多種類化学物質過敏症の合意された診断基準
下記の合意された診断基準はNethercott等の研究(一部はUS NIOSHおよびUS NIEHS基金の援助を受けている)から択出したものである圓。
1 .症状は(何度もの化学物質)曝露により再現してくる。
2 .慢性の経過を示す。
3 .低レベルの曝露(以前は、または通常では何らかの症状を示さない量)で、症状が出現してくる。
4 .症状は原因物質の除去で改善または軽快する。
5 .化学的に無関係な多種類の化学物質に反応を示す。
( 1999年追加)症状は多種類の器官系にまたがる。
6 .1994年に多種類化学物質過敏症についての明確な合意、すなわち「(多種類化学物質過敏症の)愁訴を決して精神的なものとして見過ごすべきではないこと、および本症に対して十分な研究が必要である」とする共同発表が米国胸部学会、米国医師会、合衆国環境保護局、そして合衆国消費物資安全委員会により行われているが(ALA 1994 )、われわれは以下のことを勧告する。
「上記6項目に合致すれば、喘息、アレルギー、片頭痛、慢性疲労症候群、線維筋痛症のような他の疾患が共存していても、多種類化学物質過敏症の診断を下すべきである」。
しかし、もし多器官にわたる単一疾患が一連のすべての兆候や症状を説明でき、化学物質曝露により引き起こされることを説明できるときには多種類化学物質の診断から除外すべきである。
そのような疾患にはマスト細胞症、ポルフィリン症などがこれに入る。
それほどは合併してこないが、「慢性疲労症候群や線維筋痛症」は除外すべきでない。
多種類化学物質過敏症の診断になれていない医師を助けるために、われわれは臨床診断の書式には化学物質過敏症のスクリーニングと特徴付ける有効な質問票の使用16)、多種類化学物質過敏症の鑑別診断に考慮すべき症状の重複してくる疾患の一覧表の使用、そして化学物質過敏症の同様の文献(Ashford and Miller17)、Donnay18))に記載してある兆候や検査所見についての一覧表の使用を勧める。
多種類化学物質過敏症の診断を確実にする単一の検査法はまだ確立されていないが、これらの兆候、症状、または病歴はこの疾患の治療と経過を追求する上で有用である。
多種類化学物質過敏症の症状は個人により、また経過により非常にまちまちである。
ある人は日常生活に反応して生活がほとんど不可能となり、他の人では時に症状が出る程度で症状も軽く、日常生活もほとんど問題ない。
そのために、われわれは多種類化学物質過敏症の診断に際しては下記の項目を念頭に置いて特徴をつかみ、経過を追うことをすすめる。
生活への障害度または不能度を質的および量的に判断すること(すなわち、軽度、中等度、まったく不可能)・症状の重症度(たとえば軽症、中等症、重症)・症状の頻度(たとえば毎日、毎週、毎月)・感覚器障害(どのような感覚系に障害があるか・・・嗅覚、三叉神経、味覚、聴覚、視覚、そしてまた触覚、振動覚、痛覚、温覚・・・これらについて感度の変化( + /ー)、正常レベルの化学物質の刺激に対する耐性、慢性的な刺激に反応を示すのか、また特殊な化学物質曝露に反応しているのかを診ること)。
研究目的のためには対象者の質の均一性を高める必要がある。
研究者がこの診断基準に追加項目を加えたり、削除して、研究の仮説に適合するように改良することにわれわれは吝かではない。
多種類化学物質過敏症の研究では患者と対照者の特徴と範囲の記載を完璧にすべきである。
それによってはじめて異なった研究結果が比較でき、またその結果の適応範囲を拡げることが可能になる。
前述した多種類化学物質過敏症と慢性疲労症候群および線維筋痛症の間には重複している部分があり、またこれらの関係をよりよく理解する必要があるため~ (1)、われわれはヒトの研究に関わっている連邦各種委員会が、慢性疲労症候群、線維筋痛症、多種類化学物質過敏症に直接携わっている研究者がこれら3疾患のスクリーニング(診断の基準が異なっていても問題はない)と、それらの病名で結果を報告することを請願し、要求することを勧告する。これには先例がある:国立関節炎研究所と筋骨格障害研究所は線維筋痛症の研究に際していつも、研究者は側頭-顎関節障害のスクリーニングとすべての重複例を報告すへしとしている。
慢性疲労症候群、線維筋痛症、そして多種類化学物質過敏症は、共同研究を行えば、これらの3疾患患者達のすべてに利益がある。
われわれは上院議員Tom Harkinの議会主導によるDODの1999年の湾岸疾病研究予算3百万ドルの使途を慢性疲労症候群、線維筋痛症および化学物質過敏症の差異と重複とのよりよい理解のための共同研究に付されることを歓迎する( 074 & & &ー9902ー0005 2/ 12/ 99出願)。
われわれはこれら3疾患の共同研究が慢性疲労症候群、線維筋痛症、または多種類化学物質過敏症の研究資金を提供している連邦各種委員会により懇請されることを勧告する。