化学物質不耐性における神経の可逆性7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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第六章 神経の条件付け
臭いに対する反応での学習された症状:多種類化学物質過敏症についての
学習の関与
Acquiring symptoms in response to odors: A learning perspective on multiple chemicalsensitivityO van den Bergh, S Devriese, W Winters, H Veulemans, B Nemery, P Ellen, K van deWoestijne
本論文では多種類化学物質過敏症の症状の有力な説明として、学習の関与を論議する。
臨床的な証拠は少なく、またあっても科学的ではあまりない。実験的なモデルが確実な結果を提示している。

炭酸ガス濃度の高い空気呼吸を条件付けでない呼吸ガスとし、それに無害な有臭物質を含むガスを条件付けのガスとして、数呼吸すると、有臭ガスでのみ自覚症状が誘発され、呼吸の状態が変化する。

また、精神的な心象が自覚症状の引き金を引く条件付け刺激となり得る。

学習効果は反応の偏見(bias)やs 条件付けられた興奮により説明出来るものではない。

臭いと炭酸ガスの吸入との関係を知っているという認識と重複しない基礎的な連想的な過程が存在しているように思われる。

学習して身についた症状は新しい臭いに拡がり、さらにパブロフの消失過程で消滅しえるかもしれない。

臨床的な所見と一致して、神経過敏な人や、神経病的な人は臭いに反応する際に、より敏感になりやすい。

学習の関与を考えると、認識-行動学的治療の技術が臨床例に有用な結果をもたらすと思われる。

本項ではさらに学習の機構の重要な役割に関する種々な批判や未解決な疑問をあわせて議論した。

嗅覚と文脈的刺激に対する情動反応のパブロフ様条件付け

-化学物質不耐性の発生と発現のための有力なモデル
Pavlovian Conditioning of Emotional Responses to Olfactory and Contexual Stimuli.A Potential Model for the Development and Expression of Chemical Intolerance.Tim Otto and Nicholas D. Giardino
ヒトにおける化学物質不耐性(CI)は病因論的にはほとんど理解されていない現象の一つである。

これは、おそらく、患者間では、あるいは同じ患者でも様々な因子により影響を受けているためと思われる。

幾つかのケースでは、CI の発生はパブロフの条件付けに類似の過程に部分的にではあるが依存しているらしい。

すなわち、ある物質に対する強い症状の発現は嗅覚と文脈的刺激に対する古典的条件付けの反映であると指摘されている。

この論文では、動物実験で示された、嗅覚と文脈的条件付けとの有力な因果関係を述べ、さらにヒトにおけるCI の発生と発現について言及する。

また、最近の研究の進展によりこれらの条件付けに関わる学習反応を司る脳の部位について詳細な記載がある。

そこで、特に、嗅覚と文脈的刺激に対する恐怖条件付けには扁桃体と嗅脳溝周囲皮質が関わっているという最近の研究をレビューする。

ポスター論文
末梢作用性コリンエステラ-ゼ阻害剤の中枢神経系への効果: ストレス、遺伝的素因との相互作用
Central Nervous System Effects from A peripherally acting cholinesterase
inhibiting agent:Interaction with stressor Genetics
Kevin D. Beck, Guanping Zhu, Dawn Beldowicz, Francis X. Brennan, John E.
Ottenweller, Roberta L. Moldow, and Richard J. Servatius
多くの薬剤はある特定の作用部位を持つように開発される。

しかしながら、生理学(遺伝)的な個体差により、あるいは環境条件によって生理学的に個体が変化(化学的感受性の増大など)することにより、作用部位の分布が変異する場合がある。

末梢作用型コリンエステラ-ゼ阻害剤であるPyridostigmine bromide(PB)は、遺伝的素因および環境条件の違いに基づいて異なった作用発現部位を示す化合物とみなされている。

疫学研究では、湾岸戦争時にPB 注射によって薬効が遷延するのを経験したヒト個体の一部が、PB に対して過剰な反応を見せるヒト表現型と似た遺伝的素因を持っている可能性について示されている。

ストレス状態を引き起こし、急性もしくは持続性の生理学的変化をもたらす環境状況が、薬物作用部位の分布を変える可能性を示す他の研究もある。

PB の作用部位の順応的変化に関する基礎的研究では、ストレス状態にある個体にPB を注射するとその作用部位が変化することが示されている。

以下に示すのは、PB の行動学的・生理学的作用に関する二つの仮説(個体差の関与、および環境ストレッサーの役割)を検証した一連の研究を短く要約したものである。

臭い負荷呼吸器学習試験における臭いに対する反応の症状の学習効果
A symptom learning in response to odors in a single odor respiratory learningparadigmW Winter, S Devriese, P Eelen, H Veulemans, B Nemery, O van den Bergh
多種類化学物質過敏症発症の説明中で、古典的な条件付け(conditoning)が提唱されており、その説明付けが正しいことが実験的にも積み重ねられてきている。

