リウマチ・アレルギー対策委員会報告書4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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2.今後のリウマチ対策について
(1)リウマチ対策の基本的方向性
(1)今後のリウマチ対策の目標
国のリウマチ対策の目標としては、リウマチに関する予防・治療法を確立し、国民の安心・安全な生活の実現を図ることにある。
しかしながら、現段階では先に述べた①リウマチ医療、②リウマチ患者のQOL、③研究の推進といった点について問題点があるため、これらの問題の解決を図るためには、施策の優先目標を定め、リウマチ対策を効果的に講じる必要がある。

「リウマチ重症化防止策の推進」
約60万人といわれているリウマチ患者の約30-40%が重症リウマチといわれている。

リウマチの根治的な治療法が確立されていない状況の中で、その上下肢の疼痛、機能障害の進行を防止し患者の生活の質を向上させるためには、早期診断法や有効性の高い治療法開発の推進、適切な医療を効率的に提供できる体制の確立、相談や情報提供等患者を取り巻く環境を整備し、リウマチ重症化防止を目指す必要がある。

今後、リウマチ活動期初期における早期治療法の確立により、可能な限り入院患者数を減少又は入院期間を短縮することによって、患者のQOLの向上を図る。
このような取り組みに重点を置きつつ、長期的視点に立ってリウマチ疾患の予防及び根治的な治療法の確立のための研究の更なる推進等を進め、リウマチの克服を目指す。
(2)国と地方公共団体との適切な役割分担と連携体制の確立
上記リウマチ対策の目標が達成されるためには、国と地方公共団体、関係団体等における役割分担及び連携が重要となる。
国と地方公共団体の役割分担については、リウマチの特性及び医療制度の趣旨等を考慮すれば、基本的には、都道府県は、適切な医療体制の確保を図るとともに、市町村と連携しつつ地域において正しい情報の普及啓発を行うことが必要である。

一方、国は地方公共団体が適切な施策を進めることができるよう、先進的な研究を実施し、その成果を普及する等の必要な技術的支援を行う必要がある。
また、このような行政における役割分担の下、厚生労働省は患者団体、日本医師会、日本リウマチ学会、日本整形外科学会、日本小児科学会、日本リウマチ財団等関係団体並びに関係省庁と連携してリウマチ対策を推進していくことが必要である。

(2)リウマチ対策の具体的方策上記の方向性を具体的に達成するため、今後5年(平成22年度)を目途に重点的に取組を行う具体的方策は以下のとおりである。

今後の方向性
○ 医療等の提供
現時点では、リウマチに関する完全な予防法や根治的な治療法は開発されていない。このため、予防法や治療法の開発は重要であるが、更に患者のQOLの向上を図るために、当面は関節破壊の進展阻止を目指した重症化防止に重点をおき、リウマチ活動期に速やかに寛解導入を図る初期治療を実施するとともに、人工関節を中心とする外科的治療の進歩等を踏まえ、可能な限り入院患者を減少させ、又は入院しても短期で退院し社会復帰できるよう、適切な入院医療を提供する。
その際、初期関節炎を罹患している患者のリウマチ鑑別診断を的確に実施することにより、早期診断を実施することが望まれる。
○ 情報提供・相談体制
国及び地方公共団体は、患者を取り巻く生活環境等の改善を図るため、患者自己管理手法の修得、情報提供体制の確保や相談体制の確保のための対策を講じる。
○ 研究開発等の推進
リウマチ対策研究の基本的方向性としては、早期診断・早期治療等による重症化の防止に対する取り組みに重点をおくとともに、有効な治療選択法のための情報収集体制について検討する。
なお、長期的視点に立ち、リウマチの予防法と根治的な治療法の開発を進め、最終的にはリウマチの克服を目指す。

(1)医療等の提供
(ア)かかりつけ医を中心とした医療体制の確立
○ リウマチ管理に必要な医療体制
・国においては、リウマチにかかる医療体制を確保するため、日本医師会等医療関係団体や関係学会等と連携して、診療ガイドラインの改訂及びその普及により、地域の診療レベルの不均衡の是正を図る。

また、地域におけるリウマチ対策の医療提供体制のあり方について事例集を作成・配布し、都道府県等への普及に努める。
・このような国の取組みを踏まえ、都道府県においては、医療計画等を活用して、地域におけるリウマチに関する医療体制の確保を図ることが求められる。

また、適切な地域医療の確保の観点から、地域保健医療対策協議会等の場を通じ、関係機関との連携を図る必要がある。
・リウマチ患者に対しては、安定期にはリウマチに精通した身近なかかりつけ医が診療し、重症難治例や著しい増悪時には専門的な対応が必要である。そのため、基本的には医療圏毎にリウマチ診療の専門機能を有している医療機関が必要である。また、リウマチはほぼ全身の臓器に係わる疾患であることから、このような専門医療機関等を支援できるよう都道府県に 1 カ所は集学的な診療体制を有している病院を確保する必要がある。

