化学物質の経皮吸収と毒性一溶剤を中心として一 | 化学物質過敏症 runのブログ

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runより:凄く長い記事になります、その為グラフと英文とかなり専門的な事を割愛しました。

今回は全掲載ではなく引用となります。


http://ci.nii.ac.jp/els/110003643331.pdf?id=ART0004157998&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1463574531&cp =
総 説RevieWS
〔衛生  化  学
 EISEI  KAGAKV
S2 (4 >229? 241 (1986)〕
化学物質の経皮吸収と毒性一溶剤を中心として一
  鶴 田  寛
労働省産業医学総合研究所
はじめに
 経皮吸収とは皮膚に接触した物質が皮膚内に入り,その内部を通って末稍循環系にまで浸透することで,化学物質での経皮吸収が明確になったのは1904年に「Schwenkenbecker)2 h : li 旨溶性物質の強い皮膚透過性と水や電解質などでの弱い皮膚透過性を明らかにしての皮膚不透過説を否定したときに始まる、その後,物質の経皮吸収を律速する障壁の研究が進展し,皮膚の最外層である角質層全体が障壁であること,

そこを透過する物質の移動は濃度勾配に従う受動拡散により行なわれることなどが明らかにされた.

これらのことから, 希釈溶液中の溶質の経皮吸収はF 圭ck 則に従って行なわれること, 摘出皮膚を隔膜として使用する.

in vitro 法がin wivo 法に代わる有効な方法であること,更に, ラジオアイソトープやその他の高感度分析法の利用が容易になったことなどにより定量的な皮膚吸収の研究が発展した.

特に,皮膚科学や薬学の分野では非常に多くの研究集積があり, 経皮吸収に関する総説をはじめ成書も多い.

また, 最近では新しい投藁システムとしての経皮吸収の研究も盛んに行なわれている. しかし,これらの研究は希釈溶液での溶質の経皮吸収に関するものが大部分であり,Fick 則の適用外となる高濃度での溶質あるいは全く希釈されていない物質での経皮吸収1こ関する研究はまだ少ない.

 我々を取り巻いている環境中で化学物質が最も高濃度で存在する産業職場では作業者の皮膚が化学物質に直接触れたり, 高濃度の暴露を受ける場合がある.特1こ,機械や電気などの部品の脱脂洗浄剤として,また塗料や接着剤などの調合剤などとして多量に使用されている有機溶剤では作業者が作業中に溶剤に直接触れたり,高濃度の暴露を受ける機会が多く,そのような職場での溶剤による経皮吸収とそれに伴う毒性が問題にされる,
 そこで,これまであまり研究されていない溶剤での経皮吸収と毒性を中心にして,一般的な化学物質での経皮吸収と毒性の関係についてまとめた.

 化学物質の経皮吸収
皮膚の構造と経皮吸収の機構  皮膚の構造は表皮,真皮,皮下組織に大別され,ヒトでの厚さはそれぞれ0 .1~ 0.8mm , 1~ 4 mm で皮下組織の厚さは皮下脂肪量によって個人差がある.

表皮は更に外側から角質層,マルピギー層に分かれ,基底膜を介して真皮につながっている.真皮の最上部は乳頭層で末梢血管系が分布している.


一方, 皮膚表面に開口部をもち,表皮を貫いて真皮深部に達する汗腺や毛包脂腺などの皮膚付属器官がある.このように皮膚は複雑な多層構造をもっているが,物質の経皮吸収に関与する部分は皮膚表面から末稍血管系までの問に介在する表皮と真皮乳頭層及び皮膚付属器官である.

 化学物質がこれら各層を浸透して宋梢血管系へ至る経皮吸収の過程は一般に化学物質の角質層表面での比較的早い吸着吸収, 次いで角質層内での遅い受動拡散,更にマルピギー層や真皮乳頭層中の早い拡散を経て末梢血管系へ至るとされているが,例外的に極く少数の物質ではマルピギー層や真皮乳頭層などの生きた細胞層内での代謝や蓄積作用などにより吸収過程が変化することもある.

この経皮吸収過程において, 化学物質の吸収を律速している角質層は死んだ細胞である角質細胞が重層したヒトで厚さ10? 20 μm の薄膜である.

角質細胞はケラチン微細構造を持っていて, 水溶性物質に対する強い拡散抵抗と脂溶性物質に対する弱い拡散抵抗を有する.14)Scheuplein)i4にょると角質層は水に対してマルピギー層や真皮乳頭層の約IODeneもの強い拡散抵抗を示すが,アルコール類に対しては10~20倍程度の弱い拡散抵抗しか示さない という.

また,この角質層は水和により膨潤するか, 溶剤に浸して脱脂すると水溶性物質に対する拡散抵抗が小さくなるという.