7:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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5. 病理学的検査
(1) 肉眼的病理学検査(TABLE 6)
【神経系組織・器官の所見】
(a) 雌・ばく露群(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
脳では軟化が第3群および第5群にそれぞれ2例、腫大が第4群および第5群に2および1例、透明液貯留が第3群に1例、黄色液貯留が第5群に1例、1個の変色斑が第3群に1例、1個の変色域が各群に4から8例、数個の変色域が第4群に1例、多数の変色域が第3群に1例、1個の結節が第4群に1例認められた。
脊髄では1個の変色域が第3群に2例、数個の変色域が第3群および第4群にそれぞれ1例認められた。
三叉神経では1個の結節が第4群および第5群にそれぞれ1例、1個の変色性結節が第4群に3例認められた。
(b) 雄・ばく露群(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
脳では変色が第8群に1例、軟化が第9群および第10群に1および2例、腫大が第8群に2例、白色物質による被覆が第9群に1例、堅い物質の接着が第8群および第10群にそれぞれ1例、数個の変色斑が第10群に1例、1個の変色域が各群に3から8例、数個の変色域が第9群および第10群にそれぞれ1例認められた。
脊髄では1個の変色域が各群に2ないし3例、数個の変色域が第9群に1例、多数の変色域が第10群に1例認められた。
三叉神経では1個の変色性結節が第8群に1例、1個の変色域が第8群に1例認められた。
以上、ばく露群に観察された神経系組織・器官における肉眼的病理所見の発生頻度には、ばく露量による影響を認めなかった。
(c) 雌・非ばく露群(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
脳では第1群に1個の変色域が1例認められたのに対し、第2群では変色が1例、腫大が1例、液貯留および透明液貯留がそれぞれ1例および1個の変色域が5例認められた。
脊髄では1個の変色性結節が第2群に1例認められた。

1個の変色域が第1群および第2群に2および1例、数個の変色域が第2群に1例認められた。

三叉神経では第1群および第2群ともに異常を認められなかった。
(d) 雄・非ばく露群(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
脳では第6群に多数の変色斑が1例と1個の変色域が1例認められたのに対し、第7群では軟化が1例、白色物質による被覆が1例、1個の変色斑が1例、1個の変色域が7例および1個の変色性結節が1例認められ、1個の変色域においては第6群と比較して有意な高値を示した。
脊髄では1個の嚢包が第7群に1例、1個の変色域が第6群および第7群にそれぞれ1例、数個の変色域が第7群に2例認められた。
三叉神経では第6群には異常が認められなかったのに対し、第7群では腫大が1例および1個の結節が1例認められた。
【その他の所見】
(a) 雌・ばく露群(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
脾臓の腫大および肺の結節の有意な低値が第4群に認められた。
(b) 雄・ばく露群(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
下垂体の変色斑の有意な高値が第10群において、精巣の変色域の有意な低値が第9群に認められた。
(c) 雌・非ばく露群(雌 第1群:無処置群、 第2群:ENU投与群)
下垂体の変色域の有意な低値が第2群において、肺の変色斑の有意な高値が第2群において認められた。
(d) 雄・非ばく露群(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
皮膚/皮下(側腹部)の結節あるいは腫瘤の有意な高値が第7群で認められた。
その他、種々の組織・器官に変色、腫大あるいは結節性病変などが認められたがいずれも各々の対照群(第1、3、6、8群)と同程度の発生頻度であった。
(2) 最終体重および器官重量(TABLE 7、8)
(a) 雌・ばく露群(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
脳および心臓の相対重量の有意な低値が第4群に認められた。
肝臓の相対重量の有意な低値が第5群に認められた。

腎臓の相対重量の有意な低値が第4群に、絶対および相対重量の有意な低値が第5群に認められた。

副腎の絶対および相対重量の有意な低値が第5群に認められた。
(b) 雄・ばく露群(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
下垂体の絶対重量の有意な高値および脾臓の絶対重量の有意な低値が第9群に認められた。
(c) 雌・非ばく露群(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
無処置群とENU投与群の間に統計学的に有意な差異は認められなかった。
(d) 雄・非ばく露群(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
無処置群とENU投与群の間に統計学的に有意な差異は認められなかった。
(3) 病理組織学的検査
(a) 脳および脊髄の腫瘍性病変(TABLE 9、10)
【ばく露群】 (雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
脳では星状膠細胞腫、乏突起膠細胞腫(雌のみ)、混合型神経膠細胞腫、脳室上衣腫(雌のみ)および髄膜腫(雄のみ)が認められ、その中でも星状膠細胞腫が雌雄ともに最も高頻度に認められた。雌の脳腫瘍のうち星状膠細胞腫が高ばく露群(第5群)において増加傾向を認めたが、統計学的有意差はなかった。

全ての腫瘍を合わせた発生頻度は雌の第3、4および5群で5(10%)、5(10%)および11例(22%)、雄の第8、9および10群で4(8%)、8(16%)および8例(16%)であり、個々の腫瘍の発生頻度および腫瘍の総数においてもばく露量による影響は見られなかった。
脊髄では、雄で混合型神経膠細胞腫および悪性細網症が認められ、脊髄全ての腫瘍を合わせた発生頻度は雄の第8、9および10群では1(2%)、0(0%)および1例(2%)で、脳と同様にばく露量による差異は見られなかった。

