ホルモンの疑いがあるとしている除草剤に使用されるシマジンやアトラジンなどの物質は、濃度や量の規制はありますが、今でも使用されています。ゴミ焼却場問題で有名になった発ガン性物質ダイオキシンは代表的な環境ホルモンです。
さらに身近な場所にも、環境ホルモンはあふれています。
乳児用の哺乳瓶や、子ども用の食器、カップ麺の発泡スチロール容器や市販の弁当の容器などに用いられているポリカーボネート製プラスチックは、原料に環境ホルモンである物質が使用されています。
そのほかにも、缶詰の内壁の皮膜や、歯科治療の詰め物などさまざまなものに使用されています。
環境ホルモンは、アトピーの悪化因子だった!
ホルモンの働きをかく乱する環境ホルモンは、アレルギー反応を亢進させるため、アトピー性皮膚炎の増加の原因とも考えられています。
内分泌系・免疫系に直接作用して過敏体質に
本来なら体内でバランスよく免疫系の働きを調節する女性ホルモン。
しかし、環境ホルモンが体内に入ると、女性ホルモンがもつ免疫系の調節という働きに影響を与えてしまいます。
そして免疫系のバランスが乱れます。
これにより、アレルギー症状が起こりやすくなったり、自己免疫疾患にかかりやすくなります。
最近では、免疫系に直接作用する環境ホルモンも発見されています。
環境ホルモンは、内分泌系と免疫系に作用して、ちょっとした刺激にも過敏に反応するアレルギー体質を引き起こす原因となるのです。
最近のアトピー性皮膚炎が増加している背景の一つに、この環境ホルモンの影響を指摘する研究者は多いようです。
実際、アトピー性皮膚炎が先進諸国に多く、発展途上国に多いのは、清潔な環境(Th1の関係)の問題もあると思いますが、環境ホルモンとなる化学物質の影響も無視できないように思います。
自律神経のバランスも崩れ、さらにアトピーが悪化
人間の体は、内分泌系、免疫系、自律神経系が機能的に関係しあうことで守られています。
環境ホルモンによって、内分泌系、免疫系に影響が出るということは、互いに密接にリンクしている自律神経系にも同様の影響を与えていると考えられます。
自律神経は体のあらゆる部分の機能を司っており、自律神経のバランスが崩れることもアトピー悪化の原因のひとつになります。
環境ホルモンって何に入っているもの?
環境ホルモンは、身のまわりにたくさんありますが、どんなものなのかわからないため具体的に何を避ければいいのかがわかりにくいものです。
身のまわりに存在する代表的な環境ホルモンを知って、摂取を減らす参考にしてください。