その実験的な方法はほとんどが、条件付けとしての臭い刺激と、条件付けでない負荷としてのCO2高濃度(例えば7.5%濃度)の呼吸気体条件により行われている。

この作業条件での研究法は、有毒物質暴露の効果や、臭いのある環境でしばしば見られる過換気(ストレス誘引のものであるが)の状態を模擬したものである。

この実験計画では、臭いに対して症状の増加が認められている。

本実験では50 名の精神科新入医局員を対象に2 分間10呼吸の負荷試験を行った。

臭いの型としてアンモニアとniaouli の2種類を、実験的および明かな対照なしの4型の負荷試験を行った。

空気での試行では差が認められなかった。

一方CO2混入での試行では、症状の増加が認められた。

これらの結果を論議、考察した結果、予測的なヒントとして臭いを目立たせる処置はすべて臭いの条件付けの可能性を高めるかも知れず、また、それが1種類の臭いの例でも起こり得ることが考えられた。


化学物質不耐性患者の深い皮質下(大脳辺縁系を含む)の代謝亢進:ヒト PET の研究
Deep subcortical(including limbic) hypermetabolism in patients with chemicalintolerance: Human PET sutudiesG Heuser, JC Wu
神経中毒的な傷害は記憶、認識機能、共同運動、バランス、また行動に障害をもたらすことが知られている。

さらに患者は化学物質に対して過敏性を獲得することもある。

化学物質に対する反応には広範囲のものがあり、苛立ちや、パニック障害を含めた非合理的な行動を伴った情緒的な不安定性まである。

Bell、Sorg 等は大脳辺縁系の関与を示唆しているが、その際にはキンドリング(閾値以下の刺激でも繰り返した刺激で反応を引き起こすことーー訳者注)を伴い、上記反応の機構を説明可能のものである。

7名の成人患者をPETで検査した。これら患者は有機溶媒、殺虫剤や各種神経毒暴露後に発症し慢性の経過をたどっている患者である。

PET にはF-18 deoxyglucose を使用した。

性、年齢をマッチさせた健常者のデータ-と比較した。大脳皮質の多くの部分で有意な代謝低下が認められた。
過去のSPECT による大脳皮質血流障害の結果と一致するものである。

一方扁桃核を含めた大脳辺縁系やその近傍では代謝亢進が証明された。

代謝亢進は小脳、視領野、さらには下方の脳幹にも及んでいた。

代謝亢進は発作を意味し、片縁系の発作はパニック発作を意味している。

結論として、化学物質不耐性の患者の行動学易異常や認識力の異常のような臨床症状は前記の所見で説明出来るということである。

われわれのPET の所見は1999 年に報告したが、印刷はしていない。

化学物質不耐性の他の側面は、化学物質暴露が肥満細胞を活性化し、極端な場合にはmastocytosis を引き起こすことは、これまでのわれわれの過去の所見で説明できるであろう。
本態性多種化学物質過敏症・慢性疲労症候群・心的外傷ストレスの共通の病因に関係する、

一酸化窒素、ペルオキシナイトライト上昇機序
Elevated nitric oxide/peroxynitrite mechanism for the common etiology of multiplechemical sensitivity, chronic fatigue syndrome, and posttraumatic stress disorder.Martin L. Pall and James D. Satterlee
MCS や化学物質不耐性において、多くの証拠が一酸化窒素や酸化体や、おそらくペルオキシナイトライトとの関与を示唆している。

以前慢性疲労症候群でいわれてきた正のフィードバック機構により、いくつかの報告されている特質だけでなく、MCS(CI)の慢性的な特徴を説明できるであろう。

以前にMiller は、「我々は新たな疾病理論の出発点に立っているのだろうか。」と問いかけたが、今回の研究で、一酸化窒素、ペルオキシナイトライト上昇機序は、新たな疾病の枠組みから成る機序であるという可能性を高めていると思われ、その問いに答えるものなのかもしれない。


runより:長かったですがお付き合いありがとうです((。´・ω・)。´_ _))ペコ

論文や報告書だとどうしても長くなるので仕方ないのですが今回は章ごとに別けたので長い物はとても長くなりました。

一応このスタイルで掲載していきますが流石に長い場合は分割したりします。