・http://mainichi.jp/articles/20160625/ddl/k02/040/044000c
難病「慢性疲労症候群」に理解を 認知度低く偏見も /青森
毎日新聞2016年6月25日 地方版
青森県
原因不明の疲労感や倦怠(けんたい)感などで日常生活が困難になる難病「慢性疲労症候群」(CFS)。
県内では、患者や医療関係者らでつくる「CFS支援ネットワーク」(青森市、石川真紀代表)が2014年からイベントを通して現状を伝えている。
寝たきりなど介助が必要になることもある病気だが、認知度は低く、医師や健常者からの偏見も多い。
難病と向き合う人々の現状を探った。【宮城裕也】
「表現できない苦しさ」
5月14日、厚生労働省CFS研究班の倉恒弘彦医師の講演などのイベントが青森市内で開かれた。
患者同士の交流の場も設けられ、会議室には患者や家族ら約20人が県内外から集まった。
「疲労で音も光も浴びたくないので、テレビを消してタオルをかぶってふさぎ込んでいる」「本当は元気じゃないか、と言われる。つらくても誰も信じてくれない」などと日常の悩みを打ち明け合った。
交流会に先立ち、東京都葛飾区の大学1年生、近藤銀河さん(22)が自身の体験を話した。
近藤さんは中学時代に発症。
6年間原因が分からず、高校進学を断念した。
寝たきりとなったが、その後、独学で東京芸術大学に進学。現
在も車いすで過ごし、家族の介助を受ける。
「何よりつらいのは、全ての行動が苦痛と引き換えということ。アクションを起こすことで楽しみや経験を得る。すると苦痛が代わりに襲ってくる」と話す。
現在は講義中でも横になることを許可してもらうなど、大学側の理解も得て学生生活を送る。
近藤さんは「周囲の支えがある私は幸運な方。症状は『とても苦しい』に尽きるが、うまく表現する言葉がなく伝わりにくい」と息を切らしながら訴えた。
医療体制も不十分
医師や行政の理解も十分ではない。
ヘルパーの介助などの福祉サービスを受けるには障がい者手帳が必要で、医師の診断書が要る。
だがCFSは客観的な診断基準がないため、多くの患者が診断書をもらえず、手帳の取得も進まない。
CFSを診断できる病院も少ない。
青森県内の患者の多くは岩手県など他県に通院。自身も患者である石川代表も大阪府の病院に通うが、この病院は全国の患者の予約で手いっぱいで、新規の外来受け入れが困難という。
専門医不足も懸念され、声を上げること自体が負担となる患者らがあえてイベントを開いて「発信」する背景には、「5年後はどうなるか分からない」(石川代表)との危機感がある。
治療法確立に期待
一方で「明るい材料」もある。
14年に厚労省の研究班が、患者の脳神経系に炎症があり、炎症の程度と症状に相関関係があることを解明。
脳の炎症が原因と特定できれば、炎症を抑える新薬の開発や治療法の確立が期待される。
石川代表は「患者たちは情報が少なく、闇の中にいるような思いだった。研究が一歩でも進んでいることを知って、患者の居場所があることを感じてほしい」と話した。
■ことば
慢性疲労症候群(CFS)
健康だった人が突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、睡眠障害や思考力の低下、発熱、頭痛やのどの痛み、筋肉痛などの症状が続いて、日常生活を送るのが困難になる。推計では、国内の患者は約30万人。
2015年の厚生労働省の調査によると、3割が寝たきりや介助が必要な状態という。
国の難病には指定されておらず、患者は公的な福祉サービスを十分に受けられていない。