化学物質の経皮吸収と毒性一溶剤を中心として一4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・溶剤での経皮吸収と審性  
溶剤は一般に低毒性であり,かつ揮発性であることから,通常の作業形態での経皮吸収による毒性が問題にされることが多い.

すなわち,作業環境中での溶剤暴露による溶剤の体内摂取は大部分が呼吸器からの吸収によるもので,これに経皮吸収による吸収が加算される様式を取る.

このため, 溶剤での経皮吸収による毒性の評価は呼吸器からの吸収量と対比して検討するか, 単位皮窟面積当たりの経皮吸収量を基にした数量的方法によって検討されている.


 以上のような半定量的な経皮吸収実験での毒性の評価法では接触皮膚面積や接触時間の変動に伴う経皮吸収量の算定が難しい,

通常の作業環境での液体溶剤での経皮吸収を伴う場合の作業者の溶剤の体内吸収量は大部分が呼吸器からの吸収量で,それに経皮吸収量が加算される様式をとる.

したがって,液体溶剤での経皮吸収による毒性を評緬するためには液体溶剤での経皮吸収速度を明らかにして定量的に経皮吸収量をつかまえる必要がある.

Table はこれまでに報告されているヒト及び動物での単位皮膚面積当りの溶剤の経皮吸収速度をまとめたものである.

溶剤の経皮吸収速度は溶剤の種類により1000 倍近い差がみられる.

この要因の1つは測定法にあるようで,高い値を示しているDutkiewicz らの場合は塗布部位での残存量を測定し, その減少量から経皮吸収速度を算出したもので過大評価したものとの批判がある。

また,種差の問題もあるがbenzene の場合は差がないようである.


なお,ヒトでの値は呼気や尿中への排泄量から推定した値であり, 動物では定量的実験により求め られた値である違いがあるの動物を用いた方法は麻酔したマウスの腹部皮膚に2.92cm2 のガラスセルを接着固定して,その中に0.5ml の試料溶剤を添加して密封し,15分後に殺し,呼気中排泄量と体内残存量を測定し,その和を経皮吸収量として経皮吸収速度を求めている.

さらに.benzene ,toluene の場合については溶剤蒸気の項で述べた方法によって代謝量をも含めた経皮吸収量を測定し,経皮吸収速度を求めている.

このように疎水性溶剤の場合,溶剤の水に対する溶解度と皮膚透過速度との間に相関があり,更に皮膚透過速度と経皮吸収速度の問にも相関があることから, 疎水性溶剤ではその溶剤の水に対する溶解痩から経皮吸収速度を予知できるのではないかとしている。

Barry ら は溶剤蒸気での経皮吸収係数の場合にみられた熱力学的活動度との相関は液体溶剤での皮膚透過速度との間では認められなかったと報告している.
Scheuplein はアルコール類においで皮膚透過速度と、分子量との逆相関を報告している.

水溶液中での溶質に関して,溶質の皮膚透過係数と溶質の (オクタノール/水)の分配係数との間にフェノール化合物や芳香族及び脂肪族アルコール類などでは対数一対数相関が報告されている.9B ) したがって,液体溶剤の場合でも溶剤の物理化学的性質と経皮吸収速度との相関から溶剤の物理化学的性質を用いて溶剤の経皮吸収速度を予測する方法が期待される.