・付録 Ann NY Acad Sci vol 933 2001 要訳
The role of neural plasticity in chemical intolerance
化学物質不耐性における神経の可逆性
編集兼学会組織委員
Barbara A. Sorg and Iris R. Bell
この巻はニューヨークのロックフェラー大学で 2000 年 6 月 16 日から19 日間かけて Newyork Acsdemy of Scienceにより「The role of neural plasticity in chemicalintolerance」の名称で行われた結果である
序文
不思議さは知らないことの娘であり、不思議さの対象が大きいほど不思議さが増す。
VICO化学物質不耐性は低濃度環境化学物質で引き起こされる病気の感じを表現する時に使用され、しばしば多種類化学物質と互換性をもって使用される状態である。
化学物質不耐性は多種類化学物質過敏症の極印である。
とはいえ、化学物質不耐性は多種類化学物質過敏症、湾岸戦争症候、慢性疲労症候群、線維筋痛症、有機溶媒暴露作業者を含めたもっと幅広の患者群を表現する時に使用される。
化学物質不耐性は環境医学で生じている重要問題であり、米国での有病率は5%にのぼっている。ただこの調査値はほんの少数の論文を下にしたものであり、もっと調査が必要であるが人件費の関係で難しい。
化学物質不耐性の患者はもはや通常の世界には住めなくなってしまう。
なぜなら、多彩な症状が一般的な化学物質や食物に反応して出現してくるからである。
これらの患者は身体的にも情緒的にも孤立し、またその経過はよく分かっておらず、さらに明確な一般に受け入れられるような治療法がない。
論議が多い疾患のために、化学物質不耐性や多種類化学物質過敏症の単一の定義は存在していない。
研究者達や臨床医達の間に統一した見解はない。
しかしすべての関係者が同意していることは、化学物質不耐性や多種類化学物質過敏症患者は非常に患っていることである。
確実な障害としての化学物質不耐性や多種類化学物質過敏症の真実についての議論が今後も続くことは間違いない。
本シンポジュームの目的は討論をまとめることではない。
化学物質不耐性や前記の疾患に関する多くの可能性が出てくるであろう。
症状が非常に多岐にわたるために、特定の仮説をテストする要点を見つけようとしての努力がなされてきている。
これら疾患の原因決定のために前進し続ける最善の方法は焦点を絞り込むことである。
患者集団が異なっていても、一番多い症状は神経症状であることが最近の研究で示されている。
本シンポジュームのオーガナイザー達は、化学物質不耐性に起きていると考えられている神経生物学的な変化の基盤となっている機序を明らかにする方向へ研究が向かうべきと考えている。
本シンポジュームは、神経系機能、または神経の可塑性の変化が化学物質不耐性の起因展開や持続に重要な役割を果たしているとする仮説の発展に焦点を合わせた。
これらの仮説を明かにするために、われわれはこの消耗を強いる症状の説明を行い得るような基礎神経科学者のトップを集めた。
本シンポジュームの主要テーマは、(1)ヒト化学物質不耐性;(2)化学物質不耐性の実験モデルと神経の可塑性の役割;(3)病的疼痛における神経可塑性;(4)サイトカイン、慢性疲労状態、そして病気の動態;(5)身体的なストレスと神経内分泌軸;そして(6)神経の条件付けである化学物質不耐性。
本学会では学会中およびセッション間に多くの実り多い議論のための素晴らしい機会が得られた。
すべての分野で興味あるデータ-が示された。今回の会の大きな収穫は、疲労状態、慢性の痛み、身体・精神的なストレスに反応する脳、そしてその基盤となる神経回路の変化についての生物学的な変化について基礎科学者が臨床医と意見の交換を行ったことである。
さらに、基礎科学者達の一部は、この問題はこれまで気付いていなかった領域であり、これからの生物学の新しい展開の窓口を開くきっかけとなると述べていた。
全体としてみると、このシンポジュームは科学者と臨床医との意見交換の場となり、さらに神経科学者の訓練のうちに終えられた。
このような興味をそり、しかし議論の多い疾患は理論的に、また可能性のある方法で始められるべきであり、臨床医が治療法を確立しようとするならばなおさらである。
種々の領域の神経科学者が集まったが、ある程度の情報が得られたと思う。しかしさらに情報を積み重ねる必要があることは明白である。
本会の進行とともに、関係者の認識は増し、それは(1)物質不耐性患者が経験している多数の系にまたがる問題、(2)この領域の系統だった、そして相互に情報を交換できる研究の必要性である。
過敏性獲得、睡眠/疲労、痛み、条件付け、そしてストレスのような臨床の現象は、一見体の各所に広がり、重複しているが、この広がりが全体としてみると化学物質不耐性の現象を解読する役に立つであろう。
将来の研究では、個人差、経過を追っての状態、繰り返しての診察計画を考慮すべきだろう。
中枢神経の可塑性はこの研究の出発点である。
今回の発表者ME Gilbert が述べたように、われわれは「これら疾患が確実に存在しているかという点を超えたところで討論した。本会が多種類化学物質過敏症の存在を確実に証明することにはほとんど役に立たなかったかもしれないが、この疾患やその関連疾患が重大な神経生物学問題であるとして健全な討論を発展させた。」
化学物質不耐性やその関連疾患の基盤にある原因についてはわれわれは知識が足りないが、知識の少なさで患者の症状を幻覚であるなどとして見過ごすべきではない。
これら疾患の不可解な性質は逆に興味をわれわれに引き起こし、そして神経の可塑性の機構についての理解を深めるものであろう。
各演者はそれぞれの領域から正しい内容を用意した。それらの発表はわれわれに臨床の症状と基礎的な科学的知識を結びつける方向へ誘導してくれた。
この基金で、化学物質不耐性やその関連疾患の原因や治療についての新しい問題へと進むことができるであろう。