また、小児リウ
マチの医療体制の確保については、必要に応じて、周辺都道府県と連携してその確保を図る。
・機能障害の回復や低下を阻止するため、リウマチのリハビリテーションを行うことができる環境の確保を図り、併せて難病患者等居宅生活支援事業の活用を図る。

その際、地方公共団体にあっては、高齢者が寝たきり状態になることを予防するために実施している地域リハビリテーション推進事業、老人保健法に基づく機能訓練の活用や介護保険制度に基づく介護サービスの活用等も考慮し、地域におけるリハビリテーション体制の確保に留意する。
(イ)人材育成
○ リウマチ診療に精通したかかりつけ医の育成
・診療ガイドラインに基づく治療を行うことにより、患者のQOLを向上させ、効率的かつ適切な医療の提供を促進できると考えられることから、国においては、日本医師会等医療関係団体や関係学会等と連携して、診療ガイドラインの普及を図ることで、リウマチ診療に精通したかかりつけ医の育成に努める。
・医学教育においては、全国の医科大学(医学部)の教育プログラムの指針となる「医学教育モデル・コア・カリキュラム」において、「関節リウマチの病態生理、症候、診断、治療とリハビリテーションを説明できる」等の到達目標を掲げていることから、各大学においては、これに基づいた教育カリキュラムを策定し、その充実を図ることが必要である。
・臨床研修においても、現在、経験目標の1疾患としてリウマチが取り上げられており、プライマリケアの基本的診療能力としてその正しい知識及び技術の修得が求められている。臨床研修を受けている医師は自らリウマチ診療について経験する必要がある。
・日本医師会において実施している医師の生涯教育においては、今後ともより一層リウマチに係る教育が充実されることを望みたい。
・小児リウマチ診療に携われる人材の育成について、日本小児科学会の取り組みが望まれる。
○ リウマチ専門の医師の育成
・リウマチ診療の質の向上及び都道府県間におけるリウマチ専門の医師の偏在是正を図るため、関係学会におけるリウマチ専門の医師が適切に育成されることが望まれる。

また、リウマチ診療は全臓器に関わる診療となるため総合的なリウマチ専門の医師の存在が重要と考えられ、関係学会において、そのような専門の医師の育成について検討することが望まれる。
・また、日本リウマチ学会の専門医と日本整形外科学会の認定リウマチ医の認定の基準や方法等においては、専門医の在り方を踏まえつつ、当面求められる専門的な薬物治療や手術の予後に関する知識等両分野に共通しうる事項から、統一していくことが望ましい。
○ 保健師、看護師、薬剤師等においても、リウマチ患者に適切に対応できるよう、知識・技能を高めておく必要がある。

また、保健師、看護師については、日本看護協会の研修において、今後ともより一層リウマチにかかる教育が充実されることが望ましい。
(ウ)診療の質の向上
○ 診療ガイドライン
・リウマチ医療を提供する医療機関が、適切な治療法の選択や薬剤投与による副作用の早期発見等の適切な医療が実施できるよう、早期リウマチの診断及び治療を含めた診療ガイドラインの改訂及びその普及を図る必要がある。

併せて、有害事象の知見を踏まえ、生物学的製剤の適正使用ガイドラインの作成について検討する必要がある。
・小児リウマチの診療の質の向上が図れるよう、小児リウマチの診療ガイドラインの作成について検討を行う必要がある。
○ クリティカルパス
・リウマチ患者が入院治療を受けた場合、適切な入院医療を促進するため、リウマチ診療を行う病院は、病態別重症度別のクリティカルパスの普及に努めるべきである。
○ 専門情報の提供
・リウマチに関する研究成果等を踏まえた専門的な医学情報については、国は関係学会等と協力して必要な情報提供体制の確保を図る。また、専門医療機関等からの相談に対応できるよう国立病院機構相模原病院臨床研究センターに相談窓口を設置する。

(2)情報提供・相談体制
(ア)自己管理の促進
○ 自己管理する内容
患者及び患者家族が管理することが望まれる主な事項は以下のとおりである。
・生活上の注意点
・疾患の重症化予防法、治療法及び副作用に関する正しい知識
・自己の疾患活動性に関する正しい評価法
○ 自己管理の修得法の普及
・国は、日本リウマチ学会等と連携し、上記内容について効果的な教育資材等を作成し、都道府県等や医療従事者等に配布する。
・ このような国の取組を踏まえ、都道府県等においては、「リウマチ・アレルギー相談員養成研修」を活用し、都道府県医師会や関係学会等と連携して研修会を実施する等して、職域や地域等における自己管理手法の普及を図ることが求められる。
・また、市町村においても、都道府県等と同様の取組として、保健指導等の場を効果的に活用し、リウマチの自己管理手法の普及等を図ることが求められる。
・医療従事者においては自己管理手法の普及について正しく認識し、医療機関において指導を実践することが望ましい。