KDDIケータイ基地局公害訴訟 原告に聞く健康被害の実態 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・KDDIケータイ基地局公害訴訟 原告に聞く健康被害の実態
 
10:48 05/26 2010

黒薮哲哉
  
 延岡市大貫の住民が撤去を求めているKDDIの携帯電話・基地局(アンテナ)。強引な設置に歯止めがかからなくなり、各地でトラブルが発生している。

 
 携帯電話の基地局から放射される電磁波は、日本政府が定めた甘い基準が守られているだけで、本当に人体に有害な影響を与えないのか--。

健康被害の実害を理由として基地局撤去を求める全国初の訴訟が、宮崎県延岡市で進行中だ。

被告が巨大広告主・KDDIであることから、マスコミは詳細な報道を控えている。

提訴から半年が過ぎた先月、現地を訪れ、7人の原告に基地局の設置から、耳鳴りや鼻血、電磁波過敏症などの健康被害発生に至るまでの経緯を聞いた。(訴状や意見陳述書は末尾でPDFダウンロード可)

 原告は、30人の住民。これを26人の弁護士がサポートする。

この中には水俣病やじん肺訴訟、薬害スモン、薬害HIV訴訟などの公害や薬害関連の裁判にかかわってきた著名な弁護士たちの名もある。

延岡大貫訴訟の訴状。

26人の弁護士が名を連ねている。

 一方、被告はKDDI。

 財界の重鎮・稲盛和夫氏が育てた企業である。

 新世代の公害といわれる携帯電話・基地局問題の訴訟のうち、延岡市のケースは、単に規模が最大級というだけではなくて、大企業と大弁護団の対決でもある。

 さらにこの訴訟は健康被害を理由として、基地局の撤去を求める全国初の訴訟だ。こ

れまで起こされた基地局関係の裁判は、将来的に健康被害を受けるリスクがあることを理由に提訴されたが、延岡の裁判は住民が実質的に受けている健康被害を前面に押し出したものである。

 提訴からまもなく半年になる4月24日、わたしは延岡市の原告団を取材した。

 空路、宮崎空港を経てJRの電車で延岡駅へ到着すると、原告団長の岡田澄太さんが出迎えてくれた。

岡田さんとは、2週間ほど前に日弁連が東京で主催した電磁波問題のシンポジウムで面識を得ていた。

 しかし、延岡市で起きている基地局問題については、岡田さんと知り合いになる前から注目していた。

2007年12月16日付けの『朝日新聞』に掲載された次の記事が糸口となっていた。


  延岡・携帯基地局問題
  耳鳴りなど45人  健康相談で訴え
  延岡市大貫町5丁目にある携帯電話基地局のアンテナが原因として、住民が健康被害を訴えている問題で、市は14日、先月末に実施した健康相談の結果を公表した。

45人が耳鳴りや頭痛を訴えており、大半は基地局が設置された昨年11月以降に自覚症状が出たという。
 健康相談は11月29日から3日間、現地で行い60人が訪れた。

耳鳴りが31人で最も多く、肩こりが16人、不眠が14人と続いた(複数回答)。

胃腸不良や胸の痛みを訴える人もいた。

  自覚症状を感じ始めた時期は、基地局が設置された昨年10~12月が22人で半数を占めた。

市健康管理課は「結果的に時期が重なった人が多かったが、これが電磁波の影響かは分からない」としている。
 
 延岡市のケースに見るように、自覚症状が耳鳴りや頭痛、肩こり、それに不眠という程度であれば、不幸中の幸いだが、海外で行われた疫学調査では、携帯電話基地局から放射される電磁波とガンの関係も指摘されている。

 たとえば有名な例としては、2004年にイスラエルで行われた調査によれば、基地局周辺におけるガンの発生率は、通常の4.15倍だった。

女性に限れば10.5倍という驚異的な結果が発表されている。

◇極めてあまい日本の規制値
  携帯電話の基地局からは、高周波のマイクロ波と呼ばれる電磁波が放射されている。

厳密にいえば、現在の第3世代携帯電話では、マイクロ波に低周波を人工的に組み合わせた「変調電磁波」が放出されている。

このような電磁波は、自然界には存在しない。それゆえにかねてから安全性が疑問視されてきた経緯がある。

 もちろん電話会社は政府が定めた電波防護指針に従って基地局を設置している。それゆえに基地局の設置が法にふれるわけではない。

 しかし、実際問題として電波防護指針を守っていても、基地局が原因と推測し得る健康被害が日本のあちこちで報告されるようになってきた。

 当然、電波防護指針が適正なものかどうかという疑問があるわけだが、わたしが取材した限りでは、次の2つの大きな問題点があるようだ。

まず、第1に電波防護指針を定めるに際して採用されたデータが1980年代の古いものである点である。

 従って第3世代携帯電話などで使われている「変調電磁波」に関するデータは含まれていない。

 第2に諸外国に比べて10倍から100倍の緩やかな基準になっていることである。

オーストリア・ザルツブルグ州の勧告値と比較すると、1000万倍の隔たりがある。
  ちなみに各国の規制値は次のようになっている。日本の規制値は極めてあまい。


国/市

規制値

ザルツブルグ(オーストリア) 0,0001μW(マイクロワット)
パリ 1.0μW
モスクワ  2.0μW
ブリュッセル 2.0μW 
ロシア 2.4μW 
スイス 4.0μW
中国 6.6μW
イタリア・ポーランド 10μW
オーストラリア・ニュージーランド 200μW
日本 600μW 
出典:荻野晃也著「健康を脅かす電磁波」(緑風出版)

 繰り返しになるが、日本の電話会社が電波防護指針を守っていないというのではない。

事実、電話会社は住民から基地局の安全性を問われると、口をそろえて電波防護指針を厳守していることを強調する。

 が、公害に対する取り組みは、電波防護指針を守っているか否かという点よりも、実質的に健康被害が出ている事実から出発しなければならない。

◇わたしの頭上に基地局が
 わたしが初めて基地局問題と向き合ったのは、2005年のことだった。

わたしが住んでいる住居(9階建てビルの9階)のまさに真上にKDDIとNTTドコモが、基地局を設置する話をマンションの管理組合に打診してきたのが引き金だった.....

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