・http://digital.asahi.com/articles/ASJ7D6HWGJ7DTIPE03C.html?_requesturl=articles%2FASJ7D6HWGJ7DTIPE03C.html&rm=330
「住宅は柔軟に」「足踏みのまま」 熊本地震避難者の今
板倉大地、沢田紫門、奥村智司
2016年8月6日14時52分
熊本地震の発生から100日余りが過ぎた。
発生後間もなく、朝日新聞のアンケートに協力してくれた人たちは今どうしているのか。
改めて尋ねると、大半は仮設住宅など落ち着き先が決まっていたものの、本来の暮らしにはほど遠く、個々に悩みを抱える姿が浮かんだ。
最初のアンケートは、4月14日の前震から10日を機に熊本県内の避難者108人に実施。このうち、震災から1カ月時点で連絡がついたのは65人で、うち26人が「避難中」だった。
震災2カ月で再度尋ね、避難を続けていた16人に、今回改めて聞いた。
回答が得られた14人の中で、11人は仮設住宅に入居済みか入居が決まっていた。
1人は公営住宅に入居していた。
あとの2人は避難所にいて「移る先のめどが付いていない」と答えた。
ログイン前の続き南阿蘇村の今村克子さん(50)は今月に入り、村内の避難所から村営住宅に移った。
高齢の両親と3人暮らし。
初めは仮設に応募したが、6月に取り下げた。
「化学物質過敏症」だという今村さんは、新しい建材で建てられた仮設住宅では暮らせない。
両親だけ仮設に住まわせ、自分は村営住宅に入るつもりだった。
ただ、村の説明では、一つの世帯が分かれて住むので、村営住宅の家賃は自己負担。
仮設はあきらめて3人で村営住宅に住むことにしたが、地元の知り合いはいない。さ
らに仮設の入居期限は2年だが、村営住宅は1年と短い。
「分かれて住まざるを得ない事情のある人がいるはず。こんな時だから柔軟に対応してほしいのに」と今村さんは話した。
益城(ましき)町の松本ミカ子さん(70)は7月、仮設の2次抽選に当たり、月末に避難所から移った。
ただ、大きな不安を抱えている。
「全壊」と判定された2階建ての自宅は、傾きながら建っている。
「道向かいのお隣の住む家にいつ倒れかかるかと思うと、おちおち夜も眠れない」。
「8月内」と言われた家の解体を待っている。
「とりあえず住む所は決まって一歩進んだけど、他は足踏みのまま」と話した。
車イスで生活する西原村の鈴川将司さん(42)は7月初め、妻と両親の4人で村内の仮設に入った。
本震直後から避難所に移り、夜はペットのダックスフントと寄り添ってずっと車中泊だった。
室内で手足を伸ばして寝られるようになったが、畳の部屋もあって車イスでは不便を感じる。玄関は車イスが通れる間口がなく、縁側から出入りする。
避難所で知り合ったボランティアがそれを見て、出入りの際に雨にぬれないよう、縁側にひさしを付けてくれた。
2カ月に及んだ避難所の生活で、本音で話せる友人も何人もできた。
「地震で失ったものより、得たものの方が多い」と鈴川さんは自らに言い聞かせるように話した。(板倉大地、沢田紫門、奥村智司)