雌では腫瘍は認められなかった。
【非ばく露群】 (雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
脳では、雌の第2群では星状膠細胞腫および混合型神経膠細胞腫が計7例
(14%)に、また雄の第7群では星状膠細胞腫、顆粒細胞腫および髄膜腫が計8例(16%)に認められたが、無処置群の第1および第6群では星状膠細胞腫がそれぞれ1例認められたのみであった。
脊髄では、雄の第7群で星状膠細胞腫が1例(2%)に認められた。同群の雌では腫瘍は認められなかった。第1および第6群では腫瘍の発生は認められなかった。
以上のばく露群および非ばく露群(ENU投与群)で見られた中枢神経系腫瘍の発生は、それらの多くが切迫屠殺・途中死亡動物に見られたものであった。
(b) 脳および脊髄の非腫瘍性病変
【ばく露群】 (雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
脳では雌の第5群および雄の第9群で軽度な血管拡張がそれぞれ1例、雄の第8群および10群で軽度な鉱質沈着がそれぞれ1例、雄の第9群で軽度な局所壊死が1例認められた。

また、膠細胞過形成が雌の第5群に2例、雄の第8群および10群にそれぞれ1例認められた。
脊髄では雌の第4群および雄の第9群で軽度な表皮嚢胞が1および2例、雄の第10群で軽度な出血が1例認められた。

また、膠細胞過形成が雌の第5群および雄の第10群にそれぞれ1例認められた。
【非ばく露群】 (雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
脳では雌の第1群で軽度な血管拡張が1例、雌の第2群で軽度な神経膠症が1例、雄の第7群で重度な出血が1例、雌の第1群で軽度な血栓が1例認められた。また、膠細胞過形成が雌の第1群および雄の第7群にそれぞれ1例認められた。
脊髄では雌の第2群および雄の第6群で軽度な表皮嚢胞がそれぞれ1例、雌の第2群で軽度な出血が1例、雄の第7群で中等度な出血が2例認められた。
(c) その他の組織・器官における腫瘍性および非腫瘍性病変
【全動物-ばく露群】
(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
雌では偽ばく露群(第3群)と比較して第5群において、腸間膜リンパ節の軽度
から重度の組織球細胞浸潤の有意な高値が、乳腺の軽度な乳汁分泌亢進の有意な低値、子宮内腔の軽度から中等度の拡張の有意な低値が認められた。
雄では偽ばく露群(第8群)と比較して第10群において、皮膚/皮下の線維腫
および全身性の顆粒性大リンパ白血病の有意な低値が認められた。
【全動物-非ばく露群】
(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
雌では無処置群(第1群)と比較して第2群において、下垂体前葉の過形成の有意な低値が、肝臓の変異肝細胞巣の有意な低値が、子宮内膜間質の過形成の有意な低値が認められた。

雄では無処置群(第6群)と比較して第7群において、肝臓の変異肝細胞巣の有意な低値が、腎臓の軽度から重度の慢性腎症の有意な低値が、甲状腺のC-細胞腺腫の有意な低値が、全身性の顆粒性大リンパ白血病の有意な低値が認められた。
【最終屠殺動物-ばく露群】
(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
雌では偽ばく露群(第3群)と比較して第4群において、腸間膜リンパ節におけ
る軽度な類洞拡張の有意な高値、鼻腔における鼻涙管の軽度な炎症の有意な低値肝臓での顆粒性大リンパ白血病転移の有意な低値がそれぞれ認められた。

第5群において、胸腺の軽度から重度の退縮の有意な高値が認められた。
雄では偽ばく露群(第8群)と比較して第9群において、胸腺の軽度から重度の退縮の有意な高値、鼻腔における鼻涙管の軽度な表皮嚢胞の有意な高値、膵臓・腺房細胞の軽度な萎縮の有意な低値がそれぞれ認められた。

