・本合意への署名者Liliane Bartha MD, William Baumzweiger MD, David S Buscher MD, Thomas Callender MD, MPH, Kristina A Dahl MD, Ann Davidoff PhD, Albert Donnay MHS, Stephen B Edelson MD, FAAFP, FAAEM, Barry D Elson MD, Erica Elliott MD, Donna P Flayhan PhD, Gunnar Heuser MD, PhD, FACP, Penelope M Keyl MSc, PhD, Kaye H Kilburn MD, Pamela Gibson PhD, Leonard A Jason PhD, Jozef Krop MD, Roger D Mazlen MD Ruth G McGill MD, James McTamney PhD, Williams J Meggs MD, PhD, FACEP, William Morton MD, DrPH, Meryl Nass MD, L Christine Oliver MD, MPH, FACPM, Dilkhush D Panjwani MD, DPM, FRCPC, Lawrence A Plumlee MD, Doris Rapp MD, FAAA FAAP, FAAEM, Myra B Shayevitz MD, FCCP, FACP, Janette Sherman MD, Raymond M Singer PhD,
翻訳・版権責任者
石川哲・宮田幹夫
(北里研究所病院臨床環境医学センター)
訳者注
今回われわれは米国ではすでに常識になっている多種化学物質過敏症(MCS)のコンセンサスを全訳することに決定した。
それは、一般医師の(MCS)に対する認識がまだ極めて低いからである。前号で触れた様にデータ呈示のない、masking除去のない、Staudenmayerらの論文が日本ではある分野には1 人歩きしているからに他ならない。
このconsensusは正直に言ってまだ不十分である。
しかし、この診断基準でMCSに対して真摯に立ち向かおうという米国医師会の考え方は納得できる。日本でもシックハウス症候群の研究班が立ち上がった。
これも21世紀に向かっての患者に対するgood newsである。
シックハウス症候群も実はMCSに含まれる。
本症は微量化学物質の慢性接触により生体の自律神経、中枢神経、免疫系、内分泌系を中心に発症した過敏反応による症候群である。
現在特に患者数が多いのは新築または改築により生じた症例が中心をなしている。
現代人は既にDDT, BHCなどの有害化学物質の蓄積が高く、体内の解毒機構がそれに費やされるため、極めて低い閾値で新たに侵入する環境有害物質に反応が起こってしまう可能性が強いとReaらは主張する。
何れにせよMCSで悩んでいる患者に対し出来るだけ早急に対策を取る必要があり、今後の迅速な対応が急務である。
以下に参考のため治療と今後の要望を記した。
化学物質過敏症の治療
過去の疾患概念からすれば治療手頂は、
1,原因物質からの隔離、クリーンルームを使用(マスキング除去の為必要)。
2.身体状況の改善のため転地療法
3.体内からの有毒物質の排出が基本である。
例えば有機燐殺虫剤の中毒が疑われるときは第一選択として脱燐剤、副交感神経マヒ剤のアトロピンを用いる。
れにより、神経末端に蓄積したアセチルコリンが分解されコリン作動性の体の不均衡が是正される。
その他の中毒の場合はそれぞれの物質の薬理作用を研究し既知の解毒剤投与を行う。
活性酸素除去にはフリーラジカルのscavengerとしてピタミンA, C, B6, E, Co-enzyme Q10など、さらに解毒酵素補強のためにZn, Mg, Seなども必要時投与する。
長期にわたる原因物質の暴露で蓄積効果や症状が重篤であり、早急に改善が必要な場合は代謝促進剤の併用投与を行う。
4.さらに難治症例で社会復帰が不可能に近い場合は基本的には転地療法である。allergenによる脱感作療法中心のchallenge therapy法および、積極的に毒物を微量与え免疫力をつける中和療法neutralization therapyも行う。1999年5月から白金にある北里研究所病院内に日本で初めての患者診断・治療用クリーンルームが開設され、現在シックハウス症候群、化学物質過敏症に対して診断・治療活動が行われている。
今後のMCSに対する要望をまとめると次の通りである。
1 .微量化学物質の慢性中毒診断のための医師、パラメディカル教育、カウンセラー養成。
2 .保健所、地方公的機関と病院とが連携しネットワークをつくる。患者の化学物質の測定、診療に大学、病院が積極的に協力する。
3 .本症発生と関係の深く、かっ患者の多い1)ホルムアルデヒド、2 )トルエン、3 )防蟻剤(有機燐剤、カルバメート剤)を厳しく規制する。
例えばクロルピリフォスメチルは毒性が強く米国では使用中止にした。
また揮発性芳香族化合物(VOC)キシレン、エチルペンゼン、フタル酸工ステル値等のガイドラインの作成および測定法の確立。
4 .血液、尿、毛髪など体内成分における化学物質の簡易なそして正確、廉価な測定法の確立。
5 .汚染地域での一般住民の疫学的研究に関する資金の援助。
6 .本症の世界の文献に関するデータベースの作成と公的機関のMCS情報公開。
7 .化学物質過敏症の実験動物モデルの開発。
8 .実験動物で化学物質を用いたbehavioral scienceからの行動学の分析。
9 .報道機関、一般市民に対する正しいPRO
10.化学会社に対する臨床医師、基礎研究の医師、建築学、化学専門家からの科学的測定値に基すく化学物質過敏症に対する正しい情報の伝達など。
runより:PDF掲載ですが保存している物の古い物から経緯として掲載しています。
前後する事もありますが基本的に古い物から、となります。