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慢性疲労症候群、病気だと理解して
小川直樹
2016年5月5日08時38分
外出する中村めぐみさん。「見た目には何ともないと思われるのがつらい」と言う=青森市
一昨年の秋以降、一日の大半を自宅のベッドで寝たきりで過ごすことが多くなった。
座っているだけでもきつく、台所に立ったり、シャワーを浴びたりすることさえも難しくなった。
「カメの甲羅を背負っている感じ。人としての生活ができていない」
青森市の中村めぐみさん(50)が、異変を感じたのは15年ほど前からだ。当時は仕事をしていたが、疲れやすくなり始めた。
そのうち急に布団から起きられなくなることもあり、そんなときは仕事を休まざるを得ない日もあった。3年ほど前からは体も痛み始めた。
病院を訪れると、たびたび医師の心ない言葉に打ちのめされたという。
つらい現状を訴えても「どこも悪くない」「休んでください」などと言われた。
はた目には、元気だった頃と何ら変わりない。
1日に30分~1時間出歩くのが限界だが、そんなときは少しでも普通でいようと頑張る。
しかし、そんな姿を見た周囲の人からは「元気そう」「どこが病気なの?」と言われた。
中村さんは「理解されないことが何よりつらい」と言う。
2年前に青森県外の病院で慢性疲労症候群(CFS)と、全身に原因不明の痛みが走る線維筋痛症と診断された。
現在は盛岡市内の病院に月1回通う。夫が仕事の休みを取り、車で送り迎えをする。
「分かってもらえるだけで以前と(精神的に)随分違う」と中村さん。
しかし、県外への通院は金銭的にも体力的にも大きな負担になっている。
「県内で専門的に診てもらえる体制を」と訴えている。
◇◆◇
弘前市に住む女性(54)は、10年ほど前に線維筋痛症と診断されたが、CFSのような症状にも悩まされているという。
十数年前、突然動けなくなる出来事があった。
「異常な疲れ」で体がだるく、何もやる気が起きない。
「更年期障害なのかなと思った」。
一日中、ソファに横になることが必要な日も出てくるようになった。
疲れると、夜眠れなくなる。眠れないと回復が遅れるという悪循環に陥った。
睡眠導入剤も次第に効かなくなり、量が増えていった。
女性はとりわけ痛みに悩んでいる。
夜、頭から足先までの全身の痛みで目が覚めることもあり、痛み止めの処方も欠かせない。
最近は口の中がビリビリとしびれるが、病気が原因か、薬の副作用かも分からない。
しかし、県内に専門医がおらず、現在、岩手県内の病院まで夫が車で送り迎えをする。
「医者すらよく分からない病気なのだと思うと、より不安になる」と女性は話す。(小川直樹)
■慢性疲労症候群
原因不明の強い全身倦怠(けんたい)感、微熱、頭痛、筋肉痛などが長期に続く症状。
寝たきりで介護が必要な患者がいる一方、医療・福祉体制が整っていない。
患者は国内に約36万人とも推計されている。
近年、脳神経系の炎症が原因に関わっているとの報告もあるが、国の難病指定を受けられていない。
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