受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・(国立がん研究センターの見解)
⇒肺がん死亡者42人、46人という数値は、9つの論文のうち、女性における受動喫煙の相対リスクが最も小さい(つまり受動喫煙のリスクが小さい)論文から恣意的に抽出されたものである。

受動喫煙を受けた群と受けなかった群では分母の人数が異なるため、分子である死亡者数を単純に比較しても意味がない。

さらに、受動喫煙を受けた群と受けなかった群とでは年齢や地域の分布が異なる可能性があるため、それらの要因を調整した比較をしなければ研究として成り立たない。

実際、上記論文で、42人と46人についてこれらの要因を調整した比較を行っており、受動喫煙を受けた群(「ほぼ毎日」)の肺がん死亡リスクは受けなかった群の1.06倍となっている。

この1.06倍という数字は、今回国立がん研究センターが報告したメタアナリシスの下限の値とほぼ同じである(1.28倍、95%信頼区間1.10倍~1.48倍)。

つまり、受動喫煙の肺がんリスクは、少なく見積もって1.1倍であるという結果は、研究間で矛盾なく説明されている。

なお、上記の1.06倍は受動喫煙を「ほぼ毎日」受けた群の肺がんリスクであるが、受動喫煙を「1日3時間以上」を受けた者の肺がん死亡リスクは男性で5.29倍、女性で1.12倍と報告されており、受動喫煙の曝露量が多いほどリスクが大きいことを示している。

上記国立がん研究センターが報告したメタアナリシスでは、受動喫煙の害が過大評価となるのを避けるため、1つの論文に複数の相対リスクが報告されている場合、中程度のレベルの値を選んでいる。

同メタアナリシスでは、中程度の値の代わりに、上記「1日3時間以上」など高いレベルの値を選んだ場合の結果も報告されており、統合相対リスクは1.37倍(95%信頼区間1.18-1.60)と中程度の場合(1.28倍)より大きくなる。

また、低いレベルの値を選んだ場合でも1.26倍(95%信頼区間1.09-1.47)と統計学的に有意なリスク増加が観察されている。

肺がんを含めて生活習慣病は単一の要因で発生するものではなく、多くの要因が複雑に影響して発生する。

個々の要因について、他の要因の影響を除去した後でもなおリスクが上がることが観察されれば、当該要因とその病気とに関連があると解釈される。

受動喫煙を受けていないと回答した者でも、唾液や尿などの生体指標を調べると、たばこの煙由来の成分が検出されることがあり、受動喫煙を受けていない者に発生する肺がんの一部はこのような誤分類が原因である可能性が指摘されている。

受動喫煙による肺がんリスクの増加は1.3倍程度で能動喫煙に比べて小さいため、個々の論文では、対象者数の不足や偏り、受動喫煙有無の誤分類、受動喫煙以外の要因などで、見かけ上リスクが観察されないことがある。

このような不安定性を取り除くために、複数の論文を統合して、結果が一致しているか、統合して有意な結果が出るかを調べる「メタアナリシス」が用いられる。


(JTコメント)


肺がん等の慢性疾患は、食生活や住環境等の様々な要因が影響することが知られており、疫学研究だけの結果をもって喫煙との因果関係を結論付けられるものではありません。

また、今回用いられた複数の独立した疫学研究を統合して解析する手法は、選択する論文によって結果が異なるという問題が指摘されており、むしろ、ひとつの大規模な疫学研究を重視すべきとの意見もあります。


(国立がん研究センターの見解)
⇒複数の研究を統合して解析する手法は「メタアナリシス」と呼ばれる。

選択する論文によってメタアナリシスの結果が異なるという問題は古くから指摘されている。しかし、このような選択の恣意性や取りこぼしを避けるために、メタアナリシスの国際的なガイドライン(PRISMA)では、文献検索において疾患名を限定しない、2名以上の独立した評価者が文献やデータ選択を行う、選択する論文のセットを変えて解析を行う、などが定められている。今回国立がん研究センターが報告した論文でも、研究デザイン(コホート研究か症例対照研究か)、出版年(2000年より前か後か)、他のリスク因子を調整しているかどうか、で9論文を2つに分けて3通りの解析を行っており、ほぼ一致した結果が得られている[1]。

メタアナリシスは、医学研究の中で最も信頼度が高いもののひとつとして位置づけられている。その理由は、個々の研究では対象者の偏りや不足、調整されていない要因などの影響で結果が不安定になるが、複数の研究を統合することでより確かな結果が得られるからである。喫煙や生活習慣など病気の予防法、病気の治療法、がん検診の有効性などは、研究者個人の意見や個別の研究ではなく、ガイドラインに基づいて決定される。

いずれのガイドラインの作成においても、複数の研究を統合したメタアナリシスの結果が最も重視されている。


(JTコメント)


今回の選択された9つの疫学研究は研究時期や条件も異なり、いずれの研究においても統計学的に有意ではない結果を統合したものです。