第10群において、脾臓での顆粒性大リンパ白血病転移の有意な低値、膵臓・ラ氏島細胞腺腫の有意な高値、肝臓での顆粒性大リンパ白血病転移の有意な低値、乳腺での乳管の軽度な拡張の有意な低値、皮膚/皮下の線維腫の有意な低値がそれぞれ認められた。
その他、雌雄の下垂体腺腫、甲状腺のC-細胞腺腫、全身性の顆粒性大リンパ白血病、 雌では乳腺の線維腺腫、子宮内膜間質ポリープ、雄では肺の腺腫および腺癌、精巣の間細胞腫などが観察されたが、偽ばく露群と比較してその発生頻度に有意差は認められなかった。
【最終屠殺動物-非ばく露群】
(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
雌では無処置群(第1群)と比較して第2群において、甲状腺のC-細胞腺腫の有意な低値、肝臓の軽度から中等度な肉芽腫の有意な高値がそれぞれ認められた。
雄では無処置群(第6群)と比較して第7群において、肝臓の変異肝細胞巣の有意な低値、前立腺上皮内腫瘍の有意な高値がそれぞれ認められた。
【切迫屠殺および途中死亡動物-ばく露群】
(雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
雌では偽ばく露群(第3群)と比較して第4群において、顎下リンパ節における
軽度な形質細胞浸潤の有意な高値が、第5群において、甲状腺のC-細胞過形成の有意な低値、副腎の皮質過形成の有意な高値がそれぞれ認められた。
雄では偽ばく露群(第8群)と比較して第10群において、腸間膜リンパ節の軽
度から中等度の組織球細胞浸潤の有意な高値が認められた。
【切迫屠殺および途中死亡動物-非ばく露群】
(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
雌では無処置群(第1群)と比較して第2群において、前胃の軽度から中等度の潰瘍の有意な低値が認められた。
雄では無処置群(第6群)と比較して第7群において、脾臓の顆粒性大リンパ白血病転移の有意な低値および全身性の顆粒性大リンパ白血病の有意な低値がそれぞれ認められた。
その他、脳腫瘍、下垂体腺腫および癌、顆粒性大リンパ白血病が比較的高率に認められ、ENU投与群で見られた切迫屠殺・途中死亡動物の主な死因と考えられた。

無処置群では下垂体腫瘍あるいは顆粒性大リンパ白血病などを観察し、これらが主な死因であった。
(d) 全動物の腫瘍性病変(TABLE 14)
雌雄で高率に認めた所見としては、下垂体前葉の腺腫および腺癌、甲状腺のC-細胞腺腫および腺癌、副腎の褐色細胞腫、肺の腺腫および腺癌、膵臓のランゲルハンス島細胞腺腫、肝臓の肝細胞腺腫、精巣の間細胞腫、前立腺の腺腫、乳腺の線維腺腫、子宮内膜間質ポリープおよび腺癌、皮膚/皮下の線維腫および棘細胞腫、顆粒性大リンパ白血病があり、このうち雄の甲状腺C-細胞腺腫の発生では、無処置群(第6群)の14例に対し、第7群では6例で有意な低値を示した。

また、雄の皮膚/皮下の線維腫の発生では、偽ばく露群(第8群)の10例に対し、第10群では2例で有意な低値を示した。

さらに、雄の全身性顆粒性大リンパ白血病の発生では無処置群(第6群)の23例に対し、第7群では10例、偽ばく露群(第8群)の9例に対し、第10群では2例でそれぞれ有意な低値を示した。

その他の所見は雌雄ともばく露群間で同程度の発生頻度であった。
その他、種々の組織・器官に腫瘍性病変を認めたものの、いずれも低頻度であり群間に差異は見られなかったが、腹腔および胸腔内、三叉神経および末梢神経の悪性シュワン細胞腫の発生は今回用いたF344ラットでは発生の極めて稀な腫瘍であり、ENU投与による影響と考えられた。
(e) 発生腫瘍(良性および悪性)数および担腫瘍動物数(TABLE 15)
【ばく露群】 (雌 第3群:sham、第4群:0.67W/kg、第5群:2.0W/kg)
(雄 第8群:sham、第9群:0.67W/kg、第10群:2.0W/kg)
雌における良性腫瘍の発生数は第3 群で48 個( 64.9% ) 、第4 群で39 個
( 63.9% ) 、第5 群で38 個( 59.4% ) 、悪性腫瘍の発生数は第3 群で26 個
(35.1%)、第4群で22個(36.1%)、第5群で26個(40.6%)であり、発生腫瘍
数に対するばく露量の影響は認められなかった。担腫瘍動物数を単一腫瘍、重複腫瘍あるいは総数で見た場合のいずれにおいてもばく露量による差異は認められなかった。
雄では、良性腫瘍の発生数は第8群で77個(73.3%)、第9群で69個(72.6%)、
第10群で75個(75.8%)、悪性腫瘍の発生数は第8群で28個(26.7%)、第9群で
26個(27.4%)、第10群で24個(24.2%)であり、発生腫瘍数に対する電磁波ば
く露の影響は認められなかった。

担腫瘍動物数を単一腫瘍、重複腫瘍あるいは総数で見た場合のいずれにおいてもばく露量による差異は認められなかった。
【非ばく露群】(雌 第1群:無処置群、第2群:ENU投与群)
(雄 第6群:無処置群、第7群:ENU投与群)
雌では、良性腫瘍の発生数は第1群で51個(72.9%)、第2群で39個(54.2%)、
悪性腫瘍数の発生数は第1群で19個(27.1%)、第2群で33個(45.8%)を示し、
第2群の悪性腫瘍数の発生が高値傾向を示した。

腫瘍の総数で見た場合には、第1群と第2群で同程度の発生数であった。担腫瘍動物数では群間に差異は認められなかった。
雄では、良性腫瘍の発生数は第6群で101個(71.1%)、第7群で95個(73.6%)、
悪性腫瘍の発生数は第6群で41個(28.9%)、第7群で34個(26.4%)でともに群
間に差異は見られなかった。

腫瘍の総数で見た場合には、第6群と第7群に差異は認められなかった。